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The Millions
THE MILLIONSはハードロック愛好者の長髪をバッサリ切り落として、短髪やモヒカンにしてしまう可能性を秘めたバンドだ。ラウドとポップという接点が見えずらい場所によくぞ身を置いてくれた、と心底思う。実はぼくも洋楽の入り口はVAN HALENだったりする。HANOI ROCKSを導線としてパンクに走ったから、このアルバムを聴いた時にはHANOIと同じ匂いを感じ、嬉しくなった。
ポップなパンクで弾け飛び、時にはエモーショナルに聞かせつつも、ここぞというタイミングでギターの泣きを散りばめられ、彼らの幅の広さを感じてしまう。それぞれの曲の頭だけとっても、様々なバリエーションがある。歪みを効かせた音一発でうならせるかと思えば、親しみ易いメロの疾走もあって、聞くたびに様々な角度から切り取ってみたくなる。シンプルなパンクに無理矢理ハードロックを絡めようとすると、どうしても上下左右にはみ出してしまうけばけばしさというものが見えてしまうが、彼らにはそれがない。ハードロックの形からパンク、パワーポップへと自然に変化したサウンドで「はみ出す」ことなどあるわけがない。ラウドな要素を下地にして、皆が歌えるアップテンポなメロで味付けされた楽曲は、「柔」で心躍らせるパワーポップ/ギターポップの型のみにはまることなく「剛」の力も発揮して、いとも簡単に気持ちをさらっていく。OFFSPRING、WEEZERあたりが好きならもちろんイケる。ZEBRAHEAD好きも聞いてみたらいいかもしれない。と同時に、LENNY KRAVITZ、CHEAP TRICK、BLACK SABBATHなど…一歩間違えば主張しすぎてしまう、そんな隠し味も堪能できる。まさに音のグルメだね。彼らの後ろにいろんなバンドが見えるが、決して染まってはいない。あくまでもスパイスなんだ。
NEW YORK DOLLSにイジー(ex.GUNS & ROSES)が加入するこのご時世、何があってもおかしくはない。「なぜ?」などと疑問に思う前に『Million dollar rock』を聞いてみよう。少しは解決されるから。
reviewed by taiki
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