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不思議な感じのライヴだった。音のひとつひとつはクリアなのに焦点が合ってない。トムが叫んだり、ギターが激しかったりするのに平熱な感じがする。眠くなる曲があると思えば、ハッキリと覚醒を促す曲がある。ミスがいくつかあったけど、不快な気持ちにならない。これは何だろう? 女の人を口説くとき、相手をひたすらほめる人、逆に悪口を言って相手を怒らせておいて最後に手のひら返す人、相手を笑わせたり、楽しませてサービスする人、言葉少なくインパクトを与え続ける人などいろいろいるけど、普通、ライヴというものは、この4つの口説き方のようなもの(もちろんいくつか組み合わさったりする)なのに、この日のライヴはどれかに近いのに、どれでもない。 この日、ライヴを通じて、トムはお客さんに問い掛けたのだと思う。「君の気持ちって何?君の感情って何?」と。マクドナルドのハンバーガーやスターバックスのコーヒーをおいしいと思うとき、それは広告の力や雰囲気でそう思わされているだけじゃないのか。でもそんなことばかり思っていると、すべては誰かに仕組まれているのではないか? というキリのない疑いに陥る。「僕たちはレディオヘッドっていう変な音出しているのに世界中でたくさんCDを売るバンドなんだ。どうだい? 君が僕らの音楽が良いと思うのはレコード会社の宣伝のおかげかい? それとも得体の知れない『みんな』が僕らのことを良いって言ってるからかい? 教えてくれよ君の気持ちを、いまどんなふうに感じているのかを」とトムが問い掛けているような気がした。 この日、感動的だったのは、前半にアッサリやって拍子抜けした「No Surpises」でもなく、本編に比べるとオマケみたいなアンコールで演奏された「Karma Police」でもない。本編のラスト「Idioteque」と「Everything In Its Right Place」の両方で狂ったようにお客さんを煽るトムの姿だった。「君の気持ちって何? 君の感情って何?」と全身で訴えているかのように激しく踊るトムに目頭が熱くなった。 このライヴの印象は観た人の体調や気分などによって変わってくると思う。ある人はやさしさを感じ、ある人は激しさを感じる。悲痛な叫びや陰鬱なものも聞こえるし、ユーモアもある。感情の起伏も、無感情もある。おそらく、レディオヘッドは音楽のすべてを見せてくれたのだ。そして、彼らの音楽から聴き手が受け取るのは/聴き手がどう受け取るのかは「自由」なのである。これは最強の口説きだろう。「教えてくれよ君の気持ちを、いまどんなふうに感じているのかを」と問い続けて、「君次第だよ」と答えを出すことを相手に任せているのに、相手に好きと言わせるのだから。 Reported by Nobuyuki Ikeda. 無断転載を禁じます。The copyright of the text belongs to Nobuyuki Ikeda. They may not be reproduced in any form whatsoever. To The Top. |