Nine Inch Nails(with A PERFECT CIRCLE )
at Gorge Amphitheatre in GEORGE, WA(2000年6月9日)
 シアトルから車で片道約三時間、途中なーんにもないツインピークスに出てくるような山を通ってはるばる来るといきなり砂漠に突入。シアトルは曇りだったし、さっきまでの山道では物凄い雨が降っていたというのに驚くほどのピーカン。真っ青な空に赤土のコントラスト、空間のスケールの大きさが「うわぁーはるばるアメリカまで来たんだなぁ〜」と実感。ふと丘陵をこえると目の前に大きな岩山と川が現れた。他に何もない。グランドキャニオンの様な絶景を堪能しながらしばらく走ると、さっきまで誰もいなかったのにいきなり車の量が増えた。こんな何にもナイところに来るのはNINファン以外いないわけで、隣を走ってる車の中には真っ黒のゴス兄ちゃんが。うう、ゾクゾクしてくる。そもそも、アメリカくんだりまで来た理由は、日本でみたNINのステージがあまりにも素晴らしくて、もう一度体験したかった、ただそれだけ。彼らの故郷で彼らがどんなステージを見せてくれるのか。日本と違うであろうオーディエンスの反応にも興味がある。

 GEORGEの会場は野外、それも谷底にあって、まるでフジのグリーンステージの様な感じ。ただ、景色が凄い!! まわりはなーーーーーーーんも、ナイ! グランドキャニオンの真ん中にポツンとフジのグリーンステージが建っている…そんな感じ。ステージの後ろがいきなり断崖絶壁になっていて、まるで空中に浮かび上がっている様。客席は谷の上の方から始まって、芝生の斜面にすわりながらステージが見える様になっている。ただ、この斜面が凄い急斜面。転んだら下まで転がっちゃいそう。日本だったらこんな危ない客席は考えられないね。(笑)

 NINファンは思っていたよりもフツー、というかゴスだらけというわけでもない。しかし、アジア系の人達、黒人などは全くと言っていいほど、いない。私達が話す日本語に振り向く人もいる。都会のヴェニューとはちょっと違うのかな。ステージ開始は8pmから。まず、前座のA PERFECT CIRCLEがはじまってNINの出番は9時半頃といったところか。しかし、日が長いので夜9時くらいまで明るいのだ。同行の志達と、さて、どこで見るのが一番いいのか(座席指定などはなく、オールスタンディング)作戦会議などをしながらまったりと時間が過ぎてゆく。真っ青な空の下、直射日光の強さとはうらはらに風は冷たい。そうこうしているうちにステ−ジ前に人が集まりだし、APC登場。TOOLでおなじみのメイナード・キーナンは何故かロングヘアのヅラ。(笑)CDジャケットでもそうだったけどAPCではヅラと決めているのだろうか。しかし、この人、なんとまぁ、声のよいお人。歌が上手い。CDと比べても遜色がない。そして、この伸びやかで美しい声がこの自然の中にあるこのヴェニューにピッタリ。私達はNINまでの体力温存の為に斜面から見ていたが、モッシュピットでははやくもダイヴァー続出。メイナードもこのヴェニューに満足げに「スピリチュアルな雰囲気でいいねー。」等とリラックスムード。不思議な美しい音色のギターとメイナードの美しい声が独特のAPCワールドを繰り広げている。聞けばギターのビリー・ハワーデルのアティテュードに惚れ込んだメイナードがボーカルを希望して頼みに言ったというからこのAPCの神秘的な雰囲気はビリー独特の世界観が色濃く現れているのもしれない。最後の曲、ジュディスの紹介をすると、どーっと沸き立つ観客。日本ではあまり知られていない存在かもしれないが本国ではかなりの人気者とみた。約45分程だろうか、あっという間にステージを去って行った彼らだが、フジに行く人は絶対、要チェックのバンド!フジの森の中にある要なステージでみても絶対いいはず。この機会を逃さないでほしい。

