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8時半。開演予定から1時間経っている。会場にだるい気分が流れ始めた。その時何気なく現れてセッティングを始めたAlan、Mimi、Zakの3人。急かす拍手や口笛を誘発する派手さはない。むしろそれをさせない不思議な佇まいだ。真摯さとでも言おうか。文句を付けられない、そんな雰囲気が漂う。 新曲John Prineからセットが始まった。ギター、ベース、簡素なドラムセット。スローで抑制の利いた演奏にAlanの声が浮き彫りになり、会場に浸透して行く。一音一音の間を微妙にコントロールされた余響で繋ぐLow独特の音。それに聴き入るオーディエンス。「雑音」が無い。それこそ針の音すら聞こえそうな繊細な空間だ。曲のテンポと声の柔らかさにもかかわらず、不思議な緊張感を覚える。 抑調を保ちつつ、スロー且つ正確に演奏していく彼等。声、技術、リズム感。ミニマリズムを最大限に聴かせる素材が揃っている。そして微妙な呼吸。時折お互いに向き合っては、かろうじて聞こえる音で確認し合う。文字通り“波長”を合わせると言う感じだ。 Things We Lost in the Fire からのEmbrace。Mimiがマレットで繰り出すボーン、ボーンという深いドラムの音。ギターとベースが共鳴して、不吉にすら聞こえる。澄んだMimiの声が対照的だ。メロディーラインを支えるのは彼女のヴォーカルのみ。独白を聴く様な親密さがある。 打って変わって明るい曲調のSunflower。MimiとAlanのデュエットが曲に広がりを持たせる。2人とも太い声ではないが、通りのいい安定したヴォーカルで聴かせる。声の相性も抜群で、ハーモニーの音質までが美しい。 全般的にスローで無駄の削がれたLowの音楽。ライブでは聴く者を無防備にしてしまう何かがある。音に集中させて曲に呑み込む、と言えば良いだろうか。特にLustやWhitetailのダークな曲は抵抗し難い。抑調から徐々に強音へ、ディレイのかかったギターと重いビートが次第に迫ってくる。心構えの間も無く、気付いた時には曲の感情に圧倒されている。穏やかなライブを予想していたが、なかなかどうして。オーディエンスの“隙”を突くのが上手いバンドだ。 この日の最後は会場からのリクエスト合戦となった。「Violence!」の声に、Alanが納得したように頷く。「この曲はイースタープレゼントだよ。もうすぐ僕達のイースターアルバムが出るから。」 軽く冗談を飛ばして歌い始めたAlan。「You can't trust violence, you can't trust violence...」こんな歌を偽善の欠片も感じさせずにやってのける。シニシズムを寄せ付けもしない。脱帽ものの強さ。そんなLowの真髄を見せてくれた一晩だった。 Reported by Miwa. 無断転載を禁じます。The copyright of the text belongs to Miwa. They may not be reproduced in any form whatsoever. To The Top. |