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陽気で颯爽としたスカ・パンクのオープニング ・チューン "Il Palazzo D'Inverno"を聴いただけでは、カリフォルニアかどこかのバンドと間違えてしまうかもしれない。でも、そんなキャッチーでエネルギッシュなサウンドに、疾走するバイクに跨がるように乗っかるのは、野太いダミ声のイタリア語。ローマのインディペンデント・レーベル GRIDALO FORTE RECORDSからリリースされたこのアルバムは、そのGRIDALO FORTEの歴史そのものと言ってもいいバンド、BANDA BASSOTTIの待望のニューアルバムだ。
実際、現在でも建築現場で働く労働者であるメンバーたちが、反ファシズムや反レイシズムを支援するベネフィット・コンサートを主催しながら演奏活動を続けていくうちにバンドの基盤を固めた経緯は、LAのお祭りバンド OZOMATLIともよく似ている。そしてそんな中で、フランコ政権下で抑圧されたバスク人のバスク語で歌うバンドNEGU GORRIAKと知り合い、交流を深めることになる。実はそのNEGU GORRIAKの中心人物が、昨年フジロックにFERMIN MUGURUZA DUB MANIFESTとして出演し、熱くてほんとうに素晴らしいパフォーマンスで3日間の祭りのトリを締め括ってくれたフェルミン・ムグルサ。NEGU GORRIAKが自身の歌の中でスペインのある将軍を批判したことから、逆に彼に訴えられ、表現の自由か名誉毀損か、というよりは一部の権力を公に批判することの是非を問う、永い裁判闘争の道を歩むことになる。
その6年の間、BANDA BASSOTTIはいったん活動を休止し、NEGU GORRIAKのメンバーはそれぞれの活動を選択することになったのだが、「裁判に勝ったらもう一度一緒にツアーをやろう」という彼らの約束は、ついに昨年果たされることになる。その復活ツアーのハイライト、ローマで8000人の観衆を集めたVillaggio Globaleでのライヴを収めたのが去年リリースされた"Un Altro Giorno D'Amore"。そしてこの"L'Altra Faccia Dell'Impero"は、だから彼らの久しぶりのスタジオ・レコーディング作となる。
アルバムの2曲目、『皇帝のもう一つの顔』と題されたアルバム・タイトル曲は、意外な(というか確信犯なんやろうけど)LAメタル風のギターのイントロから、一転、力強くてオーソドックスなスカパンクになり、「アメリカの平和は死の香りがする。すべての嘘と無関心は偽善のダンスのため。飢えと寒さと鉛の弾が迫る」と世界の支配者に対するリリ?クを毅然と投げかける。
スリーヴに記載されているイタリア語の歌詞とブロークンな英訳をなんとか拾うと、CLASHを彷佛とさせるチューンの"GHETTO 02"は反グローバリズム、叙情的なギター・ソロからドラマティックに展開する"Marghera 2 November"はおそらく、ミラノ郊外の公共工事での160人の犠牲者を出した事故の、責任を認めない事業者と彼らを無罪とした法曹界、政界の癒着について、ストレートに、市民レベルのあたりまえの感情を吐露しているのだと思う。その姿勢がBANDA BASSOTTIの最大の魅力なのだろう。イスラエルのパレスチナ侵攻に抗議して、実際に現地に飛んだのがBANDA BASSOTTIのメンバーとフェルミンだった。
そんなことは抜きにしても、キャッチーで力強く疾走感あふれるサウンドを幹に、ダンスホール・スカ風からスピード・キューバンまで音楽性豊かに枝葉を伸ばしているアルバムは聴き応え充分。曲が始まるたびに思わずニヤリとさせられてしまう。個人的には9曲目に収められている"Mezzi Litri E Canzoni"の、おおらかなブラスに導かれたスカが、Bメロでパンキッシュにテンポアップし、間奏でダウンしてダビーにアレンジされるところなんか、ツボ。
ゴリ押し一本ではないおおらかさ。そして訴えるべきことは訴えるというポリシー。それが他の似たようなサウンドをルーツにしているバンドとは違って、彼らをポジティヴに、エネルギッシュに存在させているのだろう。そしてそれは音楽を糧にした、人としての姿勢に他ならないからだと思う。
*参照 The Voice Of Silence. gridalo forte recordsに行けば、彼らの音を聞くことができます。また、Banda Bassottiのイタリア・ツアーの様子はTour ReportsにアップしているStreet Beat Festival(4/3-6)やFeaturesをチェックしてください。
reviewed by ken.
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