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面白いものが出た。アジアの風こと上々颱風の二枚の音源である。
1980年に前身のバンドである「紅龍とひまわりシスターズ」が結成され、それから6年後に改名し、1990年後にメジャー・デビューを果たして今に至る。かなり端折ったがこれが上々颱風の歴史だ。
そして今回紹介するのは前身バンド・紅龍とひまわりシスターズ時代のカセット+初公開の当時のライヴ音源を収録した『アジアが一番 復刻盤+秘蔵ライヴ音源』と、上々颱風インディーズ時代のライヴ音源『上々颱風JIROKICHI DAYS 1988』の二枚。これが「初期のレア音源」とひとくくりに言ってしまうのは勿体無く思うくらい興味深い内容となっている。
最初に『アジアが一番…』の方をご紹介しよう。前身バンド紅龍とひまわりシスターズは紅龍と西川興子以外は全く別のメンバーから構成されており、楽曲のディテールには既存のCDに収録されている曲の違いを発見できる。いくぶんか存在感が強くなっているリズム隊の音と、ギタリスト(!!)の存在で、このCDの全体的な印象は「バンドサウンド」である。
現在のようにあらゆる楽器の良さを引っ張ってくるのでなく、どの曲でも一貫して響く乾いたスネアドラムの音や、いかにも80年代的な疾走感のある16ビートには思わずニヤリとするに違いない。また、これは復刻盤というシロモノの副産物だが、音質が昔のカセットテープのそれになっており(注:でもノイズなどは無い。)楽曲がレトロな空気に包まれているのが非常に趣深くなっている。
そしてもう一枚、『上々颱風JIROKICHI DAYS 1988』を私は強く勧めたい。このクオリティで当時の音源が残ってくれていたことにまずは感謝しつつCDを再生させる。一曲目”上々颱風のテーマ”から伝わってくる14年前の彼女達の空間、ホンワカしたMC(笑)や三弦の特徴的な”上海我愛弥”などで聴けるお祭りビートに西川の声という組み合わせが時折見せる若さがとても新鮮で、荘厳さすら思わせる近年の彼女達のサウンドとは一味違った魅力を楽しめる。その場のアットホームさも手伝って、”美は乱調にあり”から”ハイハイハイ”に続くあたりの「いい感じ」は他のCDから見つけ出すのはなかなか難しい作業であろう。上々颱風の陽気さが一番にじみ出た良質な一枚だ。
散々違いを楽しめるようなことを書いてきたが、根底にあるサウンドコンセプトや歌の調子は紛れも無く上々イズムである。陽気な、そして時として儚げなメロディが今と変わらずに歌われているのを聴けば、そりゃあ25年近くも続けられるわけだよなんて思うだろう。
マニアックに違いを見つけるのも良し、新譜としてこれからの季節のサウンドトラックとするも良し、そして(うちのマスターみたいに)これら二枚を買うとついてくる実に彼女達らしいキャンペーンにちょっと挑戦してみるのも悪くない。なにせ、“北の盆”西馬音内(にしもない)盆踊りVIP観覧旅行:秋田・羽後町西馬音内盆踊りを楽しむ2泊3日や、“野生鹿の棲むまち”小値賀(おぢか)の自然を満喫旅行:長崎・五島列島小値賀島への2泊3日旅行なんてものまで当たるチャンスがある。色んな意味でオイシイ二枚だ。
reviewd by ryoji
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