マーガレットズロース他 in 寿町フリーコンサート @ 横浜寿町職安前広場 (12th Jul '06)
横浜市中区寿町。大阪の釜ヶ崎、東京の山谷と並んで日本の3大ドヤ街として知られるこの場所の夏祭り、今年で28回を数えるフリーコンサートが行われた。電車を遅らせるほどの突然の豪雨はどっかに過ぎ去り、雷鳴と一緒に鳴る気持ちよい音楽と喧噪を聞きながら、フジロックなんかとは違った意味のお祭り気分を今年も存分に満喫した。
初めてこの地に足を踏み入れた時の衝撃は大きかった。赤ら顔のおじさん達がフラフラそこら中を闊歩している。見慣れない木賃宿の看板、1缶90円の自動販売機、読み仮名のふられた区民報。僕の見慣れた日本とはどっか違った風景。自分だけが取り残された感覚と、自分はある一面の日本しか見ていないという事実に驚きさえした。しかし、もっと驚いたのはコンサートの熱気だった。酔っぱらいながら演奏に会わせて踊るおじちゃんやおばちゃん達。外から来た人達も一緒になって踊り狂う。その曲を知ってるとか、お前は誰だとか、そんなことはその場では全くの蛇足だった。本当に音楽の凄さと祭の熱気というものを実感した。
この日のベストアクトはマーガレットズロースだった。今年で5年連続出場の寿町常連ということもあり地元からの熱い声援もあってのびのびと、気合の入った演奏を聞かせてくれた。ボーカルの平井正也の歌う真直ぐな歌詞がいつになく心に響いていた。それは、その場所にいた誰もが真直ぐだったからだ。何の飾りもなく楽しむ周りの人達と音楽に心がどんどん裸にされていく。どこの誰とも知らない人達と肩を組んで歌う。ステージの上も下も関係ない。特に途中でマイクを通さず客席に向って生声で歌う平井さんの姿は演出などではなく、明らかにこの日の心意気だった。歌が人間を囲んでいる色んな物を壊した瞬間だ。僕は隣の奴とハイタッチを交わす。裸と裸で。
寿町で僕が見たのは明らかな歌の勝利。世界の素晴しさを決めるのは決して偉い人達や、テレビとか雑誌とかそんなんじゃない。いまここにあるものに打ちのめされる感性だ。寿町は僕にそんなことを教えてくれる。世の中を横暴に歩き回ってる価値観なんて所詮は誰かを気持ち良くするためのものにすぎないんじゃないか。きれいとか汚いとか、高いとか安いとか、そんなことはどうでも良くなる。汗を流して体を動かして感じて、肩を組んで一緒に歌ってしまえば。それが祭の持つ無礼講の力だ。人間と人間の繋がりの希望だと僕は思う。 ドヤ街から生み出される希望に今年も心を鷲掴みされてしまった。
|
|
|