ジョアン・ジルベルト
 

Joao Gilberto

三月の水
 

 

a tribute to Joao Gilberto

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届く音楽


 ほとんどの人は音楽をBGMとして聴いているんじゃないかな。クラシックを聴きながら本を読んだり、ジャズを聴きながらお酒を飲んだり。音楽ってまるで空気のようなものなんだ。気付いたらそこにあるもの。「ふと気付いたら音楽が鳴っていた」そういう瞬間って素敵だと思う。それは音楽を生活の一部にしてしまっているんだから。

 その「ふと気付いたら音楽が鳴っていた瞬間」を思い出してほしい。それは「耳を傾けた瞬間」でもあるんだ。そしてその音は「直接あなたに届いた音」なんだ。この作品はボサノヴァの最高傑作の一つと呼ばれている。ボサノヴァとはブラジルにジャズが伝わって、そのジャズを再解釈して生まれた音楽。

 ブラジル音楽と言えばサンバが有名だけど、サンバって踊る為の音楽だと思う。「よし踊るぞ」って意気込んで聴く音楽。日常でそういう音楽を聴くときはどうしても構えて聴いてしまうし疲れてしまう。つまり僕らを無防備にさせてくれないんだ。ブラジルにボサノヴァっていうやさしい音楽が生まれたのは、サンバより安らぎを与えてくれる音楽を人々が欲していたからじゃないのかな。

 僕は疲れたらこの『三月の水』を無性に聴きたくなる。聴くたびにくつろぎたくなる。でも、いつの間にかコンポに耳を傾けている自分にふと気付くことがあるんだ。『三月の水』には僕らを無意識のうちに無防備にさせてくれる何かがあるんだよ。その何かはジョアン・ジルベルトのやさしく話しかけてくるような歌声かもしれないし、品のいい小鳥のさえずりのようなギター・サウンドかもしれない。

 もし、『三月の水』を聴いて、無意識のうちに音楽に耳を傾けることがあったら、それはきっと音楽以外のほかの何かが要因じゃなくて、ジョアン・ジルベルトの歌声、そしてギタープレイ、つまり音楽そのものが直接あなたの感性に届いた瞬間なんだ。


reviewed by 田中喬史.
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