大晦日ライヴはしご記録 IN TOKYO

(31st Dec. '00 to 1st Jan. '01)


 大晦日。家でコタツにみかん、テレビは紅白というのもいいけど、この日はライヴハウスやクラブはカウントダウンイベントが目白押し。今まで家で過ごしてきたけど、今年はライヴハウスを巡ろう、と電車に乗ったのが夜の7時。

 まず、向かうは表参道FAB。地下鉄の駅からわりあい近くて周囲も中も小奇麗なハコである。300人くらい入るのだろうか。自分たちが入ったとき、オレンジというバンドがラスト一曲を演奏していた。スピッツやノーザンブライトが好きな人なら気に入るだろうというさわやかなギターポップで、自分もこういう音は大好き。何よりもライヴハウスの天井が高くて音のヌケが良く、こういう音は心地よく聴くことができる。

 次のバンドを待つ間はローリング・ストーンズのヒストリービデオが壁に映し出されていて、ちょうどブライアン・ジョーンズが死んだ頃のことをやっている。そして登場したのはbuG。元パーソンズの本田毅と元GDフリッカーズの本田聡兄弟組んだバンドである。本田兄弟は本職ではGITANEというバンドをやっていて、その息抜き的なプロジェクトみたいなものか。だけど、演奏の完成度の高さは息抜きでやってますというレベルではない。まずは、本田毅の華麗なギターテクニックが披露されるインスト曲。なんだかジェフ・ベックを思わせる。続いて演奏される歌モノの曲はどことなくビートルズなんかを感じさせ、メロディアスでちょっと不器用なハーモニーが味になっている。ボコーダーを使ったカーペンターズの「close to you」のカヴァーが一番良かった。

 歩いて渋谷へ。渋谷もかなりの人出である。特にON AIR EASTの周辺はクラブやライヴハウスやラブホテルが多いので人が溢れていると言ってもいい。EASTに入るとまず、GYOGUN LEND'Sが演奏を始める。お馴染みの(?)「〜だぜ、ハニー」というMCを連発して、かっこいいロックンロールを繰り出す。激しくてスピード感があるのだけど、緊張感があんまりなくて、ユルーいグルーヴが気持ちいい。フロアも盛り上がっている。

 友人と合流してセンター街にある青龍門で中華を軽く食べにいく。この日は手にスタンプを押せば、出入り自由になっている。スターバックスとかフレッシュネスバーガーとかも遅くてもやっている。

 EASTに戻ると、DJがKemuriの曲を流してフロアは大盛り上がり。白いTシャツを着た10代くらいの男の子たちが跳ねている。その次にブルーハーツの「終わらない歌」が流れるとさらにヒートアップ。この曲はおれの高校時代だよ...。ブルーハーツの曲は世代を越えて支持されてんだなぁと思った。

 そして登場したのがPOTSHOT。さっきKemuriで踊っていた人達がステージ前に殺到する。盛り上がりがすごい。KemuriとPOTSHOTはファンがカブっているもんな。どちらも明るく楽しめるスカコアだし。メンバーが楽しげに演奏している様子が伝わってくる。連れは「何もかもKemuriと比べて下手くそ」と酷評していたけど、いいじゃないか、みんなニコニコして踊っている様子を見ていると楽しくなってくるし。壁にはプロジェクターで「2002年まであと〇〇分」と映し出される。

 いよいよ新しい年が近づき、カウントダウンをステージと満員のフロアが一緒に行なう。年越しの瞬間は、あらかじめ配られたクラッカーが打ち鳴らされる。このイベントの主催者でフジロックのMCでもお馴染みのスマイリー原島さんがヴォーカルで以前スマイリーさんがやっていたバンド、アクシデンツの「I wanna be a star」が演奏される。POTSHOTが終わると、DJがミッシェルガン・エレファントの「世界の終わり」を回す。年の始めに世界の終わり。我々は一旦外へ出て休憩。中に戻るとPENPALSが演奏をしている。去年の9月11日以降の状況を踏まえたMCが印象深く、平和を祈るような新曲が興味深かった。他の曲は基本的にまっすぐなロックンロールでお客さんも盛り上がっている。

