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――うわっ、兄貴どうしちゃったんだよぉ!
フジロックに大騒ぎのおかげで、直前に出たこの新作もずっと聴けずじまいだったが、ようやく落ち着いて封を切った途端、面食らった。「彼自身のルーツ・ミュージックの結晶」なんて謳い文句に、クラッシュのナンバー連打で泣いた去年の来日から、もっと血気漲るロックン・ロールか、はたまたレゲエ、ブラック・ミュージックあたりをイメージした私。なのに、オープニング"JOHNNY APPLESEED"の、このケルトな香りは何? フジで見たホットハウスにも負けてないぞ。
ケルト音楽に走って「どうしちゃったの?」という衝撃。一瞬、かつてウォーターボーイズのマイク・スコットに抱いた気持ちを思い出した。ドラマティックなギター・ロックからいきなりアイリッシュ・トラッドに走ったマイク・スコット。彼の場合はスコティッ
シュだから、ルーツ探求と言えば納得もいく。でも、ジョー・ストラマーのルーツって――?
と、解説など読むうちに、実は彼もスコットランドの出身で、トラッド・フォークを子守唄代わりに育った人だったことを初めて知った。日頃「兄貴カッコいい!」なんて言いながら、何も知らなかったんだと猛反省。
そして後に続く音は「グローバル」と冠するにふさわしく、「世界中の音楽と自分」みたいなバラエティぶりだ。ストラマー流ロック・レゲエのカッコ良さが光る"COOL 'N' OUT"はもちろん、よく聞くとストレイ・キャッツからボ・ディドリー、ストゥージズまでありとあらゆるアーティストの名が飛び交うDJソング"GLOBAL A GO-GO"。まるでプライマル・スクリームがやりそうな"BHINDI BHAGEE"や、のどかなラテンの"MONDO BONGO"。
よくよく思い返してみると、あの2枚組『ロンドン・コーリング』3枚組『サンディニスタ!』とクラッシュ全盛当時から「パンクのクラッシュ」にはおよそ似つかわしくないアルバムを出して来た彼。レゲエはもちろん、カリプソ、サンバ、ジャズやロカビリーその他ありとあらゆる音楽への挑戦は、確かに意欲作には違いないんだが、パンクに燃えてた当時10代の私には、さっぱり訳がわからなかった。で、すっかり疎遠になって20年。近年のクラッシュ再評価や昨年の来日公演で、ようやく私も再会できるだけの年季を重ねたつもりだった。
しかし、まだまだ修行(?)は足らなかったのだ。ラスト延々18分近いトラッドのインスト"MINSTREL BOY" に再度びっくり! うわ〜、ここまでやるかぁ。いや、きっとここまでやるからこそジョー・ストラマーなんだよな。ホットハウスのリアムが、ロック・バンドとしての音楽と自身のルーツのトラッドをごく自然に往復できることに常々感心している私だが、これでジョー・ストラマーもそのリストに堂々のランク・インである。
もはやこの人のカッコ良さはパンクだけじゃない。それ以上に無数の音との冒険を続ける姿勢にこそ輝いているのだ。やっと私も頭だけじゃなく、気持ちの上でもそう思えるようになってきた。果たしてそれをどんな風に見せてくれるのか。今から秋の来日が待ち遠しくて仕方がない。
reviewed by ikuyo.
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