映画『モロ・ノ・ブラジル』
 

MORO NO BRASIL
2002年制作 : ブラジル映画
(配給 /宣伝 : アルシネテラン)


監督:ミカ・カウリスマキ
脚本:ミカ・カウリスマキ、ジョルジ・モウラ
出演:セウ・ジョルジ、マルガレッチ・メネーゼスほか計31組のアーティスト等

12月20日(土)よりシブヤ・シネマ・ソサエティで公開

このほか、最近、Magが紹介したブラジル映画に『小さな楽園』があります。ご関心のある方はこちらをチェックしてくださいませ。

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 ブラジリアンミュージックに焦点を置いたこの映画は「ブラジルに住んでいる」という意味の言葉をタイトルにしている。その題材が指す通り、スクリーンには約百分の間、飾らない真のブラジル像が映し出されていた。

 ブラジルといえば「情熱の国」や「サンバの国」などと形容し、サンバの衣装で着飾った小麦色の女性などを想像するかもしれない。だが、そんな華やかな印象を抱いていた人は、この映画が始まってすぐにそのイメージが音を立てて崩れていくことに気付くだろう。

 ブラジルの音に魅せられたミカ・カウリスマキ監督が案内役となって、彼の嗅覚に任せるままに続く4000キロの旅。各都市で出会うミュージシャン達は各々の目的意識をもって音楽と向き合っている。ある者は自分、そして自分の種族の自己証明の為の音楽を歌い、またある者は貧しいさをバックグラウンドに背負って歌う。宗教と密接に関わる音楽や、スラムに生きる少女達の救済を目的としたダンス・コミュニティなどは、同ジャンルで括られそうなキューバの「ブエナビスタ・ソシアル・クラブ」すら脚色に見えてしまう程のリアリズムだ。

 そんな痛みにも似た感情を抱きながら改めてスクリーンと対峙する。するとようやく、あの魅力的に刻まれたパーカッションや土臭くありながらも研ぎ澄まされたグルーヴが、今までのステレオタイプを打破して自分に飛び込んでくる。ブラジル産の多種多様なサウンド達が持つ躍動感にそこではじめて気付くのである。

 その飾り気の無い粗野で力強いリズム、またそれを打ち鳴らし、踊り、歌うブラジル人の太陽に照らされた褐色の肌の印象は、カフェ系とカテゴライズされるブラジリアン・ミュージックとは程遠く、そして美しい。地球の裏側の国から届く音達の真髄を知ったような気がした。

 ヒップホップ、パンク、グランジ...コンテンポラリーな音楽ジャンルの中にも同様にして、生まれるべくして生まれたと言わんばかりの社会的背景が存在するものが多々ある。そして我々は今日も様々な音と付き合って生きていく。それらひとつひとつと向き合っていく手法をマニュアル化したような映画であった。

 なお、最近のブラジルの名作『シティ・オブ・ゴッド』に出演している「二枚目」ことセウ・ジョルジが、今作でも後半に登場する(ドキュメントなので勿論本職ミュージシャン役として)。真っ当な志を抱きながらギャングの道を行く「彼」、そしてホームレスから幸運にもミュージシャンとなった彼...どちらも実に「ブラジル的」であり、両作品で見比べるのもまた一興かもしれない。


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