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『Stopgap Product』 : FARRAH
FARRAHはもはやロック系イベントでは外せない存在となっている。"Terry"や"Tongue Tied"がかかったときの、両手を広げ、皆で歌い、踊るといったフロアの熱狂ぶりは相当なものだ。ひたすらポップのゴリ押しで走り続けるのではなく、アメリカのパワーポップ・バンド、FOUNTAINS OF WAYNEにも似たヘヴィネスを身につけていて、爆音で聞くことまでも良しとするバンドだ。歪んだギターの音色ははにかんだ表情を見せ、若々しさが溢れる。伸びのあるフレットレスなシンセは浮遊しながら、いちいち僕の琴線をつま弾いてくるし、何より「間」を知っている。曲の終盤になってくると、ヴォーカルだけを残し、音が消えるのが何とも憎たらしく、愛らしい。直後、楽器に再び火が入れられ一体となった時に、ゾワーッと鳥肌が立つ。これは狙いだ、というのは似合わない。その展開が好きで好きでたまらないのだろう。でなければ、わざわざ極東に位置する日本のために、ジャケットとなった落書きのようなイラストを書き下ろしたり(本当に落書きなのかもしれないけど)、キラーチューン"Tongue Tied"(アルバム『Me Too』収録)にホーンを加えて、新たにスカにリミックスし直して入れちゃえ! というイタズラ心溢れるミニアルバムは生まれていないはずだ。FRANZ FERDINANDの前身バンドもスカ(当然UK然としたもの)をやっていたと聞く。スカという、ある種独特なリズムを、BUZZCOCKSやTHE UNDERTONESから続くポップなパンクに組み込みつつ、さらにレヴェル・ミュージックの「反抗」の部分をアメ細工を作るように軟化させて、「皮肉」や「愚痴」にする。ストレートに思いきり突き刺すか、笑い飛ばせるくらいの余裕を持ってチクリと刺すかの違いである。
M&Mチョコやジェリービーンズが似合いそうな、とびっきりポップで腰の座ったこのミニアルバムに、目一杯詰め込まれた世界は、自分の体から半径1メートル程度の距離で起こっている身近な出来事、と言い切るのは容易いこと。ここに労働者階級が持つ「皮肉屋」の心を付け加えることで、さらにFARRAHの世界観とピッタリ重なってくるのである。
reviewed by taiki
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