JEFF BECK at 東京国際フォーラム(2000年12月1日)
+ 大阪厚生年金会館大ホール(2000年12月10,11日)
 ジェフ・ベックが、今年のフジロックに候補として名前が挙がりながら、結局は出演不可能となったのを覚えているだろうか? その理由が「レコーディングを抜けられない」からだと聞いた時、私は思わず「嘘つけぇ!」とつぶやいた。10年ぶりに新作「WHO ELSE!」を発表、そして来日。まさか今世紀中に新作を披露する姿を拝めるとは!と涙したのは、まだ去年のことなのだ。なのにもうレコーディング??

 ところが、先月には本当に新作「YOU HAD IT COMING」が出てしまった。嘘じゃなかったのだ。そして早くも再来日。これまで10年も表立った仕事してなかった人が、一体どうしたんだろう? 一刻も早く本物のベックを確かめたくて、まずは12月1日、初日の東京国際フォーラムへ向かった。

 7時10分過ぎ、客電が薄明かり程度にまで落ちると、BLACKBIRD の小鳥のさえずりのテープが流れる中、一行がステージに登場。白いストラトキャスターを抱え、左手にベースのランディ・ホープ・テイラー、右手にギターのジェニファー嬢を従えたベックの姿は今年も変わらない。

 ステージは新作同様 EARTHQUAKE でスタート。さっそく客席は総立ちだ。ROY'S TOYからいったん80年代の THE PUMP へ戻ると大歓声。ベックの奏でるフレーズは、80年代でも2000年でも、古い/新しいの感覚なしに走っている。ただ、聴き手の私達がいつ聴いたかで「懐かしの」1曲に変わるのだ。さらに絶妙なつなぎで BRUSH WITH THE BLUES へ。ああ、泣いてるなあ…。初日特有のぎこちなさもなく、派手なストロボの中でも、スモークの中でも、ただひたすらストラト1本で弾きまくっていくベックの姿にもう釘付け。気の利いたMCはもちろん、最低限の曲紹介もない。なのに今時「ギターだけ」で、カッコいい!と思わせる男なんて他に誰がいるだろう。

 DIRTY MIND のイントロでジェニファーの「ンンン〜」なんてハミングとギターで掛け合いしたり、ROLLIN' AND TUMBLIN' では彼女の力強いヴォーカルの横で、シンプルなリフを楽しそうに弾いていたりと、なごみの場面も見せつつ、本編ラストは、必殺ナンバー BLUE WIND だ。去年、インスト・ナンバーなのに、頭のフレーズだけを弾いてピタッと止められた時には、一瞬焦ったが、そう、返しのフレーズはみんなが「口メロ」で歌うのだ。そして、アンコール、A DAY IN THE LIFEで1時間半ほどのステージが終了。

 ベックの来日公演は、78年にスタンリー・クラークと共に来日した時から、ほぼ欠かさず見てきたものの、実は「ツアー初日」を見たのは今回が初めて。もしかすると軽くいなされて、物足りない思いをするかも…という不安もあった。しかし、まさに気合い十分。56歳のジェフ・ベックは、この世紀末になって、また新たな「活動期」に入ったのだと確信させてくれた。

 さて大阪へ戻って、12月10日、大阪厚生年金大ホール。フォーラムでは25列めでまあまあ見える程度だったが、この日は何と4列めどまんなか。それにあらかじめオープンだったステージのセットも、ここでは幕が降りている。会場のBGMに、BLACKBIRD の小鳥のさえずりが重なること数分。暗転からEARTHQUAKE のイントロと共にバッと幕が上がってスタート。おお、東京と微妙に違うオープニング!と思いきや、周りは誰も立ち上がらない。え? どうして? と焦ったが、BRUSH WITH THE BLUES の熱演に引きずられてようやく皆の腰が上がった。そして、初日同様に曲が進み、STAR CYCLE の時のこと。イントロのギターをビヨ〜ンと伸ばした後、ベックは突然弾くのを止めたかと思うと、Tシャツの上にはおっていた黒いベストをやおら脱ぎ捨てた。ベストの裾がじゃまだったのか。で、仕切り直し。この日はA DAY IN THE LIFEが本編ラストになり、アンコールが WHERE WERE YOUとBLUE WINDの2曲に変わる。

 そして、翌12月11日。同じく大阪厚生年金大ホール。この日はさらに接近の2列目。出てきたベックは、昨日まで白のTシャツの上に黒いベストだったのが、今日は下が白のタンクトップでけっこう逞しい腕を剥き出し。うん、気合い入ってるぞ。セット内容は前日と同じだったが、ステージのあちこち遊びに行ったり、動きも演奏もずっと今日の方がいい感じがした。A DAY IN THE LIFEのラストでは、ギターを床に置いて足で弾いたりして、合間に見せるお茶目な真似も、喋らない分さらに微笑ましい。

 テクノやブルース、泣きのバラード。どんな類の音楽に乗っかろうとも、そのギターはいつも彼だけが持つ魔法に満ちている。決して言葉や歌声に頼らずに、常に自分をギターで伝えようとしてきた者だけが勝ち得た磁力。この3日間、私はまたしてもその大きさの前にメロメロになってしまった。かつて3大ギタリストと仰がれた時代から30年以上経ったが、いまだ円熟や渋味とは無縁のベックを確かめられたこと`を、心から喜びたい。

SET LIST (12/1)

Opening: Blackbird(tape)

1.Earthquake
2.Roy's Toy
3.The Pump
4.Brush With The Blues
5.Blast From The East
6.Dirty Mind
7.Nadia
8.Psycho Sam
9.Rice Pudding/Jack Johnson/Savoy
10.Loose Cannon
11.Angel(Footsteps)
12.Star Cycle
13.You Never Know
14.Rollin' And Tumblin'
15.Blue Wind

-Encore-

16.A Day In The Life

Reported by 小谷育代.


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