Corrupted

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"llenandose de gusanos"

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 この作品との出会いは、運命的としか言いようがない。それは、大阪を拠点に活動するCORRUPTEDの「llenandose de gusanos」である。

99年8月6日、おやじが死んだ。ガンだった。しばらくの間、音楽を聴く気になれなかった僕は、どういう経緯でかこの作品を手に入れた。偶然にも、この作品は死者に捧げた鎮魂歌であった。1曲120分(2CD)に及ぶこの大作を、言葉で説明する紙幅も力量もない。何せ、120分に渡って展開されるのは、人の一生そのものなのだ。以下は、僕の感想文である。

まずは1枚目のCDから。ポロン、ポロンとピアノの音が鳴り続く前半は、生を受けた赤ちゃんがいる、母の子宮の中だ。母の子宮の中は、赤ちゃんにとっての全世界であり小宇宙であり、母と一体の既知の世界、コスモスである。規則正しいピアノの音や深い静寂はまさにその象徴だ。ただ、その一方で、いつ吹き出してもおかしくないほどの、極限まで押し殺された狂気を感じる。また、のぞき込むのが恐ろしくなるほどの深い悲しみもある。このことは、我々人間が、母の子宮の中にいる段階から既に潜在的に救いようのない、苦悩を抱えた存在であることを暗示しているかのようだ。

と、突然轟音が鳴り響き、静寂を打ち破るところからが中盤だ。静寂から一変、爆音が轟くその瞬間が、まさに赤ちゃんが子宮から抜け落ちこの世に産み落とされた時だろう。そして、その瞬間から人間としてのすべての苦悩が始まる。生まれた瞬間、潜在的に抱えていた狂気が一気に溢れ出し、カオスがとぐろを巻いて襲いかかって来る。目を覆いたくなるような悲痛な音の連続がこの世の地獄変を描き出し、窒息しそうになる。まさに生きるということは拷問なのだ。事実、心理学者の中には、赤ちゃんの誕生の第一声が、生を受けたことの歓喜の声ではなく、この世に産み落とされたことの苦しみの叫びであると言う人もいるほどだ。今までの子宮内のコスモスから、いきなり未知の、カオスの世界に放り出されるのだから無理もない。しかも、その世界たるや、あらゆる欲望が支配し互いに殺しあう人間の世界なのだから。この音を聴いていると、重い荷物を背負いながら、どこまでも続くらせん階段をグルグルと上っているかのような気になり、滅入ってくる。果たして、上り切った所に一体何があるというのだろうか・・・。

後半は、中盤の重激音に前半のピアノが重なってくる。ピアノは子宮の象徴だった。とするなら、この後半部分は生まれ来た所に帰る時期が迫っていることを表す。すなわち、老いと死が近付きつつあるのだ。実際、中盤のような重激音は徐々に影を潜め、最終的にはピアノの音だけが鳴り続きスーッと消えるようにして静寂を取り戻す。

さて、1枚目が「生」だとすれば、2枚目のCDはいわば死後の世界であり、空気の振動するような音が約70分流れるだけである。しかも、その音は喜びも悲しみもすべて越えた所で鳴っている。それは、死後に見る夢ともいうべきものであり、肉体なき魂の振動であり、空高く舞い上がる霊魂だ。生きることの苦しみも悲しみもすべてを経験しつくしたのちに見る世界は、何と穏やかなことか。

この音を聴く限り、CORRUPTEDはこの世に絶望している。彼らにとっては、この世は生き地獄なのだ。しかし、それでもなお、彼らはなぜかくも腹の底からの叫びを上げなければならなかったのだろうか。彼らは、絶望しながら、それでも叫ばずにはいられなかったのだ。

おやじはガンだった。その生きざまは壮絶で地獄だった。地獄で絶望的だったが、それでもおやじは最期まで立ち向かう意志を持ち続けた。生きることはつらく苦しいが、しかし、いや、だからこそ、この世に生を受けた以上、我々は精一杯力強く生きていかなければならないのだ。この作品を聴いて、おやじの死に正面から向き合えたような気がする。


reviewed by 吉田健一郎.
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