インターネット使い方について(21st Nov. '00)

 インターネットが現実の物事を動かすことが出来るのだろうか?今までIT云々と言われたことは実際、テレビや電話やファックスでも出来るものだったりする。では、インターネットだからこそ出来ることとなんだろう?いろいろあるだろうが、ひとつの例として次の事例を挙げたい。

 先ごろ行われた衆議院東京21区補欠選挙で当選した川田悦子氏に対する怪文書を阻止したというのがその事例である。これはベストセラーになった『突破者』の著者である宮崎学氏のホームページに詳しく載っている。一応、宮崎学を知らない人に彼のことを簡単に説明しておくと、1945年に京都のヤクザの家に生まれ、高校時代にマルクス主義に開眼。上京して早稲田大学に入り学生運動の指導者の一人になる。大学中退後、雑誌記者を経て家業の解体屋を継ぐ。家業が倒産したあと、裏社会の用心棒となり、1985年に発生したグリコ・森永事件では犯人のキツネ目の男と疑われる(実際、あのイラストの顔にそっくりだし、グリコ・森永事件の時効が成立した時にはテレビ各局に出演していた)。現在は作家業のかたわら盗聴法反対のための運動などに関わっている。

 さて、10月22日におこなわれた、衆議院東京21区補欠選挙に立候補した川田悦子氏を盗聴法反対の立場から宮崎氏は支持することになる。(以下の引用は宮崎氏のHPより)

「本日は、盗聴法廃止の法案を提出する議員の集まりもあるな。このような法案を出しつづけていつかは通過させてしまおう。そのためにも、長野県知事に田中康夫、東京21区では川田えつこを当選させる必要がある。どっちも筋金入りの、口先だけではない反盗聴法の戦士というべき実績をもっておる。」

 しかし、宮崎氏は以下の懸念がある。

「さて、東京21区の方は、まだ自民候補が優位である。(中略)  確実にやってくるのは、もし「川田ブーム」とか言われるぐらいわしらの選挙運動が盛り上がったとしたなら、ゼッタイでてくるのが川田えつこさん個人に対する「謀略文書・怪文書攻撃」である、とわしは予想する。

 この種の予想の的中率はほぼ100パーセントに近い実績をわしは持っている。こないだの衆院選の新潟でこれでやられた白川勝彦(筆者注:自民党議員でありながら盗聴法に反対している。秘書の交通違反もみ消し疑惑をかけられ衆院選では落選。政局の分析力は素晴らしいのがあるので、こちらを参照)陣営の話をもう一度よみなおしておくように。」


 そして、以下のような提案をする。

「そこで、どうせ出るものなら、これも楽しもう。謀略ビラクイズをだす。

【以下の質問に答えなさい】
●問い1  怪文書は何日にまかれるか?
●問い2  怪文書は何が書かれているか?
●問い3  怪文書は何枚ぐらいでるか?
●問い4  怪文書をばらまく巨大組織団体はどこか?
●問い5  怪文書は何色か?(一番めだつ色でよろしい)
配点  一問 20点
●ズバリ賞  怪文書の、一番おおきく目立つ「見出し」はなにか?
 ズバリなら50点プラス

 以上の質問で、で80点以上とったやつは、新宿の焼き肉屋、わしの著書にもでてくるあの「明月館」で、焼き肉食い放題、ちゅうのをやる。(中略)

 時期的には現在、すでに編集を終えて、印刷段階やろな。ここ数日で印刷を終えて、輸送配送体制をつくって、いっせいにばれないようにポスティングせなあかんから、それをできるほどの組織はごく限られてくる。印刷も川田さんの出馬が急に決まったから、この前の衆院選の全国怪文書は国外印刷だったらしいが、今回は国内印刷しとるやろ。それだけのヒミツを守れて大量印刷できるところ、となると印刷局とかもってないと難しいやろな。大日本印刷ちゅうわけにはいかんで。

