The Captains @ 渋谷nest (9th Oct '03)
- GSを知らない子供たち -
GSが終わって僕らは生まれた。GSを知らずに僕らは育った。大人になる前に物心ついたときには、堺正章はほとんどコメディアンで、ショーケンは役者で、ジュリーはソロ歌手だった。だから、GSを知らず、懐メロ同様に遠いものだった。
「最後のGS」と名乗るキャプテンズなるバンドが仙台を中心に活動していて、たまに東京に来ている。強烈なバンドだという話なんで、渋谷のNESTで観ることにした。ステージ背後には、はっぴいえんどのアルバムのジャケットのようなメンバーの似顔絵が飾られ、セットチェンジのBGMは70年代の男性歌手のものだ・・・ってよく聴いたら、ジャニーズ時代の郷ひろみじゃないか!当然GSだろうと油断していたら騙された。このイタズラ心がニクい。
そしてメンバーが登場する。もちろん、ヒラヒラのシャツを着て、どこをどう見てもGS風のコスチュームだ。ヴォーカルの傷彦(すげえ名前だ)に「傷サマ〜」と声援が飛ぶ。そしてコール&レスポンスだ。
傷「一目あったその日から」
客「一目あったその日から」
傷「恋に花咲くこともある」
客「恋に花咲くこともある」
(パンチDEデートかよ!)
傷「一目あったその日から」
客「一目あったその日から」
傷「恋に恋い焦がれて恋に泣く」
(GLAYかよ!)
傷「最後のGSバンドキャプテンズ!僕らの恋は時速30キロ!(遅いよ!)恋のゼロハン!」
とコールして"恋のゼロハン"が始まる。歌詞を全部書きたくなるほど素晴らしい。「恋のゼロハン二人乗り〜ロマンティックだぜ〜」というフレーズが脳に刻み込まれる。それにしても、エレキのビートが強烈でドライブ感がある。どれぐらいあるかっていうと、今年のフジロックの前夜祭でビートルズもどきが出てきて、初期ビートルズの曲でモッシュやダイヴが起きるほどだったというほど、ビートルズのロックンロールは激しいんだと再認識したというのと同様に、GSの曲にこんな激しさとグルーヴがあるのかと驚いてしまった。及川光博似の傷彦はスター性バツグンで、おそらく若い。ドラマーは若干20歳、他のメンバーもプロフィールを見る限り20代(ちょっと怪しいが)で、GSのジの字も知らないはずなのだ。もちろんGS以外の音楽をたくさん聴いてきたフシがある。やはり、オジさんたちがノスタルジーでやっているのではなく、GSを知らない子供たちが面白い音楽ジャンルとして鉱脈を掘り当てた感じがして、どんなにマイナー調のメロディを歌っても湿っぽくない。ギターのヒザシはメンバー紹介のときに「赤い革ジャン引き寄せ〜、無理にサンタナ聞かすよ〜」(近藤真彦の"ギンギラギンにさりげなく"ですね)と歌って"哀愁のヨーロッパ"の一節を弾いたりしていたし、偶然かもしれないけど、CANの"I Want More And..."の一節が聞こえてきたり。
この日のハイライトは新曲と紹介された"恋するマタドール"で、タイトル通り、ドラマティックな展開でスパニッシュ風味が濃厚というか一歩間違えばクドいパエリアのような、闘牛士とセニョリータの恋の物語だ。この大袈裟な感じ、そして傷彦の成り切りぶりが最高だ。傷彦が振りまくスター性と笑い、そしてドライブ感のある演奏で引き付けられる彼らはGSという入れ物にもう一度生命を吹き込んでいるのだ。
report by nob |
|
|