|
「後100回は見たい!」と思わせてくれるほど素晴らしいライブを日本で披露してくれたAIR。というわけで秋、欧州ツアーに出たAIRをパリで再キャッチ。しかしながら、社会人の悲しい性。かなり日程がつまらないと予定がたたぬ。チケット購入はギリギリ。なのにどういうわけか(嬉しいんだけど)一階のスタンディングをゲット。二階か三階のハジッコも覚悟してたのだが。春、パリで見ようと思った時は全然とれなかったのに…パリっこ達はもうAIRに飽きてしまったのでしょうか?チケットがとれないのも困るけど…余裕でとれたりすると何故か不安になるものです。 さて、この日はあいにくの雨。会場のOLYMPIA前には15分程前に到着。ところが、会場前には人影パラパラ。傘をさした人達が少数、通行人の邪魔にならない程度に並んでいる。友人がその列のかなり前のほうに並んでいた。ラッキ! ホントは「昨日凄く並んでたから、今日は早めにいこう!」と言い出したのは私なんですけどね…遅刻してごめんなさい。それにしても、あまりにも人が少ないので、もしかして日にちを間違えたか?!と上を見るとちゃんとAIRの文字が。傘をさして雨のなか並ぶような根性はどうやら皆さん持ち合わせてないようなのです。 中に入ると、私と同じ頃から並んでいた男の子達がドリンクカウンターには目もくれず、猛ダッシュ。最前に陣取って床に座っている。私達もそこに混ざって開演を待つ。友人と床に座ったまま、しばしお喋りタイム。段々と人が増えてくる。 客電が落とされ、セバスチャン・テリエの登場。「やっぱり出た!」チケットには何も書いてなかったのでちょっと嬉しい。友人によると「彼はフランスでゲーンズブールの再来って言われてる」そうだ。キリストのようなボサボサロン毛とヒゲぼぼフェイス、袖丈が短いタキシードに赤いスパンコールの蝶ネクタイ。素足に革靴。そしてギターと、片手にワイン。確かに!ありし日のセルジュ・ゲーンズブールのようなアティテュードを思わせる…が果たしてゲーンズブールは赤いラメラメ蝶ネクタイはしたかしら?!彼の演奏はギターとテルミンのみ。震えるようなかぼぞい歌声に微妙な旋律の曲。セバスチャンの横でテルミンをあやつるのはショートカットの可愛い女の子。難しい顔をして手を微妙に震わせてテルミンを操っている。スローでダルな不思議なメロディ。他に見ないオリジナル、かつ独創的なセバスチャンの世界についつい深く引き込まれる。そして、このテルミンが、またなんと美しいことか。私はあまり楽器についての知識がないので、こんなことで感心するとアホウの様に映るかもしれない。しかし、こんな使い方もあったのか! というようなテルミン使いであった。私が今まで見たことのあるロックやポップス、テクノと言われる分野でのテルミンの使用方法といえば、もっぱらノイズや旋律から外れたところで彩りを加える役割が多かったように思う。時々はリズムもメロディも堂々とこなしているのも見かけたけど、やはり脇役的存在が多い。まあ、ギターとテルミンだけ…というスタイルもあるわけだが。セバスチャンの強烈な個性と飾り気のないテルミン嬢のバランスがまた、とてもいい。動物の鳴き声のような奇声をあげる曲ではセバスチャンの鳴き声にテルミン嬢が反応して「にゃ〜〜〜ぉ」と一声なくシーンが。可愛い。しかし、誰もが驚いたのが最終近く、幻想的な曲の途中に彼女がいきなり 「キャーーーーーーーアアアアアアアアアアアァァ!!」 と悲鳴をあげて倒れたこと。このいきなりの演出に度胆を抜かれた客は、しばし呆然。しばらくして彼女が立ち上がると観客はハッと我に帰って拍手喝采。この悲鳴のおかげで、自分も含め会場がひとつになったような気が(笑)最後の曲ではテルミンに加えて彼女がアカペラ(と言えばいいのか)でパーカッションを加えていく。両手と口がせわしなく動いているハズなのだが、あまり忙しそうでもない。余裕。セバスチャンのアイデアなのかもしれないが、ライブにおいて、テルミン嬢は大きな存在感を持っていた。観客も彼女におしみない拍手送った。最後に二人はステージ上でお辞儀をした後、スキップしながら手を上げて叩きあったり、ヘンなステップを踏んだり…と最後までヘンな二人ぶりを見せてくれた。そして、ひさしぶりに見る個性の強いキャラクターと我が道をいく音楽性に敬服。