The cooper temple clause
at Brixton Academy,London(2001年11月9日)
 ベース担当のDidzとデックスのTomがそれぞれマイクを握り締め、ひざまずきながら目をつむり、口を大きく開けて歌っている。(というかこれは「叫んでいる」である。)これは私がこの日撮った写真の中でベストにこの日のライブのハイライトを感じ取れるものであり、ベストに出来のいいものだ。きっと「これ」だけ見たら、さすがロックの救世主と呼ばれているだけのことあるな、ぐらいのことを思うんだろう。だけど私はこの写真を見て痛々しい。そして同時にとても嬉しい。私がこう感じるのはこの日のライブが彼らにとって屈辱的なものであり、同時に私は彼らに真のライブバンドを感じたからだ。

 この日はEmbraceのサポートスロット。さすが初めての前座スロットでMuse、という功績は大きいらしい。めちゃくちゃに新人でありながらCharlatansやMercury Rev、Super Furry Animalsなどすでに大物バンドの前座しかできなくなっている。だがなぜEmbraceなのだろう? どんないきさつでこのサポートが決まったのかよくわからないが、とにかく音楽性に違いがあると思う。そして客がバンドに何を求めるか、という根本的な「バンドに対しての欲望」がまずまず丸っきり違うと思う。その溝がはっきり見えてしまったのがこの日のライブである。

 Museのサポートスロットの時はMuseの客をも魅了しのみこんだ。だが今回は客が丸っきり彼らを受け入れようとしない。初めから拒絶状態なのだ。空ビンを投げ、ビールの残ったプラスチックカップをステージに向かって投げつけてくる。キレたのはベースのDidz。まず空ビンがVo Benに当たりそうな勢いで飛んできた時にまずぶちきれていた。彼はわかりやすい。顔つきが一瞬で鋭くなり飛んできた方をにらみつける。そしてラストの「Panzer Attack」の時だった。飛んできたカップの中のビールがBenの顔中に飛び散った。Benはそれでもそのままの形でギターを持ちながら歌うのをやめなかったがとにかくそのあとの態度が丸っきり変わったのはデックスを操っていたDidzとTom。そこには確かに怒りが感じられた。普段はPanzer AttackではヴォーカルをとらないDidzがギターのDanのマイクを握り締め床にひざまずきながら叫びはじめたのだ。そしてTomも巻き込みそれはそれは迫力のある光景だった。

 前座バンドが前座いびりを受けるのはよくあるパターンだ。それを受けた前座バンドは大抵それを無視する。無視した状態でたんたんとライブを続け、そして終わる。それが「仕様の無いこと」で済ましてしまう。だからこそ私はこのバンドの「返答」がうれしくて、おもしろすぎてたまらなかったのだ。感情をそのまま今鳴らしている音の中に表現してしまう、自然な成り行きで全てを変えてしまうこのバンドのやっていることが。

 この日の彼らは少し疲れているように感じた。もちろんBenはタンバリンをすごいスピードで床に叩き付けたしTomはシンセを倒れそうな勢いで前後に揺らしていた。テンションだってすごかった。だが前回のGarageでのライブほどの迫力は感じられなかった。休みなしの前座スロットのツアーで体力も精神も疲れきっていたのかもしれない。それがあの「前座いびり」でライブ後半この若バンドは逆上し、怒りに燃えて「スクリーマー」と化した。「おまえらこれがわからないのか?」ぐらいのまなざしと共に。

 とにかく「普通じゃない」このバンドのライブをまた近いうちに体験したい。そして またあの熱い中を通りぬけたい。

Reported by Eri Takahashi.


無断転載を禁じます。The copyright of the text belongs to Eri Takahashi. They may not be reproduced in any form whatsoever.
To The Top.