Jet Black Crayon at SUMMER SONIC 01, OSAKA
(2001年8月19日)
 トミー・ゲレロ。スパイク・リーをスマートなジャズマンに仕立てたような風貌をしたこの男。80年代のスケート・レジェンド、なのだそうだ。ぼくには近年のアートワークのほうが馴染みがある。彼がデザインしたTシャツは、同じく西海岸のスケーター・カルチャー出身のマイク・ミルズ(BEASTIE BOYSのアートワークを手掛け、BUTTER 08でGRAND ROYALからアルバムをドロップしている)やマーク・ゴンザレスとともに、友人がいるアメ村のセレクト・ショップでも買える(マークとのWネームTシャツなんか、女の子には可愛いと思う、余談やけど)。

 ぼくがそんな彼のサウンドを知るのは、ジェームズ・ラベルのMo'waxから出ていた『Little Bit Of Somethin'』というアナログ盤だった。4トラックで録音された、チープでミニマルなビートに乗った、メロウな、ゆったりとレイドバックするギター・インストゥメンタルを聞かせてくれた。

 そして、盟友ガジェットのターンテーブル&サンプラーに加えて、ベースにSwellのモント・ヴェイラー、ドラムスにIsotope 217の一員(?)ティム・デガーを迎えたのが、3ピース+チューンのJet Black Crayon。ぼくがこの日、友人の店で購入した『Loose Grooves & Bastard Blues』のジャケットがデザインされたTシャツを着て、仕事の合間を縫ってステージ2に唯一見に行ったバンドだ。

 着いたときはちょうど1曲目の途中で、スティール風の少しリゾートを感じさせるような、まったりとした和みのギターがとても柔らかく響いていて、すぐに虜になった。ありがちな、途中からだと雰囲気に馴染めない(ぼくはとくにそうだけれど)、といったことは全然なかった。前の方に集った観客は確かに多くはなかったけれど(でも予想してたよりも全然多かった)、みんなファンらしく、あちこちで「トミー」という声が聞こえる。トミー自身「あ〜、チボ・マットを蹴ってぼくらを見にきてくれてありがとう。ここにいるみんなが好きだよ、この目で見れて。アリガトゴザイマス」と早口で語っていたし、場内はプライヴェート・パーティーをしているような、フレンドリーな雰囲気に包まれていた。

 2曲目以降も、ゆったりとした、空気に溶け込む音の粒子を感じさせる、トミーのギターを中心にしたクールなインプロヴィゼイションが続く。でもだんだんとヴェイラーのベースは、クールな面持ちを保ったまま、大時化の海を往く帆船のようにダイナミックに、ファンキーにうねり、シンバルとハイハット、スネアを4本も5本もズラッと並べたティムのドラムスは、ほんとにスネアを腕のいいシェフが振るうスパイスのように効果的に使い分け、これ以上にないくらいに低くて深い、でも抑揚の効いたキックを的確に打つ。エレキパッドの音でさえ、このバンドの紡ぎ出すサウンドのなかでは、とてもオーガニックな 響きをしている。

 ガジェットの繰り出すチューンやスクラッチも、最初こそは波の音や小鳥の泣き声といった、メインディッシュに彩りを添える、でもなくてはならない付け合わせだったのが、やがて即興でスクラッチをサンプリングしたり、挑発するようにノイズのピッチを上げたり、またそれに応じて3ピースがインプロヴィゼイションを展開し、でも最後には主役を食ってしまうほどの存在感を見せる。で、次の曲ではスリリングな後味を残しながら、いつもの配役に戻っての、また落ち着いたメロウな演奏を聞かせてくれて。

 今年のステージ1ではヘヴィ・ロックやミクスチャー系のバンドが多くて、こういうレイドバックしたバンドがなかったので、すっかり嵌まってしまった。やっぱり、ゆったりと体を揺らすように踊れるのも、このうえなくいい。ぼくはそれから、セットの一番最後にメンバーを紹介したトミーが「…and I'm AKEBONO, Ha!」というのを聞いてから、Jet Black CrayonのTシャツを買いに会場の後方に足を向けた。

 もっといろんなデザインがなかったのが、残念だったけど。

Reported by 児玉憲太郎.


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