オープニングアクトでこんなに満足させてくれるなんて、ただものではない。 セットチェンジにはほとんど時間がかからずAIR登場。途端にイギリスのオアシスファンが叫ぶようなフーリガンもどきのかけ声が場内のあちこちから飛び込んでくる。 「エ゛エ゛エ゛ェーーーーゥ〜!エ゛、エ゛、エェーーーーゥ〜!」 私の横にいるお兄ちゃんなんて、ほとんどマジでフーリガンだよアンタ、状態。会場は男臭い熱気でなんだかムンムンしている。この野郎くさい観客の反応が私には想外の外。ほんとうに驚いた。日本ではオーディエンスには女の子が多かったような気がするけど…ところかわれば随分かわるものある。 今年のツアーではずっと一緒の、ジェイソン・フォークナーはこの日もステージ中央にベースを抱えて登場。ほんとに…AIRの二人は欲がないというか…普通、ツアーでのメンバーをフロントに据えたりしないよね? しかもジェイソンってば、とってもキュート。下手するとセクスィーAIRの二人がかすんじゃうヨ。日本で、まわりの乙女達が次々とジェイソンのプリティ・スマイルにKOされていくのを、嫌というほど見せつけられたのである。今日のJBは黒い眼帯を片目にして海賊ルック。マントはクリーニングにでも出してるんだろうか、黒いシャツに黒いパンツ。華奢な身体つきがよくわかる。ほっそーい。ニコラも黒いシャツに黒いパンツ、一部ファンにいまいち評判の悪かった(笑)ピンクのベルト。上は黒づくめなのに、足下はお約束の薄汚れた白いスニーカー。キメすぎでない、そこがいい。さて、やっぱり、いつもどうりに、フツーにステージに登場したんだけど、AIRの二人ともニコニコして客席を見渡したりしている。やっぱり、地元だからね、少しリラックスしたりするのかな。 『Erectric Performers』で幕開けたドリーミィワールドは、続いて官能的な『How does it make you feel』へ。この曲の独特の甘い空気感に陶酔してウットリ…。すると曲がサビにかかった途端「ガシャガシャガシャ〜〜!」ともの凄い雑音が邪魔するではないか! なんとステージと客席の間にある柵、そう私の目の前にある鉄製の柵がステージの音に共鳴してガシャガシャと鳴っているのだ。割れ鐘が酷い音で一斉に鳴ってる‥って感じでしょうか? ちょっとーコレはないだろう? オランピア〜。陶酔系ドリーミィーセクスィーダークサウンドのAIRに、この雑音はヒジョーに興醒めである。しかも、イイ! ってところで一斉にガシャガシャシャシャ〜〜と鳴り出すんである。かぁ〜〜〜〜〜っ! ハラタツ!凸(ー∧ー*) 「ああ、きっと柵達も陶酔して体を震わせてるんだわ〜」とか「柵も痺れてるのネ!」なんて自分をごまかそうとしてもダメ。ポジティブシンキングで誤魔化せない程うるさーーーい!! 試しに両手で柵を押さえてみたが手に激しいビリビリが伝わってくるだけ。長時間こんなことをしていたら腕がヨイヨイになってしまう。諦めるしかないのか…。以後、最後まで柵はガシャガシャ鳴り続け、私は陶酔のドリームワールドと現実の雑音世界とを往復しなければならなかった。まあ、最後には忘れちゃってたけどね。だからといって良いわけじゃないぞ、オランピア! 以後、この柵の問題は何とかしてほしいものである。 途中ニコラが「今夜は沢山いるね」と2階、3階席までいっぱいになった会場を見渡して言う。「来てくれてありがとう、Merci beaucoup!」 『Talisman』でメロウで美しい響きを堪能『Radio#1』で架空のラジオ局に想いを馳せた後、私のフェイヴァリットソング『Lucky&Unhappy』が続く。この曲はCDで聴くよりも、ライブで体感する方が数倍そのメッセージを享受できる様な気がするし、ライブのアレンジも美しくて、好きだ。悲し気なアコースティックのイントロから囁くような声で綴られる「Do I need? Schedule life. Vote for a free style life」「必要なのか? 決まった人生。フリースタイルの人生に賛成しよう」日本でこの曲を体感した時もグッとくるものがあったが、あの、9/11を通り過ぎた今? にこのメッセージは心に響くものがある。特に、この切ないメロディに乗せて歌われると、気持ちが揺るがされる…。 