 とまあ、アタマをつかってみ。

 ふつう、こういう懸賞は関係者の応募を禁止しているが、今回にかぎっては、別に支持者でなくても、特に「現在、謀略用怪文書を印刷しているが、焼き肉が喰いたい」という人は特に応募してもよろしい。「特別参加大賞」である。

 また、怪文書が配られたら第一報をファクスで入れた人にも、これは特別枠で明月館に招待する。これは前記設問とは別の、「一番乗り賞」である。 ファクスの宛先は川田事務所のでええけど、宛名は「電脳突破党 謀略ビラクイズ応募」と書いておいてほしい。

 あくまで楽しむためにやるので、怪文書をばらまいている現場をみつけたからといってつかまえて、なぐりかかったりしないように。だいたい、あることないことでっちあげられてあのケーサツにぱくられるのは、キミの方や。

 ただし、デジカメ写真などをとって、非暴力的な迫力で、「インタビュー」などするぶんにはかまわないし、すぐ原稿にして当方に寄せられた場合、採用分には、これも明月館に招待しよう。 「とっつかまえた賞」や。

 では、諸君、チエしぼって考えてくれ。応募先は電脳突破党事務局に電子メールで。」


 というわけで、10月17日までに21通の謀略ビラクイズの回答が寄せられた。内容は以下のURL↓

http://toppa.org/2000-10/001015-1.html
http://toppa.org/2000-10/001016-2.html
http://toppa.org/2000-10/001017.html

 で、結局謀略ビラは撒かれず、川田氏は当選した。当選後宮崎氏はHPでこのように述べている。

「まず「謀略ビラ封じの焼き肉のおまじない」についていうとく。

 実は、「謀略ビラ」は印刷済んでだすばかりやったんや。わしのところに取材にきた某大マスコミの有能な記者が入手しておってみせてくれた。で、それを郵送とばらまき両方でやろおもてたらしいんやけど、その前の日にわがホームページが「焼き肉謀略ビラクイズ」を出してしもたんで、こらヤバイ、ということで急遽中止しよったんやて。

 票差が2000ぐらいしかなかったから、このうち半分を減らされていたら結果は違っていた可能性もある。あの諸君の応募メールの数々が断念させたんや。(中略)

 ん?焼き肉どうなった? しやから結局、怪文書クイズは怪文書がでなかったから正解者ない。恨むならせっかく作ったのに投函するのをひよった意気地なしの自民党某大幹部を恨みなさい。わしはゼニ助かったから今晩、ひとりでフグを食うことにする。」


 これぞ、インターネットの使用法ではないだろうか。あくまでも楽しもうという姿勢で謀略ビラを阻止する。あまりの見事さに舌を巻いてしまった。つまり、ネットの匿名性、速報性や多数の人が読まれることの特性を使い切った最初の例ではないだろうか。村上龍の『希望の国のエクソダス』でタスクフォースと呼ばれるチームがデジカメと機動性を武器にさまざまなスキャンダルの現場にいくという件があったけれども、それを思わせる出来事である。

 もちろん、よく考えてみると、反川田陣営は本気でビラを撒く気があったのか、本当にHPを見て撒くのをやめたのか、そもそも、謀略ビラには効果があるのか(そういう怪文書を貰って投票行動を決める人がいるのか。そんなに怪文書の内容を素直に信じてしまう人がいるのか。自分だったらむしろ入れたくなるけどな(笑))、その辺は細かく検証しなくてはいけないだろう。事情通の人のご意見を知りたい。

 まあ、宮崎氏のHPにより謀略ビラを阻止したのが事実だとして、これが上手くいったのは、宮崎学というある程度の知名度のある人のHPであったこと、選挙が全国的に注目された選挙区であり、それが補欠選挙だったこと(総選挙だと、めちゃくちゃ大変だろう)などが成功のポイントだったことは指摘しておかなければならない。

