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『Trampoline』 : the Confusions
1曲目の"The Pilot"は、イントロでいきなりヒーリングミュージックのような懐の広さを見せつけ、続くアコギとエレキの掛け合いでドラマチックに物語はヤマ場に向かってなだれ込んでいく。シンセの伸びはルースターズの"SAD SONG"にも似ていて(といってもお互いに知らないとは思うが)、様々な音がざわめきながら近づいてきて、こちらの気を誘っては通り過ぎていくのだ。水が滴り落ちて、水面を打つように短くちぎれるコーラス。これが同じスウェーデンのハイヴスとかヘラコプターズといった絶叫ガレージ勢とは対極にありすぎて、面白い。
"Days go by"はリズムを刻むアコギを芯に、伸びのあるメロを組み立てて壮大に展開していくし、ここまでは猫をかぶっていたのか? と思わせる"Painted People"は、このアルバムで初めてドラムにありったけの力をこめたスティックが振り下ろされている曲かも知れない。ギターには大胆な歪みをかけつつ、エモーショナルに突き進み、シンセは急激な浮き沈みを繰り返し、曲線を描いていく。
"Don't shed no tears"は、なじみ深いところで例を挙げると『point』あたりのコーネリアスに似ているかもしれない。コーラスのループや吐息の挿入、指がスチール弦に擦れる音など、もし「チルアウトのバンドだよ」と言われて誰かに聞かされても、まったく疑わないだろう。"Changing"はU2のアルバム、『THE JOSHUA TREE』の楽曲の音に近いかもしれないし、ハンドクラップから始まる"I'm in love with myself"はベースラインが心地よく、ストゥージズでイギーが歌っていてもおかしくない曲だ…、ん? デトロイトのガレージになってしまったぞ。最初はガレージと対極にある、とか言ってたのに。僕の個人的な意見が間違いでなければ、やりたいことがありすぎるのだろうと思う。透き通ったヴォーカルが、よりいっそう「欲望」というものを引き立てて、逆にリアルにしてしまうこともあるんだよ。
reviewed by taiki
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