|
|
たぶんこのアルバムはGRACEを何年もかけて深く聴き込んだあとに聴いた方がいいんだろう。このアルバムを手にとった大抵の人はこれに当てはまるだろう。だが私は違うケースでこのアルバムを手にとった。GRACEを買ってたった一ヶ月後のことだ。私はJeff Buckleyというミュージシャンを知ってまだ日が浅い。ただいえることは、彼の音楽は時間や時代性を超越していうということ。まだそこに彼がいてささやくように歌い嘆いているように感じる。
このライブ盤には違ったJeff Buckleyがいる気がする。ただ、‘違う’んじゃなくてこれが本当の彼の姿なのだろうとも感じとれる。だって彼の音楽はまさに‘彼自身’で、そこに身を投じているような気がするから。何にも身につけずに何を恐れることなく、ただあからさまにどこまでもダイレクトに歌いかけてくる。特に"What will you say"の歌詞はなんてダイレクトすぎるんだろう。−「Father do you hear me? Do you know me? Do you even care?」 痛々しい程の彼の投げかけに、その観客の中にはいない、CDプレイヤーの前の私でさえ戸惑ってしまう。それを彼はどこまでも何一つ隠さず、何を演じることなく彼自身を表現し続けている。この曲だけにいえることではない。この緊張感と予想不可能な展開への期待感。私ははっきり言ってこのアルバムを聴いてショックを受けた。こんなにライブに力を燃やすミュージシャンって今のジェネレーションに存在するだろうか? これだけ自分を音楽に投影できる人は存在するだろうか? まさに音楽を自分の鏡とし、その’瞬間‘ の自分の感情や心情でそのままをプレイする。
アルバム全体を通して聴いてみて、"Eternal Life"のあの爆発感、Jeffのモンスターのようなどなりとうねり声、その迫力感が、最後の、シンプルでとてつもなくセンシテイヴな"Hallelujah"につながることが信じられない。ただそれは成立するのだ。それをJeff Buckleyはいとも簡単にするりとやってのけてしまう。彼のすごいところはそれだ。そんな迫力感の裏でちらっと切なさがのぞいたり、美しすぎるビブラートからいきなり叫びに変わってしまう。その声のコントロールと感情の移転のはやさ。その感情が彼のもついろいろなパーツの声をコントロールしている気がする。それが曲をますます感情的に変えていっている気がする。このアルバムは決してただのライブ収録アルバムではなく、『Grace』の続編であり、Jeffと彼の曲達を違った角度で映し出す、またはそれらに違ったライトを当ててくれる、そんな作品である。
reviewed by 高橋絵里.
|
|
|