 さて、セットチェンジの合間に下のステージ前ゾーンに移動する。斜面の上では風が冷たかったが、ここでは人に囲まれているせいかそう寒く無い。何しろ、日本で6月といえば皆一様にTシャツでしょ?それがこちらでは長そでが手放せない。それどころか、今日の私はTシャツの上にパーカー、その又上にジャケットという重装備。それでも寒い!NINを待つ間に気付くとPRIMAL SCREAMがかかっているではないか!!意外。これって誰の趣味?トレント?しかもエクスターミネーター。これって来日の時にボビーが私達に「f**k USA!!」って叫ばせた、アレよねぇ…。しかーし、NINっこ達には馴染みが薄いようで、みんなムシ。(笑)きーちゃいないよ。オイ、そこのオネーチャン、マリファナ吸ってる暇があったら、聞いてみなさい?いいんだから…。まったく、ヘソに10コもピアスして、穴だらけになってる場合ではありません。そういえばこの曲の最後にfワード30連発するくだりがあったなぁ、もしかしてそれに合わせて出てくるのかな…等と思いながらみていると場内の雰囲気が異様な感じ。と、突然、うわっ、pinionだ!キャーーーー始まった!!!

 いてもたってもいられなくなった私は早速前にくり出す。お約束のterrible lieで一気にヒートアップ。だーやっぱ凄いわ、この迫力。皆どっと前につめかけ、その勢いで潰されそうになる。息ができない、身動きも出来ない。隣の男の子が喧嘩しはじめるし、ちょっとヤバイ雰囲気。なので一時退散ということで同行の女性と手をとりあい、少し後ろに下がる。その後、2曲めあたりでいきなり演奏がストップ。何?と思っていると、私達の横をセキュリティが女の子を担いで大声で「どけどけ!」と叫びながら通って行った。大丈夫かしら…?心配。直後、トレントが「いいか、誰か倒れているやつがいたら引き揚げてやれよ。」……この男気のある発言に胸がキュンとなってしまった。あぁ、ラブラブ。演奏再開、熱はさめないどころかますますエスカレート。拳を振り上げ歌う!!絶叫!!来日公演ではロビンに体当たりしたり、機材をことごとくぶっ壊し、破壊の限りを尽くしていたが、今日はそうでもない。まぁ、暴れているんだけど、それよりも演奏に没頭しているという感じ。sinでも飛ばしてはいたけど、丁寧に歌っていた様に思う。この時点でノリノリの私達の様子を見た後ろの男が、同行の女性を背後から持ち上げてダイブさせようとする。「キャーーーーー!!」あまりの悲鳴に男は苦笑しながら彼女を地面に戻した。さっきまでの厚着がたたってのはや汗だく。途中でジャケットもパーカーも全て脱いでしまった。

