Offspring @ NKホール& Zepp東京 (25th, 26th and 29th May '99)
ハリケーンThe Offspring日本上陸
新作『Americana』は、日本でThe Offspringの名を浸透させるのに、もっとも貢献したアルバムとなったのではないだろうか。
一昨年来日した時は、赤坂BLITZ3日間のライブで、中日が若干すき気味といったかんじだった彼らが、今回は、NKホール2日間満員と、規模を拡大したライブを決行した。追加のZeppTokyoは溢れんばかりの人。あまりの勢いに、ドアの外まで人が押し出されるといった状態だった。待ちに待った彼らのライブに全パワーを注ぎ込んだ危険極まりない若者たち。女の子の数が増え、多少なりとも黄色い声援が上がるのを懸念していたが、心配に至らなかったようだ。根っからのパンク好きだけでなく、今までそのジャンルに足を踏み入れた事のないような人々にも、パンクロックというジャンルを広める事ができたというのは、客層を見れば一目瞭然であった。
待ち時間は20分程度だったように思える。Squeezeの音楽を聴きながら、穏やかな音で気持ちは和むはずなのに、心臓は飛び出しそうなくらい、鼓動が早くなっていく。久々の彼らとの再会に高まる緊張感と、これから自分がどうなってしまうのか、という恐怖の緊張感。スクリーンにアルバム"Americana"のジャケットが映し出される。1曲目は、タイトル曲"Americana"。案の定、人々は前に押し寄せ、右に左に、前に後ろにと、自分で立っていることができない程の人の波のとてつもない威力。曲は最新アルバムがメインだが、"Ixay on theHomber"と"Smash"からも、"self esteem""smash"や"Cool to Hate""All IWant"など、おいしい部分を披露。"Pretty Fly"のイントロで、待ってましたと、会場内は割れんばかりの”Aha! Aha!”の大合唱。Dexterの声もかき消されるほどの大音量であった。そんな陽気な合唱から一変、"Bad Habit"のベースのイントロが始まると、一瞬の静寂の中で体が凍りつく思いがした。人々は草むらから獲物をじっと見据えて狙いを定めている野獣のようであった。案の定、凄まじいライトと共に、アリーナは理性を失った猛獣で暴動状態と化した。激しくぶつかり合い、押し合い、荒波にもまれながどうにか決めの文句のところまで持ち堪えた。"You stupid dumbshit goddammotherfucker"この曲は絶対はずせない。
今回も、Intermissionがあった。Dexterたちはソファーに座り、ビールを飲み、葉巻を吸って目の前で踊る小太りでふんどし姿の男性を見て休憩。後半はホースでの水撒きといったサービスまであった。アンコールは「PAY THE MAN」「WHY DON'T YOU GET AJOB?」「FEELINGS」の3曲。全24曲を歌いあげ、4人は笑顔でステージを後にした。くたくたに疲れ、放水と汗でびしょ濡れになっても、スカっとして、爽快な気分で終わる事ができた。体にできた無数のあざが、ライブの凄まじさを物語っていた。Dexterの声は会場を一つにし、Noodlesのギターは興奮状態をより一層煽り、Gregのベース、Ronのドラムは重く体全体にのしかかってくる。派手に動き回る事はないが、圧倒的な存在感であった。
NKホール2日間と追加のZepp Tokyoすべて行ったが、曲順もMCも何もかも同じであった。前回は、少しずつ曲を変え、Nirvanaの曲までやったのに、今回は何の変化もなし。毎回、その時売れまくっているアーティストを引き合いに出す。前回はスパイスガールズ、今回はバックストリートボーイズ。Zeppでは、ブリトニー・スピアーズの名前まで出た。バックストリートボーイズの顔を付けた5体の人形がステージに立ち並び、その一体ずつをDexterがバットで打ち倒していく。
これは、「こいつらよりも売れてやる!」という意気込みなのか、それとも、アイドルが好きではないのか。私としては、前者の負けないぞ、という、いい意味での競争心だと思いたい。だが、ジャンルが違うだけに、どう考えても、嫌いだとしか思えない。そして、その後の曲が"Cool to Hate"だっただけに、どうも、ただ単に、毛嫌いしているだけなのであろう。
"Americana"では、毒の取れた、POP色の強いものに仕上がっていて、The Offspringも年と共に、棘が抜けてきたように思える。恐らく、メジャーになってからの彼らの音楽に多少なりとも不満を抱いているファンは少なくないと思う。だが、ライブで彼らを見れば、どこか違う方向に進んでいってしまうのではないかという密かな不安も消え失せる。実感し、再確認するのだ、やっぱり彼らが好きだという事を、そして、かっこよさを。メロコアのリーダー的存在でありながら新しい音楽にも挑戦し、パンクという枠の中だけに囚われることなく、自分たちのやりたい音楽を追求していく。今後も、恐らく、ファンの度肝を抜く音楽を作り出していくのであろう。でも、その根底には、きちんとThe Offspring節があり、誰に媚びるわけでもなく、ただ、彼らが楽しいと思えるものを伝えていくだけなのだ。彼らが変っていくのではなく、The Offspringはこうあるべき、という固定観念なしに、彼らは新たな音楽を生み出していくのだろう。また、次のアルバムに期待し、会えるのを心待ちにしている。
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