Radiohead at 横浜アリーナ(2001年10月3日)
 絶対におかしい。Radioheadがこんなにいいライブをするはずがない。トムヨークがあんなに機嫌がいいなんてありえない。今日のトムの顔からは一度も笑顔が絶えなかった。今日のライブは本当に凄かった。この奇跡を言葉にするには僕の語彙力では乏しすぎる。今までいろいろな所でRadioheadのライブを見てきた、泥沼の中で4年前に見た彼らのライブは今でも伝説としてファンの間で語り継がれている。フランスのアルルで去年見た1年半ぶりの復活ライブも、今年6月にVaison La Romaineというフランスの小さな村にある古代劇場で見たRadioheadはどちらも一生の思い出になるようなライブを見せてくれた。でも今日の横浜公演の素晴らしさにはかなわない。

 何と言っても今日のライブの一番の立て役者は観客だろう。メンバーが登場した時の大歓声と拍手は今までの日本ツアー3公演の歓声を足してもかなわない程だった。いやいや冗談じゃないよ、本当に。その大歓声に少し戸惑いながらも笑顔で答えるメンバー。開始早々にメンバーを含む会場全体が一つになった。みんなで同じ空気を共有し、みんなで同じ空間にいれる事を全員で喜んでいた。Radioheadのライブでここまでの一体感を味わったことがあっただろうか。

 今日のトムは本当によく笑った。そして興奮のあまりだろうか、この日のRadioheadは何度も何度も演奏をミスっていた。「In Limbo」ではジョニ−がフライングスタートをしてしまい、トムが首を左右に何度も振って演奏を止めた。でもトムは笑っている。「No Surprises」では今度はトムが歌詞を最後の部分をいきなり中盤で歌ってしまい、演奏中なのに「エエン」と笑いながら咳払い。「Talk Show Host」でもまた誰かが出だしを間違え、今度はトムは口笛でごまかす。アンコールの「Karma Police」ではジョニーのピアノが外しまくってせっかくの名バラードが何やら下手くそなバンドがRadioheadの曲をカバーしているかのよう。

 そう、Radioheadはメンバーの気分が絶好調の時にかぎって演奏中のミスを犯しやすい。そりゃそうだよ。もともと「I'm a creep」という曲で世界中に名前を知られる事になったバンドなんだから。完璧なはずがない。Radioheadのライブを見るといまだに庶民臭さというか素人臭さを感じてしまう。いくらアルバム「 OK Computer」が20世紀最高のアルバムって言われたって、ライブでのRadioheadの姿を見ると大物の風格なんて一切感じられない。そしてRadioheadが一番彼ららしくなれた時、それは僕らと同じ空間を共有してるんだと感じられた時、今日のような最高のライブを見せてくれるんだろう。

 今日のトムは本当によくしゃべった。なんども日本語で「ありがとう」といい、「次は〜」と日本語で曲の紹介をして、しまいには顔いっぱいの笑顔で「すごいですー」。今日のこのコンサートに行った人の誰もがベストトラックとして認めるであろう「Idioteque」では噂のタコダンス(なんでタコなのかはわからない)をみんなに披露し、今までにないくらいに踊り狂って、歌なんて全くなにを言ってるんだかわかりゃしない。そして僕が今までのRadioheadのライブでは見た事がない事が起こった! 本編の最後の曲「Everything In Its Right Place」で、いつもなら自分のパートが終わると適当に観客に手を振りながらステージを後にするトム。しかし今日はステージ前で子供のように飛び跳ねながら拍手をし、そしてステージを降りるて観客の方に向かうトムを始めて見た! ステージ横に座っている僕達の方に駆け寄ってきてなんとみんなと握手をしているのだ! そしてアリーナのお客さんに向かって両手を広げて手を振り、みんなの歓声に答えている。こっちが終わると今度はステージを通過して反対方向へ。こんなトムヨークは初めてみた。いや今までの事からすると絶対にありえないことだ。

 今日のコンサートが始まる前、実は僕はゲストとしてきている知人にセットリストを見せてもらっていた。2回目のアンコールではセットリストでは「The Thief」と「The Tourist」の「予定」だった。そう、実際に演奏した曲は違っていた。その2回目アンコールの1曲目はファンがライブで一番聞きたい曲の一つ、「Karma Police」! この変更は本当に嬉しかった。多分メンバーも今日のお客さんの熱意に答えたかったんだろう。そしてこの日に最後になったもう一曲直前で変更された曲は「Street Spirit」。この日本ツアーでは毎日トムがMCで「ブッシュ大統領に捧げる」と言って始めた曲があった。これはもちろんアメリカの軍事行動に異を唱えるべく、皮肉を込めたメッセージ。しかし今日は違った。「この曲はピースマーチに参加している人達に捧げる。」この日に始めて、曲を捧げる対象が皮肉ではなく平和に向けてのポジテイブな運動へと変わっていた。これからしてもどれだけメンバーにとても最高のライブだった事がよくわかるんじゃないかな。

 Radioheadのファンにとって、そしてずっとこのバンドのライブをいろんなところで見てきた僕にとって、今日のライブはまさに奇跡のような出来事だった。Radioheadのメンバーにとっても今日の横浜公演は一生忘れないような素晴らしいものだったんじゃないかな。そして明日、いよいよRadioheadの日本ツアーは最終日を迎える。明日のライブが今日以上のものになるのかどうかは明日になってみないとわからない。ただ一つ言えるのは、それは何よりも僕達観客にかかっていると言う事。僕達がRadioheadを怖いものとか偉大なバンドとは扱わないで、温かく彼らを受け入れれば必ずメンバーも僕達の気持ちに答えてくれるだろう。

--- setlist ---

1. National Anthem
2. Hunting Bears
3. Morning Bell
4. Airbag
5. Lucky
6. In Limbo
7. Knives Out
8. No Surprises
9. Dollars And Cents
10. Talk Show Host
11. Just
12. Exit Music
13. I Might Be Wrong
14. Pyramid Song
15. Paranoid Android
16. Idioteque
17. Everything In Its Right Place

--- Encore ---

18. Like The Spinning Plates
19. My Iron Lung
20. You And Whose Army
21. How To Disappear

--- Encore 2---

22. Karma Police
23. Street Spirit

Reported by Yohei Nogami.


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