 ライブ中盤、それまで天井(といっても照明を吊るバーが無数にあるだけの青空天井)に水平に吊られていた液晶スクリーンが降りてきた。巨大なスクリーンは3枚で縦長の長方形、真ん中が少し太くて3×4.5mくらい、その両サイドは少し細い。最初真っ青な画面だったのがla merが始まると同時くらいに水面に雨の波紋が広がる映像に替わって、カメラは一旦水の中に潜る。そして上を見上げると水面の方が明るく、無数の泡がたちのぼっていく。その水の中を漂う女の人…。来日公演では液晶スクリーンではなく、前方にステージ全体がかくれるくらいの布の様なスクリーンが降りてきて、そこに映像が映し出されていたけど今回はスクリーンそのものから映像が、出て、くる。来日公演の映像は、何だろう、同じ水でも生暖かい有機的な水のイメージ(ちょっと濁ってて、海草がいっぱい生えてて、魚も沢山住んでそうな)だったと思うんだけど、今回の映像はホントにfragileそのもの、繊細。もっと冷たい、奥歯がキンキンするような水の中を漂っているみたい。とにかく全く違うものに替わっていた。そして、これは、このヴェニューでしか味わえないのであろうが、スクリーンの映像の合間から後ろの景色が見えるという凄いオマケつき。夕焼けに照らされた雲と岩山のシルエットが浮かび上がる様がホント、息をのむほど美しい。このインスゥトルメンタルの部分でぐーっとステージに引き込まれる。映像の中に自分が入っているような錯覚さえ覚える。まわりのオーディエンスもそうだったみたいで、ボーゼンとステージに見入っている。皆ピクリとも動かない。続いてthe great belowではパッと画面が替わって、中国の岩山みたいな景色。よく墨絵に出てくるよ−なヤツ、あれです。その岩山は海沿いの景色で岩肌によせては返す波。荒々しい白い波の映像で北斎の絵を思い出す。そこから水中に飛び込む人が上下逆さまに映っていて、スローモーションで深く水の中に沈んでゆく…画面は赤い花畑になり、後ろにゆっくりと歩く人陰。鳥肌がじわじわと立ってくる。まるで無数の蟻がつま先からのぼってくるみたいな感触。それが歌詞のI will take my place in the great belowの下りで一気にざざーっと頭のテッペンまで駆けのぼってきて、もう全身鳥肌人間もとい全身蟻んこ人間の様な気持ち。しかも全身をつつむ蟻の大群はそのまま凍ってしまったようで、妙な気持ち悪さが皮膚から抜けなくて困った。来日公演でも実感したけど、この映像と音が全身に入り込んでくるパートはこのライブの白眉。NINライブの真骨頂ですね、芸術です。まさに五臓六腑に染みわたりますわ。the great belowで感動して口ずさんで一緒に歌う人の姿があちこちで見れた。それも、つい、口をついて出てきてしまうような歌い方で。 THE FRAGILEのアルバムを聞き込んでいる人が多かったのが意外。これは私の偏見かもしれないけど、NINのオーディエンスの大半はキッズ達で、暴れるために来る子達がほとんどだと思っていたから。多分、はやい曲は好きだけど、そうでもないTHE FRAGILEの曲なんて知らないんじゃないかなぁ、と。それがそうでもなくてthe wretchedのサビの部分を合唱してたし。なんか嬉しかったなぁ。やっぱり自分と同じ気持ちの人が多いと嬉しいもんです。嬉しいといえばライブ中、同行の女性とずっと手をつないでいた。最初の騒ぎで危ない時にお互い手をひいたりしていたのだが、そのうち離れられなくなってしまってそのまま。でも、その手を通して相手が同じ部分で感動しているのが伝わってくるのがわかる。実はこの女性とはこの日はじめて会った。なのにまるで古い友人みたいに感じた。 私たちは感激する度にお互いハグしあっていた。彼女のおかげで感動が倍になったと思う。

 液晶が血の様な画面から炎にかわったあとスクリーンは一旦うえに上がってwish、suckで暴走。しかし、ちょっとスピードが遅く感じたのは気のせい?続くcloserではやっぱり皆大合唱。私、外国でf**kとかs***kという言葉を人前で言うのは初めてよ、しかも大声で…何回も…。このあたりでは液晶スクリーンは照明の様な役割を果たしていて、ステージ上から光りを放ったり、少し斜めになって光りの屏風の様になったりしている。トップレスの女の子が彼氏に肩車してもらって両手を振り上げている。(しかし彼は両の手でしっかりと彼女の胸を隠していました。(笑))この時まで私達はステージ中央のモッシュピット半分後ろくらいの位置でみていたのだが、やはりトレントの顏が見たい!との思いでジリジリと前につめよっていった。そしてhead like a holeでまた大合唱。拳を振り上げながら喉枯れるまで歌うワ!この時気付いたんだけど、まわりの人のまぁ、音痴なこと。(笑)同行の志も後で「外人さん、歌へた〜〜」と言っていたっけ。でも、気持ちよく歌えればそれでいいし、ね。自分の声もまわりからみれば随分とハズしていたことだろうし。トレントの顏の表情がつぶさに観察できる位置まで来たところで(実は、トレントの顏をこんなにも近くで見たのははじめてなワタシ。なんだか恥ずかしくて直視できなかったのが今でも悔やまれる…。)まわりの男達が暴れる暴れる!もみくちゃどころか、靴は脱げるは、ブラはずり落ちるは、気がつく上半身裸の猛者達に囲まれ突き飛ばされるはでもー大変。満員電車がジェットコースターになっちゃった様な感じで上下左右に揺さぶられ、コネクリまわされ、ヘトヘト。しかし、ジェントルな人も沢山いて、よろける私をホールドしてくれる人や前に出してくれる人に助けられてなんとか無事。

