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なんじゃらほい?
昨年、惜しくもこの世を去ってしまった友人のひとりにジョン・ピールという素晴らしいラジオDJがいた。彼と出会ったのは85年で、イギリスで初めてジミ・ヘンドリックスを公共の電波に乗せ、マーク・ボランといった、ユニークな個性をどんどん紹介していった人物だった。インディだろうが、メジャーだろうが、有名だろうが、無名だろうが、デモ・テープだろうがなんだろうが、「面白い」と思ったらラジオで放送してしまうというという姿勢が、どれほど多くのミュージシャンたちを助けたか... あの時代から他界した昨年の10月まで、彼のお世話になったミュージシャンは星の数ほどもいるはずだ。視聴率だとかコマーシャルやクライアントといったものでしか機能しない日本の放送局では存在し得ないDJで、60年代から40年以上にわたって「最も信頼できるDJ」として、英国のロック史をひもとくときに欠かすことのできない存在が彼だったと言える。
その彼が生きていた頃、ユニークなミュージシャンをみつけると、ときおりアルバムを彼に送ったりしていたものだ。そのなかのひとつが渋さ知らズの『渋旗』で、彼と最後に顔を合わせた3年前のグラストンバリーで「あのバンド、シュブ...なんとかっていいよね。曲が長すぎて番組じゃかけられないんだけど」と語ってくれたものだ。その彼だったら、おそらく、飛びつくようにして流してくれただろうなぁ... と思ったのが、この珍妙なアルバムだった。
なにせ、初っぱなの曲といったら、わずか1分16秒で、なにを歌っているかといったら、「特別じゃぁ、なかったらぁ〜、誰にも相手にされないよぉ...」と繰り返すだけ。しかも、かなり陳腐なリズム・マシーンかなにかを使って、これまた、安物のキーボードを使ってずっこけたワルツを奏でているのだ。で、それが終わったと思ったら、漫画のような音をバックに48秒の曲で「ブリストル絨毯工場」とつながっていく。なにやら、21世紀のスパイク・ジョーンズ(っても映像の人じゃなくて、40年代から50年代に一世風靡した冗談音楽の巨人。ようわからん人はフランキー堺のスパイク・ジョーンズ・スタイルを聞いてください。飛びますから)風味もあって、っどこかでこの世のものとは思えないおもちゃの世界に導かれてしまうのだ。と思ったら、まるでマッシヴ・アタックのような曲があって、「ブリストル」と、彼の地元のことを歌っている曲が登場する。
と、このアルバムに惚れ込んで、fujirockers.orgのスタッフに「絶対に見ろよ!」と話していたら、かなりの人が彼のステージを目撃したとのこと。そして、言われるのだ。「アルバムがいいって? でも、ライヴを見なければ始まらないよ。ぶっ飛んでいるから」といわれる羽目に。要するに、時間がなくて、一度もライヴを見ることができなかったのが残念でたまらない。
それはともかく、聞けば、このアルバムの制作費はわずか10万円程度。ジャケットに使われているのは自分んちの庭で、そこにおもちゃを並べたんだとか。しかも、彼の公式サイトに飛ぶと、このコンピュータ時代にほぼ全て手書きのサイトを作っているのも面白い。
どこかで見たんだが、Kiddy Disco Punk(お子さまディスコ・パンク)というのが、彼の音楽に与えられた称号らしい。それでも、誰にもやらなかった方法論で、楽器も弾けないという人物が、使えるものでやりたいことをやりたいようにやったという意味で、これほどパンクなものも少ないと思う。しかも、聞けば、彼はジョー・ストラマーとの結びつきもあったんだそうな。それも充分にうなずける。
reviewed by hanasan
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