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こんなに私達の中の「音楽に対する欲望」と呼び覚ましてくれたバンド、ここ数年いた? いいや、いないと思う。バンドに「過去の姿」を求めるのになれっこになったしまった私達の手をもっともっと先の方向に引っ張ってくれるのはどのバンドでもないこのMuseだ。それが「そうなりたいから」とか「こうやりたいから」やっているのではなく、もうMuseの生きる世界、Matt Bellamyの生きる混純、その渦をバーっとMattの頭から一気に放出させたような。きっとあの人の頭の中ってくだらないことから人生の意味まで深く考えすぎた答えと、考えすぎた果ての混乱がぎっしりつまっているんだろう。それを上手いタイミングで外に出してあげたらこんな大作が生まれてしまった。Matt Bellamyって人間は、本当に自分のプライベートだとか自分自身を隠すとか演じるとか、普通ミュージシャンが過敏になることと無縁なんだと思う。この作品を聴くともうこの人が最近どういう音楽にハマってた、とかどういうことを考えていた、とかすべてこっちがつっこまなくても見えてしまう。あっちから押し寄せてくるから。例えば初期に比較されていたRadioheadの最近の作品なんかはこっちが真剣にわかろうとしないと教えてくれない。このMuseの作品とはいわば正反対。夢にまででてきてうなされそうな勢いだ。
このアルバムは実にクラシカル進行の曲が目立つ。グランドピアノを大胆にフィーチャーしているという事実もあるが、それとは別に曲の進み方がとことんクラシックミュージック。クラシックとMattの曲調の共通点、「ドラマテイックさ」が交わりあって曲をとんでもなく過激に大胆に作り上げていく。聴き方によってはQueenかもしれない。このままこの作品はクラシックロックで終わるのか?と思うと、いやいや。ギターの爆音、ベースのドクドク感、Museの基礎も健在で、そのMattのギターとクリスのベースが重なり合うとRage Against The Machineになるわけだ。私はMuseはこの作品でてっきりこっちのメタルの方向に進むのだと思っていた。ところがこのアルバムは予想外だった。Museは単に若さからなのか、それともMatt Bellamyの性格のせいなのか、変化がめまじるしく早い。成長するのが早い、と言い換えていいだろう。事実、彼らのライブをたった3ヶ月おいて見た時のその短期間での異常な早さのライブバンドとしての成長ぶりに圧巻させられた。
「Plug In Baby」をはじめてちゃんと聴いた時の感想は、「ベース、AirのSexy Boyじゃん。」だった。たしかに彼らが公言しているようにAirやDaft Punkなどのここ最近のエレクトロニックからの影響もあるかもしれない。でもDaft Punkというよりも、New Orderなどの80年代のエレクトロニックミュージックを彷彿させる。例えば「Bliss」なんかはすごくその辺の匂いを感じる。
このアルバムのキーワード、クラシカル、エレクトロニック。そしてもう一つは1STにも数曲に現れていたMuse独特のメロデイライン。まるで日本の歌謡曲か演歌かなんかを彷彿させるMuse節。「Dark Shines」なんてそれにはまりすぎてて、たぶん日本人だったら思わず吹き出してしまうだろう。この曲以外にも、例えば「Space Dementia」みたいな曲も、ピアノの大胆的フィーチャーを無視すれば曲は完全歌謡メロなのだ。すごく不思議だけどすごくおもしろい。
このアルバムではMatt Bellamyがよくトムモレロとジェフバックリーを引き合いに出して公言している「テクニックと感情のぶつかり合い」が溢れるほど聴いてとれる。彼の絶妙ギターテク。それこそ練習しまくっただろうピアノ、そして1STにも増して聴くことのできるMattお得意のBuckley流ハイファルセット。
ここまでやってしまうともう行くところまで行ったんじゃないか?出し尽くしたんじゃないか?と思ってしまうかもしれないが、不思議なことにまだまだ先はあるし、これで終わらないだろう、という気にさせられるのだ。満腹感がない、というか。ここまでさせといて満腹感がない、というのも変だがこれがMuseというバンドである。私達の欲求をかきたてるのだ。今度はMatt Bellamyがどんなことに興味をもつのか、このバンドがどんな音を鳴らし始めるのか、全く予想不可であるからおもしろい。こんな壮大で大胆なアルバム作っておきながらMattの今の愛聴盤はWeezerの「Green Album」らしい。理由がシンプルで短いから。って… 本当にこの人はよくわからない。
reviewed by 高橋絵里.
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