やがて訪れる日を思い
〜やがて訪れる日を思い、覚悟を決めて今を生き〜

 THE 3PEACEの"蒼ざめた犯罪者"という曲の、歌詞のその部分が、ここ何週間か心に こびり付いている。この国が、漠然と戦争に向かって流れているなかで。

1) なぜ今、有事法案なのか

「(1994年、北朝鮮の核開発疑惑の際)アメリカ側は北朝鮮への制裁及び、おそらく戦争オプションも検討したが、日本にとっては専守防衛政策の限度を超えてしまっていたため、具体的な作戦支援任務に関与することは不可能であった。アメリカの要求する後方支援や掃海等は、1980年代の日本防衛に関する日米間の計画策定の土台となった役割や任務区分の範囲内であった。しかし、日本の領土に近接した危機にもかかわらず日本が同様の役割を果たせないことに、アメリカは衝撃を受けた」*
 2001年4月、マイケル・グリーン国家安全保障会議 日本・韓国部長

 最終的には、平壌に派遣されたカーター元大統領の特使団の交渉の結果、国連査察団の受け入れとKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)の設立という形で解決した1994年の北朝鮮危機が、97年の『日米防衛協力のための指針』の改定(新ガイドライン)、それを受けて99年に制定された周辺事態法、去年アメリカのアフガニスタンへの報復戦争の協力のために制定されたテロ対策特別法、そして今国会で提出された有事関連3法案 (武力攻撃事態における国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案 = 略称 : 平和安全法案、安全保障会議設置法改正案、自衛隊法改正案)という流れを決定づけた、直接の契機だったようだ。

 そしてそんなアメリカの圧力が日本政府に、不審船やテロ対策、海外での戦争・災害の際の現地日本人の緊急避難、有事の際の国内避難民への対応といった具体的な懸案事項を「今後の課題ということで検討を進め、2年以内に法案提出を目指す(福田官房長官)」と後回しにし、米ソ冷戦下でのソ連の数十万人規模の地上軍投入による上陸侵攻を想定した、20年も昔の防衛庁の研究を下敷きにしている有事法案の成立を急がせている。

2) その狙いは

「(有事三法案のうちの一つである)自衛隊法改正案は、自衛隊が有事の際に円滑に行動できるよう、道路法や道路交通法、河川法などの適用除外や特例措置の規定を盛り込んでいる。自衛隊の活動地域内にある民家の改造や民有地の工作物の撤去ができるとし、損失も所有者に補償するとしている。しかし中谷防衛庁長官は、『実際に戦闘が始まった地域ではこうした条文は適用されない』と説明。国際法規の順守を条件に『合理的と判断される限度で自衛隊の武力行使を認めた自衛隊法88条だけに縛られる』と説明した」*
2002年5月9日、朝日新聞

 その根拠として中谷防衛庁長官は「実際に戦闘が始まった場合、敵が日本の法律を守ることは有り得ない。したがってその対応も、日本国内の法律ではなく国際法規を条件とした自衛隊88条によるものになる」という主旨の発言を国会でしている。自衛隊法改正案について言えば、陣地を造営する際の民間・国有地の使用・改造は消防法で、戦闘中の武力行使については自衛隊法88条で、いずれも現行法で対応可能なのは与党も認めている。改正案の核心は民間インフラの制限のない使用、つまり火器弾薬を満載した自衛隊・米軍車両が、高速道路、一般道、フェリー、港湾や空港その他の民間施設等を円滑に利用できるようにするための法整備にあるのだと思う。

「朝鮮半島やその他の地域の有事あるいは日本への攻撃の際における、日本の民間インフラの必要性を考えれば、民間の協力は決定的に重要である。協力に消極的な民間機関や地方自治体に対し、必要な協力を行うよう強制できる権限を総理大臣に与えるよう、さらに立法措置が必要である」*
 2001年4月、マイケル・グリーン国家安全保障会議 日本・韓国部長

