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待ちに待ったMatt Wardの2作目が届いた。今回は「夢と記憶」がアルバムの底流となっている。フェリーニやディビッド・リンチのシュールな雰囲気が、インスピレーションの一端だそうだ。映画で表現されてきた不思議な意識の世界、それを音楽でやればどうなるか。そんな動機だったらしい。しかし…どうなるの?答:"End of Amnesia"になるのである。単純で申し訳無い。が、81レ2がどんな映画か上手く言えないように、この問いにも明快に答えられない。ということは大成功なのでは、Mr. Ward?
この実験的なコンセプトの核になっているのが、Wardとその協力者達のミュージシャンシップ。前作より多彩なスタイルとインストロメンテイションを使いこなし、個々の曲に微妙なひねりを加えている。音の重ね具合がいわば「ディープスペイス」を創っていて、聴覚の絞り加減で様々に聴き込める。トランジスターの雑音などがデコーになり、情景が曖昧に移ろう様が「聴こえる」のも面白い。
ギターの聴かせ所が多いのも今作の特徴だろう。Wardは本当に良いギターを弾く。どことなく切ない"Archangel Tale"や粋な"Silverline"。緩急の付け方が上手く、情緒のある音を出す。白眉は"Psalm"。ギター一本勝負、弦一本一本が見えるような臨場感と、スケールをフルに使ったゆとりのあるメロディーの組合せが絶妙。
再び映画のアナロジーを使わせてもらうと、オープニングショットは静かな目覚めを思わせるインストロメンタルのタイトルトラック。次に"Color of Water"にフェイドインし、和やかでリズミックなギターから、Wardのトルゥバドールタイプのボーカルにズームイン。全体的に静かな覚醒と言った感じだ。中盤オールディーを連想させる"Flaming Heart"で佳境に入ったかと思うと、哀愁感漂う"Carolina"へカット。〈もと来た所へ後ろ向きに歩いてる〉という不思議なイメージとリラックスしたメロディーは、ロングのドローショットと言った所か。
後半ジャジーな"Ella"や"Seashell Tale"のレトロなピアノと音質が過去に連れ戻す。"O' Brien"は淡々とした一人称と過去のフラッシュバックが交錯する、ちょっと面白いナレーションだ。エンディングクレジットは"O' Brien's Nocturne"。オープニングと対照的に低音のギターが余韻たっぷり、冒頭の目覚めが「夢から目覚める夢」だったのかもという印象で終わる。
Wardの音楽はどういう訳だかビジュアルを刺激される。前作Duet for Guitars #2を聴いた時は(飛躍するが)小津安二郎の様だと思った。そして今作はフェリーニ・リンチ張りの夢風景。予想外の展開、しかしWardの芯は変わらずギターとメロディーに主張されている。ここは一つ気ままなユングになってWardに耳を傾けて見るのも良いかも知れない。聴く人によって違ったビジョンを堪能出来るはずだ。
reviewed by NM.
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