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いやいや期待に胸ふくらむべっくの新作!もちろん買っちゃいました。この、もちろん買っちゃうってちょっと危険なのよね...何だか安心のブランド・ベックって感じで。私のまわりでもベック特に好きだと言ってなかった人達まで御購入されてました。実は凄い人気なのね、ベック...それとも「とりあえず押さえておこう」的な購入なのか?と、今回は買った時からノリノリではない私なのです。うーむ、あまのじゃくなのか?だって「へぇー、アナタも買ったのぉ???」って人が続出だったんですもの。
世界中のファンが待ちわびていたろうこの1枚!既に様々な雑誌で絶賛の嵐!天才ベック!というワクワク状態で今回のアルバム聞きました。デビューアルバムでは衝撃といえるほどのベックのピロピロ節は、けれどもその中にどこか乾いた砂の味わいとでもいおうかどさっ、とした埃っぽさと重たさを感じた。イメージで言うならばアウトドアかなぁ。それは前回までのミューテーションでのトロピカルなサウンドの中でももちろん生きていたし、そんな埃まみれの乾いた赤土の上、チューニングのちょっとだけ狂ったアコギをつまびいてるベックが私の中にはいたのである。彼の外見とは裏腹のゴツゴツしたハスキーな弦の音。生の音。
でも今回はどうだ?蛍光灯がキンキンに光ってる手術室でレコーディングしたの????ってくらい人工的なツルピカ風。それもちょっと古いタイプのツルピカですね。いや、何がどうそんなに変わったのか、ちょっと表現しづらいんだけど、私はこのアルバムを最近音響をグレードアップしたステレオで聞く気になれなかった。どっちかというと、ラジカセ..それも古くからウチにあって今ではオカンの編み物の友になってしまったあの赤いラジカセ...。よく聞いたよなぁ、深夜放送を。テープの再生ボタンとかが異常に出っぱってて、押すと凄い勢いで引っ込んでバッチン!とかいうやつ。そう、なんだか軽薄短小の80年代の受験生の部屋とでも申しましょうか?夜中勉強しながら(実はしてない。机の中のくだらないモンをいじくりまわして磨いてたりする。)聞いてる深夜放送のラジオから流れてくる曲....そんな感じ。そう思いながらステレオからCDを取り出してマックに入れて再び聞いてみる。(ラジカセというものが既になかったので)おお、ぴったり!この方がぴったり来るよーマジマジ。そう、例えばこんな感じですね....。冬の夜中、分厚い瓶底メガネをかけて紺のタートルネックセーターを着た受験生のベック少年、勉強してるふりをしながらラジオのスイッチを入れる。流れてくるペコペコサウンドは深夜放送「MIDNITE VULTURES」のSexx lawsから始まって瓶底眼鏡のベック少年の夜がはじまる。母親が差し入れてくれたコーヒーを飲みながら、ゆっくりと畳みの部屋の(日本なの!)机(もちろん木で出来た!)の下に隠しておいたつくりかけのTWA機のプラモデルを取り出して嬉しそうに組み立て始める。両親は階下で寝息をたてる頃。部屋の中は暖かく、窓ガラスは少し曇ってる。飛行機の部品を丁寧にひとつずつノートの上に並べてゆく。カタン、と音がしてベックはびっくりしながらも咄嗟にプラモを隠すようにして振り返る。ネコが一声泣きながら入ってきた。ほっと息はくとネコをだきあげ膝にのせ、またもくもくとプラモ製作に没頭してゆく。ラジカセから流れる曲はHollywood freaks。TWAの完成も間近、ベックは片手に模型を持って高く持ち上げる。急降下、機体は左翼を下に旋回、そして一気に機首を上げ上昇。小声で「ショオオオ」とか「グゴゴゴ」とか言いながら。好調だ。そしていつのまにか彼はこの飛行機とともに旅に出る.....折しも曲はDebraだ。ベックと飛行機は天の川をゆっくりと渡ってゆく....。
目がさめると外は白々。いつのまにか朝。足元に落っこちたTWAは尾翼を踏んでしまった様で折れている。少し寒い部屋にネコは既にいない。ずりさがった眼鏡を持ち上げる。枕になっていたノートはよれよれ、口元のヨダレをふきながらゆっくりと立ち上がるベック....フェイドアウト。多分彼は試験に落ちるだろう。
決して嫌いじゃない。でも「ブラボー!!」と拍手して踊り狂うのともちょっと違う気がする....。なんというか、私の勝手につくりあげたベックハンセンの夜の世界の様にとっても狭くて内省的。とてもひとくくりで言えない、手放しで「サイコーっす!」とは言えないんだけどつまらないわけじゃない。デボラなんてとっても好きな曲だし。でも何かモヨモヨするものが残るアルバムなのだ。でもそのモヨモヨってなくなると寂しいモヨモヨだったりするんだよね。すきまがあいてしまう様に。結局「なんだこりゃ」とウダウダ言いながら他にはないスルメの様なベックの魅力に今回もからめとられてしまったのかしら。
reviewed by mimi
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