「次の曲はVIRGIN SUICIDESからの曲」するとお客は大喜び。『Bathroom girl』から、ジェイソンの弾き語りといってもいい『Playground Love』へ。ジェイソンのちょっ とGS声はいった、甘いヴォーカルは確かにこの曲にピッタリ。日本でのライブの経験から言うと、ここで観客の、特に乙女達のハートはぐっとジェイソンにつかまれてしまうのである。今日も例外ではなかった。しかしハートを鷲掴まれたのは乙女だけではなかったようで「ウオオオォォ〜〜ジェイソォーン!」と、野太い声がいきなり私の後頭部から。続いてあちこちから「うおおおー、ジェイソーン!」「うおーっ!」の男声がバンバン飛んでくるではないか。なんだぁ? ここは全寮制男子高の文化祭か?! 男声ジェイソンコールが、もう、なんだか「センパァーイ!」「兄貴ィ!」って叫んでるように聞こえたりして…。 かく言う私もジェイソンの歌、演奏にうっとり。そして、そんなフーリガンのまん中にいた女子は私だけだったからか、曲中よくジェソンと目があってしまうのである。ふふ。(これは絶対ホント! 勘違いでも妄想でもないゾ)曲が終わって、ニコラが「ジェイソン・フォークナーでした、ありがとう」と言うと更に熱い兄貴コール…ならぬ、ジェイソンコールが会場に渦巻く。そのジェイソンコールの中、JBとニコラがトコトコとステージを横断してお互いの位置を交換。さっきまでJBが囲まれていた機材の山からヒョコっと頭を出したニコラが柔らかい音色で『J'ai Dormi Sous L'eau』の優しいイントロを弾きはじめる。この曲を聴いていると目を閉じたくなってくる。音だけを感じたくなってくるのだ。 東京で彼等のライブでも、そんな場面が何度もあった。目を開くとライブの照明や演奏している人達…というのが目に飛び込んでくる。それを見るのも楽しい。だけど、こうやって目を閉じると彼等の音楽がどこかへ連れていってくれるような、そんな夢見心地にさせてくれるのだ。 「僕らはこの世界が好きじゃない。だから自分達のつくった曲の世界に逃避している」 とはMOON SAFARI当時の彼等の言葉だった。といっても彼等は実際に、嫌な現実世界から逃げ出したわけでもなく、この嫌な世界に自分達の居心地のいい夢の世界をつくりだしたのだ。しかもその場を私達にも提供してくれる。そして私達を癒したり、元気づけたり、感動をくれたりしている。これってとってもポジティブな〔逃避〕じゃないのか? 生きることを楽しむためには嫌な世界でも楽しく生きる術を見つけるべきであり、そのための努力はとことん、するべきである。いつまでもまわりの文句ばかりほざいているだけでは世界は変わらない。自分の拠り所を心の中にもっていたら…自分が一番居心地のいい幸せな場所が心の中に存在したら、虚しくお金を積んでそんな場所を築かなくても、他人を攻撃して奪わなくても、楽しく生きて行けるハズなのに…。 「次の曲はPeople In The City、フレンチアクセントでね!」とJBが言うと皆笑う。何が可笑しいのか、フランス人よ? というくらい、私の隣のお兄ちゃんはずっと笑っていた。AIRは普段曲中では自分達の声にエフェクトかけてるので、生の声を聞く機会はこんな時くらいしかないのだが、JBの声はちょっと高くて、神経質そう。ニコラはもっと…なんというかおっとりとして、しかもなんだか艶のある話し方をする。呪文のようにくり返されるMoving Wathing Working Sleeping Driving Walking Talking Smilling...私達はこの呪文をくり返して生活している。この曲を聞くと夕暮れの交通渋滞の景色が目に浮かぶ。それは騒々しいんだけどちょっぴり淋しい。彼等の曲はいつでもそういったビジュアルを頭の中に再現してくれる。Moving Wathing Working Sleeping Driving Walking Talking Smillingと繰り返していると頭の中の情景がフェイドアウトして真っ白になってくる。そこへジェイソンの轟音ベース弾きまくり! で更に頭の中の垢がすぽっと抜けていくよう。もう、ホントにこの人のベース使いといったらカッコ良すぎ! 