The Last Frontier feat.
Takeharu Kunimoto

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Appalachian Shamisen


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国本武春

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Takeharu Kunimoto


アジアの祈り



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一曲昇天 


 発端は以前、ここで紹介したうめ吉で、彼女のアルバム、『蔵出し名曲集〜リローデッド〜』に一目惚れしたことだった。まぁ、それなのに、手にしたのが、それ以前のアルバム『蔵出し名曲集』だったというのがかなりひねくれているが、そのくだりはそのレヴューで記しているのでここでは繰り返しません。

 で、タイミングというのは面白いもので、ちょうど彼女を知ったのと時期を同じくして、偶然テレビで目にしたのが、はやり三味線絡みとなる国本武春氏。確かあの番組では「若手浪曲師」ということで登場していて、ちらっとやってくれた浪曲も面白かったんだが、なんと三味線をもってアメリカに行ってブルー・グラスを演奏しているという話に驚かされることになる。三味線とブルー・グラス?なるほど、三味線とバンジョーの音質が似ているからってことなんだろうなぁ... なんぞと、その時はそう思っただけ。残念ながら、この時点では「買い」の衝動にまでは至らなかったというのが正しい。「へぇ、珍しい人がいるもんだ」という程度でとどまったわけだ。

 ところが、うめ吉との出会いで、三味線が気になったということもあったし、たまたまフジ・ロックを前にして、うちに遊びに来たジェイソン・メイオール(ギャズの弟でクンビアあたりのコレクションが驚異的なDJでもある)と一緒に国本武春氏のサイトCDセクションをチェックして、初っぱなに流れてきた音にぶっ飛ばされることになる。それが、このアルバム、『Appalachian Shamisen』の巻頭に収められているタイトル・トラック。完全なブルー・グラスなのに、バンジョーとは違った三味線がめちゃくちゃいい味を出しているのだ。そして、二人の口から出た言葉は「Buy this!」ということで、このサイトから同じアルバムを2枚購入することになった。文字通り、一曲昇天したのがこの時だ。

 っても、ブルー・グラスってわかる人いる?はっきり言って、噂ではファンが500人しかいないなんて悲しい話を耳にしたこともあるほど日本ではマイナーな音楽で、Magにやってくる人たちはこういった音楽なんぞ、ほとんど聞いたことないんじゃないだろうかと思える。まぁ、めちゃくちゃ簡単な説明をすれば、アメリカに伝わったアイリッシュ・トラッドから、それが発展したカントリーをベースに進化したスタイルで、楽器の構成はアクースティックなギター、フラット・マンドリン、フィドル(ヴァイオリン)にバンジョー、ウッドベースあたりが中心で、ドブロが入ったりもするんだが、ドラムはいないのが普通。といっても、いろいろな形で進化していって、ここにエレキ楽器が入ったりしてニュー・グラスなんて呼ばれた頃もあった。いずれにせよ、特徴は、ジャズやかつてのロック(ジャム系に引き継がれているけど)にあったように、それぞれのミュージシャンがアドリブでソロを演奏し、超高速演奏なんてのも飛び出してくる代物。といっても、インストも多いけど、ヴォーカルも入っていて、まぁ、はまると抜け出せない魅力の音楽であることは確かだ。

 ブルーグラスの顔といえば、筆頭がビル・モンローで、気になる人は手始めに『The Very Best of Bill Monroe and His Blue Grass Boys』でも聞いていただければと思うし、(ちなみに、このサイトで視聴できます)バンジョー弾きだったら、アール・スクラッグスという人がいて、その昔聴いていたアルバムが2in1の『Dueling Banjos/Live at Kansas State』として出ている。といっても、ここではロックに近づいた新しいスタイルを打ち出しているんだが、他にも、トニー・ライスドック・ワトソンといった超絶ギタリストやフランスのステファン・グラッペリと比較されることの多いヴァッサー・クレメンツといったヴァイオリン奏者、ブルーグラスを発展させてドーグ・ミュージックを生み出したデヴィッド・グリスマンなどは、楽器好きな人には絶対おすすめだ。

 と、異様に前置きが長くなったんだが、そんなブルーグラスに三味線が絡むと、これまたとんでもない広がりを感じることができるのだ。アルバムのジャケット裏に手短に書かれているライナーによるとバンジョーが日本に渡ったのは1854年。それから150年後にその従兄弟(ホンマかい?)を以前には全く聞かれなかったスタイルでアメリカに持ち込んだとあるんだが、琉球生まれの三味線の方が絶対に歴史は長い。いずれにせよ、東と西で独自に育った楽器がこうも素晴らしく調和して奏でられるときに、「音楽」の持つとてつもない奥の深さを感じることができる傑作アルバムがこれだと言っていい。

 しかも、ここに収められているのは、いわゆるブルーグラスの名曲カバーではなく、オリジナルもふんだんに取り入れているんだが、実は、自分にとって光っているのは国本の作品。剛速球ブルーグラスにすんなりと三味線がマッチした初っぱなのタイトル・トラックもいいし、同じ流れにある「忍者ラグ」も、ブルーグラス・ファンを「参ったぁ!」と言わしめるに充分な作品。それに、日本情緒たっぷりなイントロが泣かせる5曲目の「ロンサム横町」の、民謡から演歌につながるメランコリックな三味線の響きにほれぼれとして、同じような「芸者の夢」では優れたメロディ・メイカーとしての国本の才能にうなってしまうのだ。美しい。実に美しい曲だ。これなんぞ、場所は違うが、カリブ海はマルチニークで活動を続けるカリというバンジョー奏者の名曲を思い出してしまった。(残念ながら、このアルバムしかみつからなかったけど、ベストなのは『Racine』というアルバム。これ、素晴らしいです。

 そして、極めつけが、国本がこのアルバムで唯一ヴォーカルを取る「アジアの祈り」。頭が何語で歌われているんか全然わからないけど、(おそらく言葉でないようにも思うんだけど、何なんでしょうね)浪曲で鍛えた国本の渋いヴォーカルに、北島三郎的な輝きを感じながら、カントリーのような日本民謡のような形に昇華された完全ルーツ・フュージョンは、まだまだ無限の可能性を秘める音楽の魅力を存分に思い知らせてくれるのだ。

 騙されたと思ってこのアルバムを聴きなさい。そして、買いなさい。そして、驚きなさい。音楽ってぇのは、こんなにも楽しく素晴らしいものだというのを思い知らせてくれる1枚。オリジナルなものを求める人には絶対のおすすめです。


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