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みんなの衰退と滅亡
モーターソフト(Motorsoft)による『The Decline & Fall of All Y'all』(みんなの衰退と滅亡)は、そのサウンドも存在理由も、おそらく近年耳にしたことのないものだろう。『Decline and Fall』は、断片的にしか語られない「隔離された地」(Quarantine)の時代ロックウェル・コーディ(Rockwell Coady)のバンドの存在を記録するアルバムの初リリースだ。これは、始まったばかりの物語の一部だが、この物語がいやおうなしに進んでいき、その先に予断を許さない展開が待ち受けていることは、すでに約束されている。ロックウェル・コーディが、誰も知り得ない場所で、すでに浮腫んで腐りつつあるというささやかな事実があるにしても。
それでも、モーターソフトのゴーストライターであり分身のノーマン・コーディ(Norman Coady)は、誰も耳にしたことのないモーターソフトのアルバムを、できるだけ多く整えて、果断にリリースしていこうとしている。コーディの創造性は、複雑怪奇なニューヨーク隔離の物語を肉付けする、果てしない詳細な描写のなかに潜んでいる。ダーティ爆弾がウォール街で爆発し、パニックが起きた。マンハッタンからは人々が大挙して出て行き、島には1万人あまりしか残らなかった。モーターソフトは時代の語り部で、何もかも奪い去っていった騒ぎの後にマンハッタンで起こった奇妙な出来事について、音楽による解釈を与えていた。
アルバムの付録解説とコーディの4巻にわたる小説『The Decline & Fall of All Y'all』の第1巻は、モーターソフトの物語を具体化し、こういったシーンやサウンドやバンドを生み出した錯綜の時代を、重なり合った層を1枚ずつはがすように露わにしていく。これらの記録は、豊富で内容が濃く、出来事の全容をかいま見せるいっぽうで、またさらに疑問を創り出してもいる。
この世界を味わってみたければ、相互に関連するサイト、Million StoriesとMotorsoftに飛ぶだけでいい。それらのサイトには、ロックウェル・コーディ、モーターソフト、隔離された地の背景情報が、写真とともに掲載されている。しかし、それですべてが分かるわけではない。計り知れない深みへの入り口にたどりつけるだけだ。この世界全体は、物語と、そのなかに存在する人々と、一見取るに足らないものたちという無数の断片が、徐々につなぎ合わされて創造されるのだ。このことをロックウェル自身から聞きたければ、デボラ・モス(Deborah Moss)による彼のインタビューが存在する。
音楽的には、モーターソフトは、先人たちの音楽をワイルドに乗りこなし、無垢なヘビーメタルからこの世のものとは思えないロック・シアターへと自在にシフトしながら、その両者を組み合わせて、あるべき姿にした。知的で複雑にもつれた歌詞は、両者の在り方を茶化しながら称えている。すすり泣くベース、濃密なコード、急上昇するギターソロ、うねるサウンド、徐々の高まり、爆発、静寂、そしてチャージしていく――力と混沌と隔離された地をテーマとする不可思議なロックオペラが構成されていく。
アルバムのSide 1は、シングルを集めたもので、流れ出すようなモーターソフトの初めての曲『Hexodus』[hex(呪い)+exodus(集団移動、脱出)/大移動をもたらした呪い] で始まる。この歌詞は全体のテーマを映し出している。
You will have your disillusionment handed to you on a gold platter made of brass!
You will be standing first when of course you should have been standing last!
You will crumble into the ocean like a beautiful ruin!
But you will have at last, from your vaulted past, absolution!
金メッキの真鍮皿に載せられた幻滅を、君は手渡されるだろう!
当然最後尾にいるべきときに、君は最前列にいるだろう!
美しい残骸のように、君は海に散るだろう!
だけど最後には、君は得るだろう、君の葬られた過去から――赦しを!
この曲の旋律は、バウハウス(Bauhaus)の邪悪なツィークのうめきへと落ちていき、スタッカート調の間奏の後に、さらなる咽びが続く。次の『I Also Like the Rain』(俺は雨も好きだ)では、曲調が柔らかく変わるが、長くは続かず、ギターのクランチが、ロックウェルがマスターエンジニアのラファエル・アランハンドル(Rafael Allenhandre)と仲たがいしたことを物語る。
バンドのテーマ曲、『Motorsoftly』(モーターソフト風に)が放つのは、神をも畏れぬ金属音を奏でるギター、そして、気も狂わんばかりの詠唱…これは、自己を宣言する激しいクレッシェンドへと執拗につながっていく。この曲は明らかに歴史の終焉をほのめかしている。しかしその前に、ロックウェルのソロ時代の過去が、ルー・リード風の突き進む歌詞とギターを擁する賑やかな『Mastered』(極み)で露わになる。
アルバムのSide 2は、「争乱への渇望」(Lust for Strife)をテーマとした未完成の連作で、住人たちが大陸からの侵略がいつ始まってもおかしくないと思ったときの、隔離された地の「ひとときの静けさ」(Great Lull)とその後を描き出す。『Lenape Lullaby』(レナペの子守唄)は、穏やかな調べで一息つかせる。『Lust for Strife』があざけるようにひとときの静けさの終焉と暴動を求めて叫び、合唱を誘うリフレインで群集をくぎづけにしたまま、『Unbridled』(拘束からの解放)のヘビーなリフが被害の様を伝えはじめる。この曲は、前のめりにたたみかけ、猛襲を思わせる拍子をたたきつけ、大音量で、圧倒的な音を浴びせかける。そしてたどりつく『Follow Me Down』(俺についておいで)は、このシーンへの賛美の曲で、アルバムの最後にふさわしく、壮大でもの悲しい。
少し頭が混乱するかもしれないが、心配はいらない。このアルバムは、音楽的影響と、独自のオリジナリティと、そしてなによりも音の洪水にあふれた、好奇心をかきたてる1枚として、完成している。キャッチーな構成に、聞き手は、大聴衆の興奮と熱狂の渦に巻き込まれたかのように、我を忘れて頭を振る。集中して繰り返し聞くと、喜びと理解が深まる。詩的な歌詞のなかのきらめくウィットと、作曲のダイナミズムが見えてくる。今後のモーターソフトのアルバム・リリースになにかを望むとすれば、それらの新たに発見される録音が、さらに鮮明な音を奏でることだけだろう。それにしても、納められていた場所から最初に姿を現した作品として、この1枚は感動的だ。
モーターソフトのメンバーは、ギター、オルガン、ボーカル--ロックウェルコーディ、ボーカル--マリーク・ダムフィー(Marike Damhuis)、ドラム、ボーカル--ダニー・W・レオ(Danny W. Leo)、ベース--ギブ・スライフ(Gibb Slife)、ギター--マーニー・スターン(Marnie Stern)。
しかし、すべての音楽を収集し、小説を書き、ウェブサイトをデザインし、それらを鮮やかな盛観さと見る角度によって果てしなく変容する実態で満たしているのは、ノーマン・コーディだ。ブルックリンというボトルのなかを吹き荒れる旋風であるコーディは、小説、クラフト、グラフィックデザインを備えたパフォーマンスアートを提供している。彼は都会での生活の高揚と消耗と、大陸の牧歌的な平草原の倦怠を対照する。目を離してはいけない。この壮大な叙事詩的世界では、部外者にならないほうがいい。とてつもない嵐の到来に気づけない、などということがないように。さらなる情報とアルバムの購入には、次のサイトへ進もう。
reviewd by donald
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