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「ポップ・ミュージックの豊饒」をまざまざと感じさせられる、どこまでも自由な表現感覚と限界なしの音世界が広がる、ギターロックでもない、ダンスでもない、ダヴでも、ヒップホップでもない。ただそこにはナチュラルな音が存在しているだけ、という今時珍しいくらいのまったいらな境地から音を鳴らしているのが、このGRANDADDY/THE SOPHTWARE SLUMPだ。唯一その「唯我独尊」状態と同じ感覚で語れるのはフレイミング・リップスくらいだろう。豊かな草原にコンピュータのキーボードのキーが浮かぶジャケットひとつ取ってみても、全く緊張感を感じさせない。音の構造自体は非常にシンプル、メロディの良さが全編充分に味わえる作りになっている。バンド・アンサンブルというよりはやや作りこまれた感が強く、このアルバムを聴く限り、やはりライヴ・バンドというよりはスタジオ・バンドのような手触りがある。シンプルさも、あえて手を加えつつ、シンプルにシンプルに持っていったというものだ。4/The Crystal Lakeの一回聴いたらまず忘れられないようなループから、後半部のノイジーなアレンジへの転換部などは特にそう感じさせる。全編に滾っている感覚は、DIY精神とでもいうのだろうか、よく言えば手作り感覚、悪く言えばちょっと素人くさい、音と音の継ぎ目がはっきりわかってしまう感じ。しかしそれは演奏が下手という事では全く無く、むしろ演奏自体はタイトでよく引き締まっていて経験の豊富さ、熟練度をはっきりと感じさせるモノではあるのだけれど、どこか良い意味での敷居の低さを感じさせるのだ。こういった攻め方をするアーティストは結構たくさんいたりもするし、音楽を志すアーチストにとっては一つの目標にもなりうるようなバンド/音だろう。これだけ緊張感というか、時代の使命感を全く感じさせないでレコードをリリースさせるって今時結構難しいんじゃないかって思うんだけど、このバンドは飄々としていて、でもしっかりと結束した音を出している。時代が、リスナーが求めている「現在の音」では決して無い。が、もう一つの視点から、「oasisやprimal scream、rage against the machine、nine inch nailsは本当に素晴らしい作品を出して、それは歴史に残る程素晴らしいモノだったけど、それは時代によって作らされたものだったんじゃないか? それは彼等が本当に表現したかったモノだったのか、目に見えない敵にさせられたモノだったのか?」という疑問にはっきりとこの作品は答える。タイムレスなポップ・ミュージックとしての「豊饒」。時代と戦う事はいつだって必要だ。だけど、本当の意味で、勝つ為ではなく自分の為にする表現こそが時代を変える事が、もしかしたら出来るんじゃないか? ごくごくパーソナルな音とことばによって綴られたこの短編はざっくりとしていて、しかし色んな感情をリスナーに呼びかける、好作品だ。
reviewed by baby-uncle.
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