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ユルい。ボサあり、レゲエあり、ドラムンベースあり、タンゴあり、結構多彩なリズムはタイトな印象なのに、それでもユルい。気だるく色濃いバイーアの香りを漂わせる彼の歌声のせいか、それともワウをかけてつま弾かれるひかえめでちょっぴりファンキーなギターのせいか。所々に絡むエレピやバンジョーのサウダージした音色のせい? このユルさは、同じバルセロナに住むマヌ・チャオのアルバムが、僕のまわりの匂いに敏感なスモーカーたちに支持されている理由とはまた違う、どこかいなたいユルさだ。
このキュートなジャケットは、バルセロナ在住のブラジル人アーティスト、ヴァグネル・パと彼のユニット、ブラズーカ・マトラーカの2ndアルバム。人気DJとして、またベーシスト、ギタリストとしてマヌ・チャオやマカコと交流が深く、フェルミン・ムグルサの『FM99.00 DUB MANIFEST』なんかにも参加している。アルバムタイトルは「止まらない通行人」という意味。多民族国家スペイン随一の港町、移民も多いバルセロナのシーンを文字通り駆け抜けてきたのだ。
もしあなたが、このアルバムを聞くのに最適な状況があるとすれば、馴染みのバーで初対面の客と会話を交わして、ふとなんとなく沈黙が続いたとき。彼の音楽が懐かしい匂いのように空気に浸透しているのに気づくだろう。もしくは夕暮れの駅前の交差点のような雑踏のなかにいて、人ごみをすり抜けながら自分の存在を意識しようにも、できないでいるとき。ウォークマンのイヤホンを耳に入れれば、周囲の喧噪がなにかの映画の1シーンに見えるくらいリラックスできるはずだ。
でもたぶんそれは、彼の音楽のどこかに、根なし草のような孤独が潜んでいるのを感じるからなのかもしれない。
reviewed by ken.
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