『Sex born poison』では当然だがバッファロードーターの二人はおらず、日本語のコーラス部分は英語で、ニコラによって歌われた。しかし、やはりこの歌の白眉とも言える日本語の響きがないと少々物足りない。イントロだけでコウフンした客が絶叫している。曲紹介の時にJBが何やら「セックスって…」と言い出したが後は聞き取れず。JB、何を言おうとしたの? AIRのコンサートレヴューはどこの国の雑誌でも「Sexy」「Sexual」だのと書かれていることがほとんど。いや、ライブレヴューに限らず、である。今回のアルバムのテーマのひとつにSexというものがあるのは確かなのだが、一因に彼等の態度や物言いもあるように思う。インタビューでも、よくエッチな話をしている。でも、そこが米ニューメタル系の「女と一発やってヨ、ガハハハハハ」というような身も蓋もない下ネタに転ばず、どこか官能的で、セクシーなのだ。 「機械のつまみやボタンを触って、僕らは機械とセクシャルな関係にある」なんてね。挙げ句には「フランス人って!」と締めくくられていることも多い。いわゆる私達日本人がフランス人にもっているアムール人種なイメージは、どうやら万国共通なようだ。しかしながらAIRの曲においてはそのイメージはピッタリなのです。アムールでセクシーはAIRの専売特許なのです。 『Don't be light』は壮大なSFの様なイントロで幕開け。「軽くなるな!」という男気なメッセージとともにピコピコいう音のアンバランスがユーモアと少しの毒をもって目の前で繰り拡がられる。曲の終わりに美しい口笛の音色だけ残して、メンバーはステージを後にした。誰もいないステージで口笛だけがえんえんと流されて、最後にその口笛も消えた…。 余韻に浸っていると、波のように、後ろからドコドコドコドコ!という振動が伝わって=きた。すぐに拍手と「エ゛エ゛エ゛ェーーーーゥ〜!エ゛、エ゛、エェーーーーゥ〜!」の野太い叫びが続く。アンコールを求める男声と、ドカドカドカ!!! とお客が足を踏みならす音で会場は大騒ぎ。隣のフーリガンもどきは柵をバシバシ叩いては吠え、キングコング状態。柵に登って絶叫しながらゆするヤツも。プラスチックのコップは宙を飛び交い…いや、凄くよかったしね、私もその気持ちとってもよくわかるんだけど…なんか、皆、騒ぎ方が結構、激しくないか? 確かAIRは「僕達のファンは大人しい」って言ってなかったっけ?これではリンプのライブに来ているのとさほどかわりないような気が…でも楽しい!ので私も柵をガンガン叩いて騒いで、手がちょっと痛くなってしまった。 ほどなくしてメンバーがステージに再登場。ん?白くてちっちゃい、シンセドラムみたいなものが中央に運ばれてくる。ジェイソンとドラマー人が一人ずつその前に立つ。ニコラがオルガンの音色でイントロを弾く……これは…『Kelly watch the stars』ではないか!! ヤタッ! 騒いだ甲斐があった! やはりこの曲はノれる! 全身が訳なく弾む。演奏している方も楽しそう。ジェイソンはほとんどシンセドラムを叩いてはおらず、遊んでいる感じだけど。続いて雨音が聞こえてきた。会場を静かな雨音が包み低いベース音が雨音と絡んでいく…『Le femme d'argent』マターリマターリ。Le femme d'argentが終わるとメンバー全員ステージ前に並び、繋いだ手を上にあげてお辞儀。会場中がわれんばかりの拍手に包まれる。JBはまるでホストのようにひざまづいて投げkissをチュッチュッとあちこちに飛ばす。その仕種が何だか可愛らしい。 ああ、これで終わりなのか〜いやだ〜もっとやってくれ〜〜と、皆諦めずに騒ぎ続けたところで無情にも客電がつく。観客のあいだから「ああぁ〜」という、無念のどよめきが。あっという間に現実に引き戻される。が、私の頭の中にはまだ『J'ai Dormi Sous L'eau』の優しい音色が、『Don't be light』の口笛が残ったまま。夢の世界は心に留まったままであった。 Reported by mimi. 無断転載を禁じます。The copyright of the text belongs to MIMI. They may not be reproduced in any form whatsoever. To The Top. |