SUMMER SONIC 2000(2000年8月5〜6日)
いろいろな問題のあった富士急のサマーソニックである。会場周辺の渋滞、会場の狭さ、ステージ1の日よけスペースの少なさ、ブロック分けで会場全体の盛り上がりに欠けたこと、ステージ2の入場規制などが主催者のホームページの掲示板で指摘され、既に主催者側から回答のあるものもあるけれども、おれは二つのことを感じた。
一つは、会場などのハード面は仕方のない部分もあるけれども、お客さんへの配慮とか案内というソフトの面ではそれをカヴァーすることが可能だったのに、それが上手く行ってなかったということである。例えば、富士急コニファーフォレストはこれが初めての野外ライヴ会場となったわけでなく、今までも何回も野外ライヴに使われていたところである。会場の狭さ、日よけスペースの少なさというのはある程度事前に察知出来ることである。ステージ2の富士急ハイランドシアターも然り。この施設が古くからあって(おれが子供の頃からあったもんなあ)、空調などの問題はある程度仕方ないことである。だけども、お客さんをどのように案内するか、決して快適とはいえない会場でどのように過ごしてもらうかというソフトを考えるのは主催者であり、主催者の姿勢次第でかなりカヴァー出来ることである。主催者はこのことを少々甘く考えていたのではないだろうか。つまり、お客さんにどのように過ごしてもらうのか、問題が起きたときにどのように対処するかというマニュアル作りや末端の係員までの意識の統一という点で流通業界、外食業界、ホテル業界の標準レベルよりもはるかに下であり、それが趣味であるからとかロックだからという点で今までおざなりにしてきたことがあぶり出されたといえよう。まあ、これはフジロックでも言えることで、それが97年に露呈してしまった。今回のフジロックは主催者もお客さんもフェス慣れしたし、お客さんの数も落ち着いたので問題はそれほど表面に出てこなかった。しかし、フジロックのスゴイところというか、強みは初めから「不便さを楽しもう」と言っている点でそれが受け入れられていることだろう。一方サマーソニックは快適さを追求する都市型のフェスと銘打った以上、少なくとも富士急ではあってはならない不快なことが多かったのである。来年は、本来の都市型フェスにすべく、様々な候補
地が主催者のホームページに挙げられているので期待したいと思う。
二つ目は、日本のフェスの基準としてフジロックというのが大きな力を持っているな、ということである。もちろん、特に関西ではサマーソニックしか行かなかった人も多いだろう。しかし、富士急の会場ではフジロック経験者と思しき人が多く見受けられた。例えば、サマーソニックの会場ではほとんどのエリアで禁煙であったのだけど、携帯灰皿を持ち込んで吸っている人が多数いた。係員がそのような人にも「ここは禁煙なのでタバコは吸わないで下さい」と注意して回っていたけれども、モッシュピット以外の人が密集していないところで吸うのは自己責任じゃないかという考えがフジのルールであり、サマーソニックの会場にもそのルールを持ち込むのである。このようにフジで確立されたフェスの過ごし方のルールをどんどん他のフェスにも波及させて日本のフェスの全体のレヴェルを上げるようになればいいと思う。逆にサマーソニックのルール(まあ、それ以前にサマーソニックにそういう思想があるのかという突っ込みもあるけれども)をフジに取り入れるのもアリだと思う。どちらにせよ、お互い刺激しあって日本でもフェスを取り巻く環境が良くなればいいのだ。
会場のステージ1に当たる、富士急コニファーフォレストは地面がコンクリートで日光の照り返しがあった。後方に土手があってここはフリースペースになっている。土手も斜面はコンクリートが階段状になっていて座って観ることが出来る。さらにその後ろは草むらを刈った跡があり、匂いや虫を気にしなければここに腰を落ち着けるのが一番だった。その後ろが林なんで午後になると木陰も出来たし。最終的にはここの人口密度が一番高かったかも。本当のお目当てのバンド以外はここで過ごそうとする人が多く、ブロック分けされたエリアは自分が観た限りウイーザーくらいしか全部が満杯になることはなかった。そのせいか、ABCDとあるブロックのうち、一つだけ後ろまでびっしりで盛り上がっていて、その他は後ろの方はスカスカという事態が起きていた。そのため、ドラゴンアッシュとかトライセラトップスなどはなかなかいい演奏しても会場全体の盛り上がりには至らなかった。
