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笑顔を作り出す素
「磔磔でやるの観たいなぁ〜!」
そこにはミュージシャンの顔ではなくイチ音楽ファンの顔になって嬉しそうに語るBlack Bottom Brass Bandのメンバー達がいた。彼らがBBBBを結成するきっかけとなったThe Dirty Dozen Brass Bandが来日するのだ。胸の内はワクワクやらソワソワといった言葉なんかじゃあ表すことができないのだろう。
僕はThee Michelle Gun Elephantのチケットを初めて買った頃の事を思い出した。当時高校1年生の僕は、憧れのアーティストを肌で感じることができると考えただけで自然と笑顔になっていた。まあ好きなアーティストを観る時は何回目でも笑顔になるんだが。
「あの人達はおもろいですよ!ブルーノートでライブ始まってすぐに『You must 立て!』って言いましたからね!」とコーが語る。
自分のお気に入りのバンドの話をする時は、とっておきのネタを必ず話したくなる。これもSmashing Magの読者を始め、音楽ファンならだれでもそうなんじゃないかなぁと思う。誰かがそういった話をするとそれに負けじとネタ合戦が始まる。
「ライブが終わると一番に物販に行って『CD!CD!』って言ってますしね」と話すのはオージ。そこにヤッシーとモンキーが加わり、当時の自分達がどれだけDDBBにやられてしまったかを延々と語っていく。
「前半のセットが終わって公衆電話で『すっごいから!!』って言ってましたね」
こういう席にちゃんと酒があるから、楽しい話がどんどん聞ける。
「ブルーノートの客がスーツ着て落ち着いて酒飲んでるのに、アーティストがTシャツやったしな」
「あの時のライブTシャツええ生地やったよなぁ」
どうやらお決まりの脱線事故が発生。
昨年4月に発売されたDDBBの最新アルバム『Funeral for a Friend』の感想をBBBBのメンバーに尋ねると目を輝かせながら「ホントにすごい!」との一言が返ってきた。僕自身はBBBBを観て"ニューオーリンズ"の音楽を知ったので、その彼らのルーツとなっているDDBBの音楽には物すごく興味がある。
実際に聴いてみると、1R開始1分で見事にノックアウトされてしまう。そりゃあ当然のように音が気持ちいいし、自然と体が動いたり口笛なんかも吹きたくなってくるんだが、それだけじゃなかった。結成から四半世紀というキャリアから生まれてくる「凄み」みたいなものが、スピーカーから肌に伝わってくるのだ。
このアルバムは結果的に、本作のレコーディング後に他界したメンバーのチューバ・ファッツを偲ぶ形となってしまったが、この作品を手に持って空へ向かった彼の旅路は本当に楽しいものだったんじゃないかと思う。
「リズムやら音やらもそうなんですけど、もう有無を言わさんモノがありますよねぇ」
それに撃ちのめされた彼らはBBBBを始めた。しかしDDBBがエレキギターやエレキベースを導入し、当初のマーチング・スタイルと変わった時、違和感を憶えた。それだけに先に出てきた最新アルバムでDDBBが原点に帰った時は嬉しかったという。
「今のDDBBは凄いんじゃないかな」
よりファンクな部分を前面に押し出してきたDDBBが原点に戻った意味。そして結成当初の形を貫いてきたBBBB。全員がアンプラグドでも演奏できるマーチング・スタイルでどこまで自分を表現できるか――。結成10年。名曲"ワッショイ★スター"が出来たのが昨年。偶然にも結成25年のDDBBが原点に帰って『Funeral for a Friend』を発表したのも昨年。お互いにまだまだ可能性は無限大に広がっている。
review by taisuke
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