エニイ・ギブン・サンデー(映画)
オリバー・ストーン監督の最新作はアメリカンフットボールがテーマである。この手
のスポーツ映画は試合外のこと、例えば主人公の選手の私生活やチーム内での確執、
プロスポーツを取り巻くさまざまなビジネスのことが描かれるのが常道となってい
る。もちろん、この映画でもアル・パチーノ演じる監督の苦悩や、キャメロン・ディア
ズが演じる球団オーナーがマイアミからロサンゼルスへの移転を画策するし、チーム
の外科医(これを演じるジェームス・ウッズって『ヴァージン・スーサイズ』で少女
たちの父親の役をやってた人。この激変ぶりにはちょっと驚く)が選手本人の健康を
無視して試合出場にOKを出して、若いチームの内科医と対立したり、急に頭角を現し
てきたジェイミー・フォックス演じるクオーターバックが有頂天になり、LLクールJ
演じるチームメイトと衝突する、など試合外の物語もなかなか魅力的なのだけれど
も、描くのを出来うる限り最小限にとどめ、一番の見所である試合のシーンを際立て
ようとしている。
アメリカンフットボール特有のヘルメットがぶつかり合って出るカチッカチッとい
う音や選手の息づかいやグランドに倒される鈍い衝撃音やボールが空気を裂いて飛ん
でくる音などが、ファットボーイスリム、プロペラヘッズ、ケミカルブラザース、ブ
ラックサバスの「パラノイド」やムソルグスキー作曲/ラヴェル編の『展覧会の絵』
の「キエフの大門」をBGMに凄まじい迫力で迫ってくる(ミュージックスコアは元ザ・
バンドのロビー・ロバートソンなどが担当している)。選手の動きを追うカメラも選
手の目線だったりすぐ近くだったり、プレーのひとつひとつに張り付いていてそこに
監督やコーチ、控え選手、オーナー、スポーツジャーナリスト、観客の表情が細かく
挿入されていく。この臨場感を追求した試合のシーンは、もしかしたらスピルバーグ
の『プライベートライアン』の冒頭の衝撃をもたらした戦闘シーンのアメリカンフッ
トボール版をやろうとしているのかもしれない。アメリカンフットボールのルールを
大体知っていれば十分に楽しめる(全く知らなくても迫力は伝わると思う)。
ストーリーは連戦連敗のマイアミ・シャークスのベテランクオーターバックがプ
レー中に怪我し、ジェイミー・フォックス演じるクオーターバックが急遽起用され
る。最初のうちは散々だったが、次第に華麗なプレーでチームを勝利に導く。しかし
その一方でチーム内にさまざまなひびが入っていく。しかし選手権出場がかかった試
合でなんとかチームが一つにまとまり、残り数十秒からのプレーで分かっちゃいるけ
ど逆転のタッチダウンが決まるクライマックスでは本当に興奮する。ラストでオー
ナーはチームのロサンゼルス移転を撤回し、マイアミ市民の球団としてとどまること
を宣言する。しかし、最後の最後で思わぬ裏切りがある。その裏切りは思わずニヤリ
とするような皮肉が利いているものなんだけども、そのおかげでこの男臭い体育会系
の映画の風通しが良くなり、後味が重くなりすぎないという効果をあげているのだ。 |
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