有事法制が最初に殺すもの
 有事法制関連3法案(条文 : 参照 あなたのとなりの有事)が今、国会で審議されています。有事法制とは、周辺事態法(99年5月成立)によって、日本はアメリカの戦争をどれもこれも支援することにしたから、もしそれで日本や在日米軍が攻撃を受けたら非常事態(有事)なので、総理大臣と自衛隊に超法規的権限を与えます。一般市民は命令を受けたらこれに協力しなさい、戦争反対だから協力しません(良心的拒否)というのは認めません、逮捕します。というのを法律として定めようということです。

 ちなみに《民間の協力義務》違反は、『6ヶ月以下の懲役、又は30万円以下の罰金』という、刑法上現行犯逮捕ができる刑罰を定めています。

 周辺事態法と、今審議中の有事3法案は、97年に改定された《日米防衛協力のための指針 》(新ガイドライン)で規定された活動を、自衛隊ができることを目的にしています。ここで見過ごしてはならないのは、ガイドライン自体は条約ではなく、アメリカ軍と自衛隊との軍部同士で交わされた合意書であって、国会の承認を必要としないもの、ということです。新ガイドラインで規定された主に米軍の後方支援と掃海等の作戦遂行という自衛隊の活動は、国際法上れっきとした戦争行為であって、日米安保条約や日本の法律で定められていることを遥かに越えてしまっています。はっきり言って憲法違反、法律違反であって、それを合法化せんがための法律・法案なのです。

 アメリカ軍幹部と自衛隊幕僚が日本の国としての政策を独自に定めたものを、政府が従認し、それを国会が承認したのです。そして今もしようとしています。本来あるべき姿とはまったく逆であり、議会制民主主義の姿とはとうてい言えるものではありません。

 その有事法制がいちばん最初に殺すもの、それは日本国憲法 第2章 第9条でしょう。そこにはこう記されています。

1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない

 日米安保条約という軍事同盟を結んでいながら、日本がこの半世紀、直接はどの戦争にも巻き込まれなかったのは、憲法9条の存在があったからに他ありません。この明快な条文は、国の戦争する権利、武力を行使するいかなる行為をも放棄する、と謳っています。これは実行力を持つれっきとした法律であり、法律の中でも基本的人権や国民主権といった市民の生活のいちばん根幹を保障する法律です。

 それを、政府が、政策としてまったく否定したのが有事法制です。戦争の放棄を政策として否定した以上、これで日本は戦争をしないという根拠はなくなります。

 自衛隊に交戦権を与えた周辺事態法によって、すでに脳死状態にされている憲法9条の、最後の生命維持装置が外されようとしています。 憲法9条が現実に抑止力を持ってていたからこそ、まだ生きている限りは「憲法9条を遵守しろ!」という訴えが力を持っていたものの、事実上死んでしまっては、後は殺人罪で起訴するだけしか方法がなくなります。

 ぼく自身、気付くのが遅すぎました。実際に同時代に起こった湾岸戦争も、ユーゴも、ソマリアも、アフガニスタンもパレスチナも、スターウォーズと同じようにテレビの向こうに映る、娯楽として消費される戦争にすぎなかった。いくら「戦争反対!」と叫んでも、結局は他人事だった。 ラディカルな憲法9条に守られた平和で、感覚がすっかり麻痺して、何によって守られていたのか気付きませんでした。今、かなり痛切な気分です。

 国民主権、基本的人権の尊重、そして平和主義を定めた憲法が、本来なら国民の権利を保障し権力を規制するはずのものが、権力の側から勝手に塗り換えられているのです。ひとつの暴力です。そして圧倒的な暴力です。これこそファシズムと言っていい。今、なにかしないと手遅れになってしまう。状況は、無関心でいるにはあまりに非観的すぎます。

 声を上げる一つの手段として、あるメーリングリストから生まれた、小泉純一郎内閣総理大臣宛てに一個人としてごく単純な、ごく簡潔な以下の宣言をメールしよう、というキャンペーンが行われています。

Subject:「小泉さんへ:有事法制について」

 私は、あなたの命令で有事に徴用されることを、一切拒否します。私は平和憲法の 理念を尊重し、それを否定する有事法制には一切反対します。

 大阪府 児玉 憲太郎

 入力は官邸のフォームからです。
http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html

 一人、二人の声なら否応なしに無視されますが、何百人、何千人の声は確実に圧力になります。だから友人や家族にもこのことを説明して、勧めてください。何百人、何千人、そしてこれ以外でも各所で上がっている何万人、何十万、何百万人の声が無視されるのなら、もはやこの国に民主主義は存在しません。

*参考:『憲法と戦争』 C・ダグラス・ラミス著 (晶文社刊)

report by ken.


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