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 私はこの作品を聴いて、KID Aから感じ取ったあの恐怖、それと同時になぜか涙のでてくる感覚を理解した。その無機質さ、何とも冷淡なフューチャーサウンド。不思議だったのはその音を私の脳みそが求める、ということだった。なぜ? そこから同情を感じるわけでもない。何かを学び取るわけでもない。喜びをもらうわけでもない。ただそれを聴くと鳥肌が体を覆い、涙が視界を隠すのだ。感動なのか、癒されているのか、それさえもわからない。なのに私の心は体にあらゆる反応を発信させる。こんなに温度のない世界なのに。

 そう。この温度のない人工的なエレクトロの音が私の心を揺らすのだ。私の心の奥まで入り込むのだ。そして突然の「裏切り」。私の心の中で鳴っていた穏やかな癒しの音。それが突然冷淡な不協和音に変わり、私の心を置き去りにする。そこではっと現実に呼び戻される。

 空想と現実を行き来する音達。それは聴いている私をも空想と現実のはざまに連れて行く。Aphex Twinの「DRUQS」。このタイトルは見事だと思う。そのままだと思う。まさにDRUG(=音)が私の細胞を操り、何とも不思議な今まで見たことのない世界を上映し始める。何とも心地よくてここからでたくなくなる。それと同時に細胞の奥で恐怖感を感じはじめる。

 そして聴くごとに違った「世界」を上映する。もちろん全く同じ音だ。CDの中の音なのだから。ところが私の脳みそは違った「世界」を見ている。それはいつも薄暗い。その世界を映し出す光の量がいつも違うからなのだろう。そしてどれだけ私の細胞を侵しているのか。

 理解なんてしていない。この音のすべてを。わかるはずがない。ただこの世界には2つの違った要素が行き来していることはわかる。「明」と「暗」。「温」と「冷」。「生」と「死」。「癒し」と「恐怖」。「空想」と「現実」。

 最後に現実に呼び戻れればいいのだ。 怖いのはその「はざま」におきざりにされること。


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