 PENPALSが終わると、「屋根裏」というライヴハウスに移動。こちらは満員というほどでもなく、アングラな雰囲気のする狭いハコである。そして、ここで観てしまったのは(本当「観てしまった」という表現がピッタリ)、ルグンバー・タスミというバンド。全員がマスクを着用(ヴォーカルが目出し帽、ベースがボンテージマスク、ギターが年老いたピエロ)して、ヴォーカルがつなぎ服を着ているのでスリップノットのカヴァーでもやるのかなと思いきや、世にも奇妙な音楽だった。ヴォーカルが朗々と歌い上げると思ったら、ヘヴィメタルへ突入、いきなりジャズっぽくスウイングしはじめる。これが曲単位の変化でなく、秒単位で次々と変わっていく。シンセサイザーのチープな音色もポイント高い。なんか命がけで馬鹿をやっている感じだ。もちろん演奏は下手ではない。後ろの方では真面目に観ている人が多かったようだが、となりの外国人なんかは笑って観ていた。まさに笑撃のバンド。唐突に曲が終わりヴォーカルが「あけましておめでとうございます」とつぶやくように言うのに爆笑。だいたい「あけましておめでとうございます」で笑いが取れるやつなんか滅多にいないぞ! こんな変なバンドは観たことない! ...ということで店員に聞くと、この日限りの特別編成のバンドでMr.バングル(フェイス・ノー・モアのマイク・パットンのプロジェクト)のカヴァーをやるバンドとのこと。そういや、このバンド名は...。

 このアホバンドにヤラれてフロアに座り込むと、DJがテクノかけたり、素人がカラオケで長渕剛の「乾杯」を歌っているのを録音しただけというシロモノをかけたりして、ますます変な感じになる。おれは年明けのこの時間にここにいていいのか?という気分になる。フロアではつきたての餅を売っていて100円できなこ餅を買う。餅を食えば、とりあえず正月だ。

 次に出てきたのはボストン・クルージング・マニア。「屋根裏」に来たのはこのバンドを観るためなのである。去年の12月17日に高円寺でこのバンドを観て衝撃を受け、また観たい!と思っていたのである。さっきの変なバンドでそれすら忘れそうになった。で、ボストン・クルージング・マニアは前回見たときと同じく、ギターとベースだけが出てきてノイズの放出から始まり、と中からメンバー全員が揃って人力トランスへ突入。最前列で観ていたので、他の楽器の音がダイレクトに聴こえてしまい、逆にヴォーカルが聴こえずらかったということがあったけれども、彼らの出す音はいきなり別の世界の連れて行くような感じで気持ちがいい。ロックの迫力とトランスの気持ちよさが上手く組み合わさっている。このバンドは要注意。

 ボストン・クルージング・マニアが終わると再びEASTへ。氣志團の登場に間に合う。常々ライヴを観てみたいバンドだった。コンプレックスの「Be my baby」で現れる。田舎の不良みたいな学ランにサングラス、応援団とパラパラが合体したような踊りに、歌謡曲みたいな音楽。フロアに大勢いる女の子は彼らと同じ振り付けで踊っている。MCもコントをやっているようでお笑い芸人の素質は十分、というよりお笑いそのものである。やおら学ランを脱ぎ捨てSMAPの「ダイナマイト」に合わせてメンバー全員が踊る。バンドが楽器を放り出して他人の曲で踊るのか、とも思うけど、踊りがなかなか上手い。終わったと思いきや、今度は同じくSMAPの「シェイク!」である。女の子たちは大喜び。おれはただ笑うしかない。最後にバンドに戻って演奏された曲がB'zの「太陽の小町エンジェル」と円広志の「夢想花」とユーロビートと歌謡曲が合体したような感じ。なんだかんだ言って乗せられてしまう。というか、はっきりと分かったのは、おれはこういう下らないバンドが大好きだ! ということである。真面目な人なら絶対このバンド嫌いなんだろうな。でも、音楽って真面目に聴く「だけ」のものじゃないんだし、それこそ日本にはあきれたぼういずとかエノケンとかクレイジーキャッツとかドリフとか、そういうPTA(戦時中なら軍部が)が眉をひそめるような人たちの輝かしい歴史があるのだから。最後に「よろしくメカドック」と言い残して去るところなんか、おれの笑いのツボを直撃。おそらく同世代なんだろうな。

 というわけで、夜の7時から朝の4時半くらいまで8バンド耐久観戦はフジロック期間中にも匹敵する運動量と精神力が要求された。最後の方は笑いばかりであったけど、まあ正月らしくて良いかな。今年もふざけて生きようと決意を新たにする。家に着いたのが5時半。初日の出はまだまだであった。


協力:マーブル、satoshi、のぽん
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