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「無」になれる瞬間というのがある。美術展や写真展に行った時。あるいは小説やマンガを読んだりした時。何でもいい。他人の表現した作品に対して、集中して向き合い、何かを『感じる』ことができる瞬間。そこに引きずりこまれる瞬間。音楽で自己を表現するBRAHMANのステージを幾度も観てきたが、この日のライブは過去最高級。鳥肌止まらず。心底震えた。 AXでの2002年1発目のステージ。NEWアルバム『A FORLORN HOPE』を去年6月に発売してから7カ月。出来・不出来の激しい彼らのライブの中でも、あまりにも消化しきれてない状態でのツアー初日から、たった6カ月で、彼らはこんなにも恐ろしく、変化と発想力を身につけた、素晴らしいステージを築き上げてしまった。それは、明らかにその場に居た人達を「無」にさせてしまった時間。凄まじい気迫。殺気のような、しかし強さと生命力を帯びた熱気が4人から溢れんばかりに放出され、圧倒的緊張感の中に漲るパワーは完全に観客とは別世界へ行っていた。 しかしそれは以前のように観る側を突き放す、というのではなく、これまで以上にこの日の彼らは真正面から観客と向き合い、言葉にならない、曲にならない、自分達の『思い』、を伝えようとしていた。言うなれば、残念ながら観客の方が彼らについて行けなかった、という印象。曲が終わっても思わず拍手も反応もできないほど、皆集中して見入ってしまっていた。特にヴォーカルのTOSHI-LOWの声(歌)での表現方法の変化は、今後のBRAHMANのステージを大きく変えていくと思う。アクセントの置き場所を変えたり、静と動、力を抜いたり強めたり、リズムに乗らず語るように言葉を音に乗せたり、1つ1つの言葉を、力まず、実直に、しかし楽しそうに伝えようとしているように見えた。彼独特のアクションも、この日ほど自然に、自己の体内から湧き出るものを動くことで表現していると感じさせたことはなかった。 『PLASTIC SMILE』で見せた静かな一瞬の笑み。アンコールで「カバー」とだけポツリと言い、歌い始めたNUKEY PIKES 『LET'S GET ANOTHER PLACE』のカバー(去年発売されたトリビュートアルバム「千葉NOTORIOUS」NUKEY DISCに収録)の楽しそうな4人の演奏。そしてアルバム1曲目に収録の『FOR ONE'S LIFE』でのこの日の頂点とも呼ぶべき素晴らしいPLAY。MCなんてものはほとんどあった例のない彼らのステージで、最後にまたポツリと「ありがとう」(←こんなこと言うのも滅多にない)とTOSHI-LOWが言い、ラスト『ANSWER FOR...』で終わった時、本当に、満足気に演奏を終えた表情の4人がいた。 来月のツアーラストまで、まだまだ化けるだろうBRAHMANのライブ。こういうライブに出会えると、生きててよかった、とほんとに思う。 report by oyumi and photo by saya38 |