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僕は、パンクといえばまずCRASSを想起する。CRASSは、79年にデヴューし84年まで活動していたイギリスのバンド、いや集団だ。8人編成のCRASSは、音楽活動云々というよりも本当の意味での活動家であった。政治、社会に対して確固たる主義・主張を持っていた彼らは、政治デモなどの直接行動は日常茶飯事であった。その他多くの活動を展開していたのであるが、その1つに音楽活動がある。つまり、レコードという媒体を最大限に利用して自分達の思想を表明すること、これも彼らの活動の1つなのである。だから1枚のレコードをとってみても、そこには多くのメッセージが込められておりその全てを明記することはできないが、主なコンセプトとして反戦、反核、反キリスト教、フェミニズム、反システム、動物虐待虐殺などがある。ただ、誤解を避けるためにもこれ以上深く踏み込むことはやめておく。
さて、上記のように強烈な政治的思想を持っていた彼らの作品の中でも、個人的に最も衝撃を受けたのが80年に発表された7"ep「NAGASAKI NIGHTMARE」である。この曲は原爆の被災地となった広島と長崎のことを歌っているのであるが、あえて曲名をNAGASAKIにしたのは広島のかげに隠れがちな長崎の悪夢をも知ってもらいたかったからか。レコード盤に針を落とすと、鎮魂の鐘が鳴り続く中、「1945年、日本の広島は・・・」という日本語の語りが入る。その後、CRASS流の弾むパンク・ロックに移行。とにかく、音の隙間から吹き出してくる重く暗い空気は原爆投下後のそれと同じで、極限の緊迫感に窒息寸前。例えれば、原爆投下後の空に突然どんよりと立ちこめた分厚い真っ黒の雲、そしてそこからシトシトと降り始めた灰に染まった黒い雨、さらにその雨が廃墟と化した街を覆い尽くす様を思わせる。最後は、前半の鐘が再び鳴り続き終わりを告げる。また、voのほとんどを女性が担当しているのは、男性が生み出した戦争の犠牲となったのが兵士よりもむしろ何の罪もない女性と子供だという考えからだろう。事実、ポスタージャケットの中のアートワークには、母親とその子供、あるいは被爆の治療を受けている子供の写真が載っている。音のみならず、アートワークなど全てに反戦・反核のメッセージを叩き込んだのである。
反戦とか歌っているバンドにリアリティー感じない。反戦を歌ってどうなる? 数枚のレコードを出したくらいで世界から戦争や殺戮がなくなるとは思えない。事実、CRASSが反戦を叫んで20年経った現在も世界中で紛争が後を絶たないではないか。彼らの活動は無駄なのではないのか?
こんな反論が返ってきそうだ。確かにそうかも知れない。では、争いが絶えない事実を知っておきながら見なかったことにするというのか? 今、こうしている間にも何の理由なしに人が殺される状況を黙って見過ごせというのか? 当時の彼らにそんなことはできなかった。思い立ったらすぐ行動に移す。他の誰かがやってくれるだろうという甘えではなく、自分がやるんだというDIYの発想。たとえダメだとしても、行動を繰り返し継続すること。彼らの行動の結果がどうあれ、その物事に取り組む姿勢は余りにもパンクだと思うし、そこから僕自身多くのものを吸収してきた。
驚くべき事に、このCRASSのメンバーであったスティーヴ・イグノラントはSTRATFORD MERCENARIESというバンドで未だに活動している。形は違うにしろ、20年以上もパンクバンドでの活動を続ける彼のスピリットと本気のアティテュードに畏敬の念すら感じるのである。
reviewed by 吉田健一郎.
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