 長野県知事選、この東京21区補選、それと栃木の知事選で、ここ最近の政局の動きが一気に変わってきたわけで、その流れの一助にはなったのだ。今後もインターネットを上手く利用した政治活動が活発化するだろう。もちろん、それは良いことばかりでない。ネットを利用して台頭するファシストもいるだろうから。

   さらに言うと、ゆくゆくは政党政治は終わるのではないかと思う、終わる、というよりそれぞれが溶け出してしまうのではないか。つまり、自民党だから暮らしを保証するとか、共産党だから不正がないとか政党単位で支持・不支持を決めて投票するのではなく、各候補者のホームページを見て政策を比較してその時に一番考えが合い、実行力のある人に投票する、それが実行されなければ次は投票しない、という本来ならごく普通の投票行動が一般的になるのではないかと思う。長野の田中知事も阪神大震災の救援活動と神戸空港の反対運動が評価された面があるわけで、単なるタレント候補ではないし。

 宮崎氏のHPで次のようなことが書いてある。

「いまこそ、森内閣打倒にすべての「無党派層」、盗聴法反対のネットワーカーは立ち上がろう。政党や組織の諸君は、この時だけの「統一戦線」だ。それでいいのだ。」 「盗聴法反対という立場からは、自民党は加藤派の中に、当選した若手議員にはっきり「反対」をいうてるのも何人かおる。しやから、その意味では加藤派が政権をとった方が盗聴法廃止への動きはやりやすい。電脳突破党は、主義主張にかんけーなく、職業、思想にもかんけーなく、前科前歴にも、キョーサントーでも学会員でもウヨクでもカンケーなく盗聴法に反対し、廃止させようとするやつは全部歓迎の政党であるから、まあ、どっちかいうと加藤派びいき、みたいなところもすこしあるか。あってもええんや。

 しかし、この国の警察官僚の腐敗とそれによる盗聴、無制限な白いファシズムの進行という問題にくらべると、しょせんは自民党内の争い、コップの中の嵐であって、そのような期待はこのさい捨てておくことだ。(中略)

 さて、とはいえわしは若い人に「政治に興味をもって、参加してメチャメチャ楽しもう」ということで電脳突破党をつくったわけやから、別にヒョーロン家やるつもりない。」


 全ての政策が自分に合う、ということは実際のところほとんどありえないし、「○○党全面支持」なんていうのは自分でモノを考えることを放棄した人のやることで気持ちが悪い。それがどの党派でも同じことだ。自分を取り巻く当面の課題について考えの合う、あるときには自民党、あるときには民主党、あるときには社民党、自由党、共産党・・・でいいと思うのだ。

 だから、自分は「自民党はみんな腐っている」という意見に反対である、と書こうと思ったところで、皆さんも知っているとおりあんな事態になったんで、やっぱりみんな腐っているかもしれない。だけども、もっと心配なのはこっちの方である。

「今回の田中当選、川田当選というのが単に自民党溶解への幕開けだとしたら、これは将来的には「石原新党待望論」みたいなものにつながっていくだろう。これはコワイことだが、そうなる可能性は相当ある。わしらのタタカイの本命はむしろこっちになるかもしれんなあ。」

 この前の日曜日、代々木公園でおこなわれている野外レイヴが警察によって夜9時に中止させられた(その後、音量を絞って再開したらしい)。たまたま、その場にいたのだけど、「近隣からの苦情」という本当にあるのかどうだか分からない理由で、何の書類もなく一方的に中止を命じるという警察による「白いファシズム」によって自分たちの楽しみがどんどん奪われていく(もちろん、レイヴァーたちのマナーにも一部問題はないわけでもないが)。そうした時に音楽を聴く者にとっても、政治というものにぶつかる。やはり政治にも興味を持って、よく見ていかないといけないのではないか。まあ、あんまり学級委員みたいな言い方は好きではないのだけども。

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