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どこかでサム・クックはポップなソウル・シンガーだといった印象ばかりが先行していた。今でいうなら、イケメンで、一般的に知られているヒット曲も「You Send Me」(Fairgraound Attractionのカバーがいいなぁ)や「Wonderful World」(これはテレンス・トレント・ダービーのヴァージョンかな)といったラヴ・ソングが中心。まぁ、このあたりといったらすでにスタンダードで、カバーしているアーティストを上げていったらきりがないと思うけど、ともかく、そんなポップな天才ソウル・シンガー&アーティストといったニュアンスの方が強くて、それほど彼のことを掘り下げたりといったことはしたことがなかったのだ。
でも、ソウル界の巨人という評価もあって、興味本位で手にしたのがこのDVD。そして、わずか1時間10分のドキュメンタリーでサム・クックに対する見方が180度変わってしまうことになる。
ボーナスとしてアレサ・フランクリンやボビー・ウォーマック、ルー・ロールズといったアーティストたちとの約2時間に及ぶインタヴューが加えられているこのDVDは、タイトル通り、伝説となったサム・クックの子供時代の話から、ゴスペル・グループ、the Soul Stirrersのヴォーカルとして脚光を浴び、独立してヒット曲を連発していった、ある種のサクセス・ストーリーを貴重な映像をふんだんに織り込みながら描いているドキュメンタリー。が、これを見ていると、ミュージシャンだとかアーティストだといった言葉を遙かに越えた偉大な人物として人種差別に向かい合って闘い続けたサム・クックの生き様を知ることができるのだ。
日本人にとって実感としてあの時代のアメリカをとらえることは、かなり難しいと思うのだが、ちょっと考えてみれば黒人が人間として認められたのはわずか40年前だったということに気づく。なにせその前まで黒人には選挙権もなく、まるで奴隷制度がそのまま残っていたような状況におかれていたのが彼ら。その時代にヒット曲を連発していった彼がどれほどの矛盾や壁にぶち当たっていたか...
そのプロセスでシンガーであり、ソングライターであり、同時に、自分の音楽を守るために会社を設立し、プロデューサーとして彼に続く黒人の音楽を育てていったこと、さらにはそれが発展していって、モハメッド・アリやマルコムXとの交流が生まれたことなどがここに全て詰め込まれている。
実は、アレサ・フランクリンとサム・クックが「いい感じになりそうだった」というアレサの告白が収められていたりと、そんな裏話も面白いけど、同時に、ディランの「風に吹かれて」がきっかけとなって、名曲「A Change Is Gonna Come」が生まれたといった逸話も面白い。(ちなみに、ザ・バンドのカバーが超傑作)
また、この曲が直接的ではなくとも、高らかに黒人解放を訴えていたことは周知の事実だが、この曲が生まれてまもなく、彼が「不幸な射殺」という形でこの世を去り、そのしばらく後にマルコムXが暗殺されていったことにいろいろな思いを巡らせてしまうのは筆者だけだろうか。
このDVDを見てサム・クックという人間の偉大さを思い知らされたのと同時に、アメリカの歴史のなかで音楽がどれほどの力を持っていたのかを思い知らされたように思える。ソウル・ファンやサム・クックのファンだけではなく、音楽になにかの意味を見いだしている全ての人に見てほしい作品だ。
reviewd by hanasan
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