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今年のSUMMER SONICには幸運にもというか、実は仕事で行っていて、前日の金曜日、ステージ2のMercury Revのリハーサルの様子から覗くことができた。 まだ設営スタッフが慌ただしくモッシュピットの柵を運び入れるなか、インテックス大阪に設えられた、まるで体育館にあるような、なんだかとても親近感の湧くステージでは、メンバーがとてもくつろいだ雰囲気でサウンドチェックをこなしていた。G.のグラスホッパーはやっぱりサングラスとリーゼントで決めて黒いTシャツ姿。Vo.のジョナサン・ドナヒューは、自身のギターのチェックはテックに任せて、場内の真ん中に腕組みしながら立ち、ステージとPAに時々指示を出している。そんなジョナサンに漂う悠然とした空気には、正直ちょっとハッとさせられた。ナーバスで気難しそうだけど同時に人懐っこそうな彼の横顔には、なんだか人を惹き付けるものがある。 そして、アレッと思ったのは、デイヴ・フリッドマン(THE FLAMING LIPS,MOGWAI,SPARKLEHORSE,THE DELGADOS,NUMBER GIRL etc.のアルバム・プロデュースを手掛けている)がベースではなく、3台あるうちのKey.に向かっていること。やっぱりレヴ・サウンドの根幹だからなのだろうか。 と、ふだん見慣れないそんな空気を堪能していると、ジョンサンがステージに上がり4〜5曲のリハーサルが始まる。すべて翌日に発売される新作からの曲。その様子を熱っぽく見ていたのは、たぶんV2レコードの関係者と思しき2人とぼくだけで、あとは進行、PA、照明、設営のスタッフだけだから、なんかぼくら3人のためだけに演奏してくれてるような、めっちゃ贅沢な気分。1曲1曲終わるごとに響くたった3人だけの観客の拍手は、小さいけどこれ以上ないくらい温かい。あとあと冷静に考えると、ニホンでいちばん最初に新作の曲を生で聴いた人間になれたのだから、すごく幸福な夢を見たような、充足した気分でリハーサルが終了した会場を後にすることができた。 すべては夢。これが当日のライヴのキーワード。その日、南港オープンエアのHMVテントで購入した新作『All is Dream』が、とにかく素晴らしい。より流暢に紡がれる美しいメロディに、お馴染みのメロトロンやテルミンを使った、絹のように柔らかく滑らかなサイケデリアはより洗練され、トニー・ヴィスコンティの手による大胆なストリングスが加わった、よりキャッチーになったサウンド。グラスホッパーのギタープレイも奔放だし、残響音の最後の粒子が空間に消えてしまう、その瞬間まで、幸福な音楽は生き生きと届く。フリッドマンズ・マジックは健在だ。 それになんといっても歌詞そのものと、ファルセットを効かせたジョナサンの歌声が、どこかポジティヴになったような気がする。たとえ別離の歌を歌っていても、恋人と農場を歩いている景色が夢だったとしても、それでも「ぼくの夢は力強い」と歌うのだから。 幕開けは前作『Deserter's Songs』からの"The Funny Bird"。50分足らずのセットは、"Delta Sun Bottleneck Stomp","Tonite It Shows", "Goddess On A Hiway","Holes","Opus 40"といった前作からの代表曲と、新作からの"Lincoln's Eyes","The Dark Is Risinng","You're My Queen"等を中心に組まれていた。ショウとしては、期待が大きかっただけに、新しい曲の演奏がまだこなれていないといった感じ。それはストリングスやフルートの音色を、3台のKey.で演奏していたことにも顕われていたと思うなあ。ちょっと間に合わせたって感じがした。そんななかでジョナサンのヴォーカルが埋もれがちになるのは、フェスのPAということを考えると、これは仕方ないんやけど。 でもそれだけに次にツアーで来たときの期待が高まる。事実、新作以外の曲では、とても奔放な、ライヴのときに顕著な変幻自在の轟音インプロヴィゼイションをたっぷりと聴かせてくれたから。"Holes"なんかツアーを続けていくうちに、どんどん違うアレンジになっていってると思う。 そんなときのジョナサンは大袈裟な身振りで、オーケストラの指揮者のように両腕を振り上げ、観客に、メンバーに向かって自身のエクスタシーを振り蒔く。グラスホッパーとギターバトルを始めたかと思えば、サポートのキーボディストが演奏するテルミンに、渾身の力でともに手をかざし、そのままキーボードを乗っ取って演奏しだしたり。"Tonite It Shows"を歌うときの、マイクスタンドを両手で抱きながらゆっくりと前後させる腰の動きは、妙に妖しい。新作からの1分半ほどのインスト曲では、なにやらノコギリを持ち出して、横山ホットブラザーズよろしく膝の間に挟み、高尚なチェリストよろしく弦で弾き(叩くんじゃなくて、がっかりしたような、ホッとしたような(笑))、あの夢のなかで不安定に響いているような独特の「ミョ〜」音を奏でる。 結局はMercury Revの世界に引き込まれていた。ほんとうに夢のような。すべてのセットを終えて、観客のオベイションに両手を振り、お辞儀までして応えるジョナサンの表情は、とても満ち足りた、なんていうか、セックスがむっちゃ気持ちよくて、相手のことがむっちゃ好きで、もうあぁ〜!ってなって抱きしめたくなるような、そんな充足感? わかるよなあ?(笑)、とにかくこれ以上にないくらいに幸せそうな顔やったから、そんなん見たら、いやあ、こっちはもうちょっとでいけそうやったんやけど、まあいいかぁ、って気分にさせられてしまった。 そんなジョナサンがエフェクターに悪戯していったおかげで、メンバーが去ったあとも、フィードバック・ノイズがいつまでも鳴り止まない。たまりかねたテックのおじさんが出てきて、慌てて鳴っているアンプを探しだし、クソッ、こいつか!というふうにシールドを引っこ抜く。それがコミカルに飛び跳ねながら。きっとメンバーはそれを見ながら、バックステージで愉快な気分で笑っていたんだろう。 すべては夢。そして目覚める直前の記憶がいちばん鮮烈に残るもの。あとは現実味を帯びない、安らぎとか違和感とかいったあやふやな記憶だけれども、その手触りはいつまでも残っている。それが現実でふたたび遭遇したときにデジャヴになって‥‥。 どんな夢でも、夢の続きは見たい。(たとえばヘヴンで、とか) Reported by 児玉憲太郎. 無断転載を禁じます。The copyright of the text belongs to 児玉憲太郎. They may not be reproduced in any form whatsoever. To The Top. |