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「この作品は『絶望的な現実』を直視する問題作であり、次世紀の音楽
シーンを啓示する衝撃的名作である。」
これは、RADIOHEADの新作「KID A」に付けられたキャッチコピーの最後の一文です。これを目にした時、皆さんは何を思いましたか?
僕はこれを読んだ時に、SFアクション映画の代表作の一つと言われている、ハリソン・フォード主演の「Blade Runner」を思い出しました。この映画は、近未来の廃墟と化したビルが建ち並ぶロサンゼルスを描いた事により、高い評価を得ました。そして未だに新しい方向性を打ち出した映画として、引き合いに出されることが多い作品です。
'99年、キアヌ・リーブスが主演して大ヒットした映画、「Matrix」。CGと実際に撮影された映像との合成技術、新たに開発されたカメラワーク、そして社会性を十分に含んだストーリーにより、一躍、人気映画になりました。ただ唯一残念なことは、この映画で描かれている近未来の地球の姿です。人が機械種の奴隷となり、現実と思い込んでいた世界が、単なるコンピュータープログラムであったと言う画期的なアイディアは在ったとは言え、そこで描かれている近未来の地球の姿は、廃墟と化したビルの並ぶ都市でしかありませんでした。黒雲に覆われ、陽の入る隙間も無い絶望的な世界です。
ここで考えて欲しいのは、映画「Blade Runner」が持っていた斬新さではなく、この映画が、その後の製作者、一般の視聴者に与えてしまった、近未来都市像の固定観念の影響力、責任の大きさです。確かにIT関連の事業が進歩したり、公害が絶えないと言う現実はありますが、未来が絶望的な世界になると決まった理由ではありませんし、本来、何でも可能なはずの想像の世界が固定化され、同じような作品が作られるようになった事が残念でなりません。
RADIOHEADの新作「KID A」は、世間の捕らえ方によっては、正に映画「Blade Runner」と同じ結果を招く危険がある作品だと思います。実際に、多くの雑誌、メディアでその危険を招く方向で書き立てられているのを目にする事が多いです。音楽の世界を広げるために作られた作品が、近未来音楽の固定観念を産み出してしまうと言う皮肉的な結果にはなって欲しく在りません。
僕は飽くまで「KID A」を、RADIOHEADが今手に入る素材で、今出来る精一杯の事をした作品であるとしか考えていません。彼等の今までの歩みを知っている人なら、尚更それが分かると思います。それが何年かして、結果的に名作と呼ばれるようになったら、それはそれで良いのではないのでしょうか。
reviewed by 南慎治.
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