ステージ1から徒歩10分くらいにあるステージ2はON AIR EASTと赤坂ブリッツの中間くらいの大きさで3000人くらい収容が可能。かなり施設が老朽化している。2階席が結構広いのであるが、普段閉鎖していて、1階のフロアが満杯になったときだけ解放するという措置がとられていた。この2階席解放というのが曖昧な基準で行なわれている印象があった。あまり空調が効いていず、常に暑かった。ただ、天井が開閉式で天井が開くと熱気が上に逃げて、なかなか気持ちよかった。
食事はフジロックにも出店していたエスニック系の屋台が結構あって楽しめた。ただレストランエリアも狭いし、物販テントと同じ所にあるんで混雑が激しくステージ2への移動に手間取ったりするときもあった。あとは富士急ハイランドに入れるため開いた時間にジェットコースターなどのアトラクションを楽しんだ人もいた。冷房の効く遊園地内の土産物屋やレストランで暑さをしのいでいる人も見受けられた。
さて、個々のライヴの印象だけれど、まずはMUSE。マシュー・ベラミーの音色の多彩なギターとメロディアスでドラマティックな曲は良いのだけど、一曲終わるたびにギターを代えているので、その間がせっかくいい流れが出来ても寸断されてしまう。メドレーとか長い曲をやってじっくり聴かせたほうが絶対彼らの持ち味が生きると思う。
REEF。野生児ゲイリーを観ていると「幸せなゴリラ」という言葉が浮かぶ。ストレートな骨太のロックで、客席に降りて熱唱するゲイリー。当然客も盛り上がっている。この人写真見ると結構ルックスいいのにワイルドなイメージなんだよな。いいライヴだった。フジで観たかった。
マッド・カプセル・マーケッツ。凄い盛り上がり。最新アルバムからの曲が多く、デジタルな感覚と肉体的な迫力の融合が上手くいっている感じだった。ダイヴの嵐だし野外ライヴはこのバンドに合っているだろう。
スーパーカー。なんだかリフ主体のロックで、ナンバーガールぽくなった感じ。パワフルだし決して格好悪くないのだけど、彼らの持ち味って瑞々しいメロディにあったんじゃないのかなあ。英詞も多くなったし。それ故に「FAIRWAY」の曲のよさが目立つんだけど、はっきりいってこの曲だけ。1stの曲は一切やらないし。ミキちゃんはベースに専念してほとんど歌わないし、髪の毛長くて顔見えない。
ドラゴンアッシュ。まあまあ盛り上がっている。もう、彼らはロックではなく、完全にヒップホップ。サポートでギタリストもいるし、降谷の声もだみ声でますますジブラ化が進行。「DEEP IMPACT」ではラッパ我リヤも登場。ライヴ自体もそんなに悪くないのだけど、ブロック分けで細かくなっている会場が一体感のある盛り上がりを阻害している。それともロックからのヒップホップへの越境という彼らの試み自体がリスナー全体を巻き込むものにならないのかなあという感じがする。
人間国宝JB。ご本尊登場まで20分くらいかかる。ようやく登場すると投げ込まれたペットボトルにキレる。通訳まで呼んでもう一回やったらやめるぞ、と怒る。再開されたステージは本尊はあまり動かず、ほかの人に歌わせたり各楽器のソロを長めにしている。まるで、ビートたけしが軍団にいろいろやらせて自分はそれに突っ込むだけ、というのを思わせる。周りの人の楽器はめちゃ上手い。
