椎名林檎

椎名林檎

"勝訴ストリップ"
(国内盤)


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椎名林檎

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 果てしない自己との格闘。絶対に「存在しない」答えへの飽くなき欲求こそがこのアルバムのテーマである。明日への希望や自己嫌悪、時代の混乱/暴動、まさしく「本能」のおもむくままに表現することの誠実さがないまぜになって見事なまでに一人称で描かれている。何かを他人からわけ与えてもらいたがっているかのような弱さは微塵も感じられない、きっぱりとした独立宣言のようなことば/音がひたすらに続いていく。その底辺にあるのは間違い無く「何処にも所属しない、出来ない自分、そしてそれを肯定していくしかない現実へ一矢報いる」為の方法を追い求める姿であろう。どのような音表現をとっても、それが例えば「アイデンティティ」のような攻撃的なアレンジ、過激な詞であれ「浴室」のようなビートの上で成り立つ世界であれ、もちろん「ギブス」・「本能」の切実さであれ、彼女は絶対に満たされない。まるで、満たされたが最後、全てが無に帰す事を悟っているかのように。そうでなければ、恋人と自分をカート・コバーンとコートニー・ラヴになぞらえて「喜ぶ」ことなど絶対に出来ないだろう。永遠に、本当に永遠に捕まえる事の出来ない「答え」。だから、「明日の事はわからない/だからぎゅっとしててね」(ギブス)と言ってその獲物を一瞬だけでもその腕の中で抱きしめようとするのだろう。しかし、そこには何らかの真実が存在する。このマッチョすぎるくらいにストイックな自己内省アルバムの唯一救われる瞬間だろう、しかしその直後「闇に降る雨」では「満たされる日が来る筈も無い/カラダが生きてる限り」とまたしても/やはり現実に向き合っている。そんな怨念のような祈りと至福のメロディ・センスとの皮肉かつ幸福な出会いこそが椎名林檎なのだ。音作り自体は極めてシンプルなモノになっている。やはり椎名林檎というポップ・イコンが作り出す、音楽というよりはもっとアーティスティックな「表現」であると感じる。是だけのメガ・ヒットを生み出し、そしておそらくは自らが望んだ、この表現(そしてその行為を通して巨額のカネを得て、「生きる」事に成功している現実)を通じて、僕等は何故か彼女が幸せそうな顔をしているのが想像できない。「好きな人やモノが多すぎて/見放されてしまいそうだ」(月に負け犬)という言葉が象徴しているのではないだろうか?僕等はこんなとんでもなく灰色の世界に生きている。でも、僕等は生きている限り、何かを変える事が出来る。何かを変える事を望まなくなったらそれは死んでいる方がマシだろう、その粗雑なまでの勇気こそがこのアルバムのすべてだ。かなりダークなイメージを受けるかもしれないがしかし、是は「ネヴァーマインド」への地獄からの幸福な回答であるといえよう、この世紀末の日本に於いて。

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