「新ガイドラインは、(1)アメリカが日本を基地として行う対外軍事行動に対する日本の後方支援と(2)その結果起こりうる反撃(対日攻撃)に対処するための軍事行動を、2本柱として成り立っている。周辺事態法は(1)に対応し、有事法制は(2)に対応する」*
 浅井基文 『ブッシュ政権と日米軍事協力の危険な動き』

3) 有事の定義

「政府の事例説明によると、自衛隊が反撃に備えて防衛出動し、部隊を展開できる『武力攻撃のおそれがある事態』については『ある国が日本に対して武力攻撃を行うとの意図を明示し、攻撃のための多数の航空機あるいは艦船を集結させていること』を例示。

 自衛隊が陣地構築や予備自衛官の招集を行える『武力攻撃が予測される事態』の認定基準としては『日本攻撃のためとみられる軍事施設の新たな構築を行っていること』『ある国が日本攻撃のための部隊の充足を高めるべく予備役の招集や軍人の非常呼集・禁足を行っているとみられること』の2点を挙げた。

 国会審議で政府は、『予測される事態』と、日本周辺有事で米軍支援を可能にした周辺事態法における『周辺事態』は併存すると説明しているが、今回まとめた事例説明は、政府が以前示した『ある国で内乱・内戦が起き国際的に波及した場合』など周辺事態の6類型との関係を明確にしておらず、論議を呼びそうだ」
 2002年5月12日、asahi.com - 政治 - 速報

《武力攻撃のおそれがある事態》よりも《武力攻撃が予測される事態》のほうがより曖昧にされている。例えば、周辺事態法を成立させアフガニスタンへの報復戦争に協力した昨年の事例にあてはめるならば、『タリバンかアルカイダがアメリカに加担する日本国内でのテロを計画している』といった情報が米軍やCIA筋からもたらされれば、内閣が《武力攻撃が予測される事態》を宣言することになる。だがその有事法が想定しているのは地上軍の侵攻であって、テロではない。

 また、自衛隊を防衛出動することができる《武力攻撃のおそれがある事態》の認定には、国会の承認が必要だが、緊急を要する場合には事後承認でも構わない、としている。

4) 平和憲法と安保の是非

「1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」
日本国憲法 第2章 戦争の放棄、第9条【戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認】

 周辺事態法及び有事法案が、この条文に合致するものではないことは明らかだろう。自衛隊が違憲か合憲かの論証はここではあえてしないが、1950年の朝鮮戦争の際にアメリカの要求に呼応する形で警察予備隊として編成されたという、戦後史の中で自衛隊の成立過程を考えたときに、自衛隊が、極東及びその周辺地域(周辺事態法ではインド洋までその周辺地域が広がったのだが)での米軍の活動をサポートする部隊という、アメリカ側の感覚はごく自然なものなのかもしれない。

 交戦権を認めた周辺事態法及び有事法案(そして、踏み込むのなら自衛隊法も)が憲法に合致するものではない、というのは憲法論争や改憲派の論拠になっているし、いずれは避けて通れない道なのだと思う。右に傾くにしろ、左に傾くにしろ。主権国家としての自立性をラディカルな憲法9条 に基づくか、日米安全保障条約という軍事同盟に基づくか、道はその2つだろう。

 前述の北朝鮮危機の際も、裏を返せば平和憲法が抑止力になった実例に違いはない。逆にそのときに有事三法案が法律として存在していたのなら? 「現実の危機」とはどちらのことを言うのだろうか。

 〜アメリカの傘の下、夢も見ました。民を見捨てたいくさの果てに〜 人として生きるのを、なぜに拒むの? 隣合わせの軍人さんよ〜
 ネーネーズ "平和の琉歌"が心に響く(沖縄は過去ではない。間違いなく今の日本の縮図だ)。ぼくは守る価値のあるものを守り抜きたい。その『守るもの』は、権力者のそれとは決定的に違うようだが。

