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「なーんか、気に入らねぇわ」ってヤツがいいんだ。
とりあえず、RIOT、RADIO、LAW、TOO MUCH…単語だけを切り取って突きつけてみる。勘のいい人ならばTHE CLASH〜THE SPECIALSあたりを想像するだろう。また、70年代後半に「ディスコ」に入り浸っていた人ならば、今は無き新宿のツバキハウスを思い出したりするかもしれない。そんな人は、今すぐレコード屋に行って、買え! そして聞け! このレヴューは後回しにしてもらって構わない(発売日は11/3)。
イギリスが経済的に不安定でヒリヒリしていた時代の中で生まれた音を、経済が好調な今の時代に再び生み出しているのは、THE DEAD 60'Sという、当時生まれてもいない連中であるから驚きだ。彼らと同世代の僕がこの夏、生で最も見たかった(でも結果的に見れなかった)バンドであり、彼らに対する嫉妬からくるあてつけのレヴューと思うかもしれない。実際のところ、その通りだ。僕がもっとも欲している音をタメくらいの人間が演っているのは吐き気をもよおすくらいに悔しい。
1曲目の"RIOT RADIO"と2曲目の"YOU'RE NOT THE LAW"(実は日本のレーベルと契約をしていない段階で発表されたEPからの曲なので、時期的には早い)では基本に流れるエッセンスは同じだが、前者はけしかけて歌うパンク寄り、後者はダブに寄った曲となっている。その日のテンション次第で、聞き分けたりすることも出来る。アガっていればはち切れるくらいに暴れたいし、凹んでいれば重いのを一発喰らいたいだろ。
"RIOT RADIO"は、ドラムはシンプルな裏打ちのビートでひたすらにリズムを刻み、ベースもアクセントとして存在し、2本のギターは揃いも揃ってリードギターというこじゃれた存在を排除して淡々と突き進む。そんなメロに乗る鼻にかかった訛りの強いヴォーカルは、焦燥感を剥き出しにして始まるくせに、尻には決まって嗚咽のような余韻が残る。これがバックのサウンドと絡んで、たまらない。そしてリヴァーヴのかかった「アッアッアッ、アウーッ!」の雄叫びを差し込んだ後の間奏では、鬱憤を晴らすかのように無節操なギターがかき鳴らされる。対して、初っぱな空襲警報が鳴り響き、間発入れずキーボードが不安定な曲線を描いて僕らを惑わせてくる"YOU'RE THE NOT THE LAW"は残響系のエフェクトとギターのカッティングが冴える、けだるい曲だ。"RIOT〜"で見せた潔い終わり方とは裏腹に、こちらは終わりのない曲となっている。なぜなら、最後もまた闇に消え入る空襲警報なのだから。
後に続くのはサウンドシステムで聞きたいくらいのダブが3発も収録されている。KING TUBBYのように捕まったらばとうてい逃れることができない世界だ。サウンドは重く、聞く者を深い奈落へと引きずり込んでいくはずだ。一般には理解されにくいダブを、レコ屋の平台を軽々と陣取って知らしめてくれるのは、やはり彼らしかいないのかもしれない。
THE CLASHが、様々な切り口を見せた79年発売『LONDON CALLING』以降をもろに感じさせる音世界。特筆すべきは、よくあるTHE CLASHの「パンク」という一部分のみを抽出して表現するだけでなく、レゲエやロカビリーまでも貪欲に取り込んだ部分も、全て理解して吐き出すことができる唯一のバンドではないか? ということ。少々気が早いかも知れないが、次回作はまだか、などと期待してしまっている。その時までには、前置詞としての「THE CLASH」が無くなるようになってもらいたいと思う。
なお、このシングルには"RIOT RADIO"のビデオが収録されています。歌うTHE DEAD 60'Sももちろん見れますが、ゲリラ的なロケ映像とかもあります。舞台は…とにかく人がうじゃうじゃいるところですよ。
reviewed by taiki
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