フレイミング・リップス。非常に素晴らしいステージだった。映像とシンクロさせた演奏なんだけどあまりプロフェッショナルなことを感じさせず素人っぽいのだけど、そのヘナヘナした感じがむしろ好感持てた。紙吹雪、風船、人形のチープな演出も効果的だった。「RACEFOR THE PRIZE」から始まる美しい曲の数々の背後に映し出された殺されるベトナムの兵士やキノコ雲などの「アメリカの傷」や恒星の爆発、ホーキング博士などの「宇宙」、オーケストラやそれを指揮するカラヤン、人体、精子、テレタビーズ、曲とシンクロしているドラムの演奏風景、どっかの映画の引用なのか馬が人を引っ張る様子や沼地をボートで漕ぐ様子、などの映像の数々に挿入される血糊で顔を真っ赤に染めたウエインの顔のオンタイムのアップ映像。ラストの「オーバー・ザ・レインボウ」での「オズの魔法使い」の映像の引用まで全く飽きさせなかった。富士急ハイランドシアターという場末の古びたステージだからこそ、このライヴはさらに感動的だったのである。このときばかりは例外的に主催者を許せた。
スケボーキング。おれは結構好きなグループでライヴの内容も悪くなかったのだけど、朝一番のせいかお客さんの反応は今ひとつ。
AT THE DRIVE IN。いきなりアフロのボーカルが激しく変なアクションをするので笑いがこみ上げてくる。なかなかいい感じのヘヴィロックで、ちょっとダイヴでもしようかとDブロック最前列に行くと客がスカスカでモッシュは起きるものの、ダイヴが出来るほど人の密度がない。ほかのブロックは盛り上がっているのに。ボーカルはいい意味で盛り上げ役で、あのアフロヘアーも演出の一つとみた。いいバンド。フジで観たいなあ。
トライセラトップス。今回のサマソニで株を上げたのは実はこのバンドだったかも。リズム隊が骨太で、さらにレスポールやテレキャスターのギターを使い分け、それらのギターの特色を生かした和田のギタープレイが素晴らしい。だけど、相変わらず和田やベースの林に対するアイドル風歓声の方が多く、Cブロックのみ満員で盛り上がっているという残念な光景が見られた。初期の「ロケットに乗って」から最新作までヒットシングル中心のセットだった。やはり「Fever」が良くて(歌詞は思いっきり間違えていたけど)もっといろんなロックファンに聴いてもらいたいなあ。次世代の奥田民生になるのだろうな和田は。
マンサン。アイドル風歓声。まあ、日本ではポール・ドレイパーのアイドル的人気で持っているのだなあという印象を新たにする。演奏はしっかりしているし、オーディエンスの盛り上げ方も心得ているバンドで、複雑なプログレに近い曲からストレートなロックンロール、バラードなどバラエティに富んでいた。
ウイーザー。このオーディエンスの集まりようは! サマソニの大勢のオーディエンスが何を目的として来たのか瞬時に理解することが出来た。そして凄い盛り上がり。「マイ・ネーム・イズ・ジョナス」から始まったライヴは名曲の連打。だけど、新曲が見事に出来が悪く全然反応がないという残酷な光景も見られた。クオモは日本語のMCを連発。あとはドラムのキャラがアメリカン・オタクの王道のようなルックスで笑えた。
ブルートーンズ。アイドル風のルックスで全員がスーツにネクタイで決めて登場。やや線の細い、いわゆるブリットポップで、最初は眠かった。実際フロアに座り込む者も結構いた。途中「アイ・カミングホーム〜」というサビの結構ヒットした曲(スマン、おれこのバンドのことはほとんど知らないのだ)でやや持ち直し、トラッド風の曲も好感持てたが、ストーンズの「サティスファクション」そっくりの曲には失笑。ニール・ヤングのカヴァーもあんまり面白くない。
ティーンエイジ・ファンクラブ。会場は満杯である。2階席までびっしりと人が入っている。いやもう、素晴らしい歌の数々。『グランプリ』以降の曲が多かったのが古いファンからすれば物足りない気もするけど、新曲も良かったし、なんと言ってもアンコールの「コンセプト」!! やはり3人のハーモニーは完璧。美しいメロディは本当に不滅なんだなあと思った。
このようにフレイミングリップスとティーンエイジファンクラブの素晴らしいライヴがあったので自分としてはサマーソニックは是としたい。自分の周りではもうサマーソニックに行かないという声があったけれども、来年あったとしたら金銭的なこともあるが、行くかどうかはメンツ次第ということになる。何が何でも行く気にならないのはフェスそのものの魅力は左程ないからである。来年は魅力的なメンツで電車で日帰り出来るところでやって欲しいと思う。 |
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