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ツアー中のHowe Gelb (Giant Sand)に手渡した一本のデモ。Gelbに「Grandaddy以来のセンセイション」と言わせたこのデモが、Matt WardのデビューアルバムDuet for Guitars #2だ。去年GelbのOw Omレーベルからリリースされた。デビューにしては疑惑の渋味と納得の新鮮さを併せ持つ、魅力的な小品である。
このWardの音楽を表すのに良く用いられる比較はTownes Van Zandt、Bob Dylan、Niel Youngなど。しかしこれらは単にジャンルの比較ととっておいた方が良さそうだ。Wardのソングライターとしての強味は、これらの先駆者とは一味違った、あくまで肩肘の張らない伝統音楽へのアプローチにある。彼の音楽を特徴づける第一の要素は、シンプルで頭に残るメロディーとJohn Faheyの影響を受けたギター。スローなWho May Be LazyからアップテンポなIt Won’t Happen Twiceまで、どれをとっても衒いが無く心地よく耳に入って来る。一貫したlow−keyのアレンジメントと、Lo-Fiレコーディングの創る空間のある音質が、メロディーに調和するようちゃんと機能しているのも嬉しい。
さらに良く出来たことに、Wardは恵まれた声の持ち主でもある。ハスキーで温かみのある声は、Tom Waitsを若くして苦虫を取除きVic Chesnuttを掛けた、と言うと語弊があるだろうか。アルバムの一言目“I was washing…”から耳を捕えられる。最近増えてきたソングライター系のアーティストの中でも「聴かせる」声と言っていい。
一方Wardの新鮮な感覚が溢れるのが歌詞。記憶のフラッシュバックに暗喩をちりばめながら語るスタイルで、一見素朴な言葉に深みを与えている。歌われている内容は学生時代の洗車アルバイト(“Beautiful Car”)、病気の隣人(“Scene from #12”)、宗教(“He Asked Me to Be a Snake and Live Underground”)まで幅広い。どの曲でもWardは淡々とした描写に徹していて、無理に感情的な所が無い。極めつけは“Good News”だろう。反復の多いメロディと言葉で、大きな起伏も無くゆったりした調子で進んで行く曲。しかしそこにはちゃんと語り手の心の変移が暗示されていて、切ないクライマックスに至る。Wardのソングライターとしての資質を知りたければ、この曲だけでも一聴の価値ありだ。
GelbがGrandaddyのデモを手にして5年後、彼等はSophtware Slumpを作り上げた。Gelbを信用するなら、M Wardは今注目しておいて損は無い。たとえGelbのお墨付でなかったとしても、自分の耳で確めて行きたいアーティストだ。
2枚目のアルバム、“End of the Amnesia”が間もなくSaidera Recordsから発売、このDuet…日本では秋に同じくSaidera Recordsから発売の予定。
reviewed by NM.
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