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「醜さを知る者のみが 生み出せるファンタジー」
一時宮崎作品が嫌いだった。どこにでも居そうで、現実には存在し得ない少女達に希望、理想を託すという手法が物悲しくて。
引退宣言後、子供時代生まれて初めて感動した映画、『風の谷のナウシカ』の原作を見て倒れる。
続いて『もののけ姫』発表。一週間は衝撃が抜けない『ナウシカ』終盤のカオス。今を生きる者のために主人公が選択する大殺戮。あんな穏やかな顔をしやがって、何てロケンローな人なんだろうと開いた口が塞がらなかった。
宮崎駿監督のような存在はもう現れる筈がない。才能、そして、日本の、この時代を駆け抜けてきたという背景が滲んで出てきている。復帰後の作品の妥協の無さは以前より上回った気がする。
最新作、『ハウルの動く城』は、宮崎作品を多く観た人間を裏切らないと同時に目新しさも少ない。
空を舞う若い男女、見事な造型の建築物、変わった生き物達、久石譲の壮大なサウンド。
自分に諦めを感じる少女が逆境により生きる喜びに目覚めるのは、『千と千尋の神隠し』でも見られたし、城は時々「ラピュタ」に、ヒロイン・ソフィーはシータにもド−ラにも重なる。監督の描く女は強い。特に今回、ソフィーの力がストーリーを運ぶし、戦争を中心で動かすのも女性だ。
ここでも戦争が起っている。原因はさっぱり分からないままだ。敢えて理由を出さず、争う事の不条理さを出したのか。戦闘シーンはグロテスクに描かれている。
ガラクタのような汚い城に住む二枚目の魔法使いハウル。「臆病な…」と書かれていたが、殺戮に怒り、血を流しながら空襲の中空を飛び回る彼に胸が痛む。救えるのは90になったソフィーに芽生えた感情。
ラスト、あっけなくも暖かくなる世界が待っている。
この作品はどこまでもお伽話だ。今、戦争を扱いながら、『ナウシカ』的物語でなく、喜びと恋愛に焦点を当てた事はとても意味があるように感じる。私が避けていた頃、監督の提示した楽観的理想とは、よりファンタジーでありながら重みが違う。
原作はフェミニズム色も強いという噂。きっと映画とは全く異なる味わいなんだろう。こちらも気に掛かる。先に読むか、後に読むか。まだ劇場に足を運んで無い人は選択の余地あり。
reviewed by chihiro
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