5) 『非国民』思想

 この有事法案のなかでぼくが一番引っ掛かったのは、前述のグリーン発言にもある《民間の協力義務》について、だ。

「衆院有事法制特別委員会(瓦力委員長)の7日午後の総括質疑で、中谷元・防衛庁長官は自衛隊の防衛出動時に民間業者らに保管命令を出す対象物資について『自衛隊の行動に必要なもの』とし、『食糧、水、燃料、建設資材など』の具体例を挙げた。その上で自衛隊法改正案に盛り込んだ、保管命令違反の『6カ月以下の懲役か30万円以下の罰金』の対象について、『本人の内心には関係ない。わざと物資を隠匿したり、使用できないようにしたりする悪質な行為に基づいて考える』と明言、いわゆる《良心的拒否》も罰則対象になるとの考えを示した」

「志位和夫氏(共産)の質問に答えた。志位氏は罰則自体について、『戦争への非協力や反対が処罰の対象となる。憲法の思想・信条の自由、基本的人権を侵すことになる』と指摘。中谷長官は『国が国民の生命、財産を守る責務に基づいて行う行為。同じ日本人、日本に住んでいる人として協力いただくのは当然のことだ』と反論した」
 2002年5月9日、朝日新聞  結局はこれが、洋の東西を問わず、権力の中枢にいる政治家の偽らざる心情なのだろう。国民も武力もパワーゲームのなかの一つの駒にすぎない。人ひとりの命を見つめるよりも、『保身』の強迫観念に駆られ、国家や戦争といった巨大な枠、幻想のもつパワーに魂を売り渡した人々なのだから。二世議院のエリートのお坊っちゃんたちは、真剣に「戦争が人間を気高くする」とでも信じているのだろうか。知覧の特攻平和会館で「国のために、愛する人を残して出撃していく心境はどんなものだったんだろうねぇ」と涙を流したのは、首相その人だ。

6) やがて訪れる日を思い

 1930年代の日本は、天皇を神と、日本を天皇を統治する神の国と定め、治安維持法によって言論・思想の自由を徹底的に統制し、陸軍が勝手に『満州事変』を工作し、規制事実を作って中国を侵略し、有事を認めた国会は『挙国一致内閣』という反対勢力のない国会を作り、国家総動員法という有事法を策定し、戦争へと突き進んだ。

 今の連立政権がここ数年でしてきたことは、例えば日の丸・君が代を法制化し、歴史教科書問題を黙認し、有事法制を急ぐために次回の国会に審議は持ち越されたものの、検閲主義の個人情報保護法案を具現化した。そして新ガイドライン〜周辺事態法〜有事法案という流れ。さらには周辺事態法による自衛隊派遣に際し、海上自衛隊幕僚が独自にアメリカ軍関係者に「日本政府にイージス艦と対潜哨戒機P3Cの派遣を求めるよう圧力をかけて欲しい」と裏工作をしていたという事実まで明るみになっている。

 〜やがて訪れる日を思い、覚悟を決めて今を生き〜

 ぼくのことをあなたは誇大妄想と批難するのだろうか? 不安ばかりを煽っていると。では、あなたの覚悟は?

7) 言葉

 ブッシュ政権について、あるアメリカ人ジャーナリストとある日本人哲学者の言葉。
「"臆病な"という言葉を使うなら、上空から制裁の域を超え、殺戮しようとする人間のほうが、他人を殺めるため、自ら生命を断つのも厭わない人間より、よりふさわしいだろう」

「ブッシュはアフガニスタンやイラクに住む人々の存在を認めてすらいない。それこそファシズムだろう」

 テロと報復について、パジパイ(インド首相)の言葉。
「火は火では消せない。火を消すのには水が必要だ」

朝霧高原での友人の言葉。
「非暴力は願うべき状態なんかじゃない。現実的な手段だ」

憲法9条について、あるアメリカ人の言葉。

「この言葉は日本人のみならず、全人類への未来からの贈り物のようなものです。地上に生きるすべての人々のものです。でもそれを救うことができるのは、主権者としての日本人だけなのです」

沖縄について、あるミュージシャンの言葉。
「産業の発達が自然を壊しているし、また、政治的なしがらみもある。でも、音楽と人はとても美しい」

*参照 停戦委員会HP

report by ken.


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