 この曲が終わって一端ステージを降りるNIN 。しかし、客の興奮はまだまだ続く。皆知っているのだ、hurtがなければ終わらないことを。会場はいつのまにか「nine inch nails!」コールの大合唱に。再びメンバーがステージに登場。思わず私、ミーハーな黄色い声を出してしまいました。そしてこの日一番の感動がfragileをやったこと!!この曲をナマで聴けるなんてっ!イントロがかかったところで、マ、マサカ?!全身の毛穴が広がってしまう。髪の毛が逆立ってしまいそう。気がつくと皆この曲を歌っている。私も歌う、歌わずにはいられない。涙が出そう。(映画マトリックスで、ネオがエージェントの体を突き抜けるシーンがあったけど、同じような感じで私はこの曲に体を突き抜けられた。)この頃にはとっぷり日も暮れて空には満点の星。最高のヴェニューだわ。素晴らしい演奏が終わって、出ました!starfu*kers.inc!!!この曲、なんでこんなにも気持ちを駆り立てるんだろう。高校生くらいでこんな曲に出逢ったら、日常のフラストレーションや様々なもどかしさを全て解放してしまうだろう。大人の私でもそうなんだもの。とにかく超クール!歌詞のdon't youのフレーズが長い〜!スキねぇ、ここんとこ引っ張るの。好きなだけドンチューをくりかえすトレント…。(笑)曲の終わりからアルバム通りにcompricationにつながる、好きなパート。カッコエエ!ほえーっ。そして最後に、やっぱり、この曲がないと終わらないってことでhurt。美しいのと痛いのと切ないのと色々な感情がない混ぜになって思わず涙が出てしまった。でも泣きながらも一緒に歌う。傍目からみたら相当にキモイ奴だったと思うんだけど…こーゆー時ってまわり見えてないから。 段々と頭が空っぽになっていく様な変な高揚感。そして美しいノイズを残してhurtが終わり、素晴らしいライブも終了。あっという間だったけど物凄い充実感、満足感。手が震えている。同行の女性にハグしてもらう、お互い感動のあまり言葉にならない。終了後、待ち合わせ場所に向かうと、同行の志が既に芝生の上に腰を下ろして今日のライブの素晴らしさを口々に語り合っていた。私も横に腰を下ろそうとしゃがんだがなんだかヘロヘロになってしまい、思わず横になってしまう。見下ろすとステージ前で皆、セットリストやピックの争奪戦を繰り広げていた。もう声も出ない。芝生が温かくて気持ちいい。寝転びながらしばらくボーッとしていた。

 駐車場までの道のりをダラダラと歩いていると池があってカエルがないている。ライブで方針状態になった私達にマッタ〜リとしてイイカンジ。駐車場に停めてあるどの車からもNINの曲が流れていた。今回私がこんな体験を出来たのも一緒にいってくれた方達のおかげ。シアトルから往復六時間も運転してくれたk君ありがとう。日本からいってくれたkさん、eさん、そしてライブ中に命綱のごとく繋がっていてくれたkさん、ありがとう! いいメイトが楽しみを何倍にも広げてくれたライブでした。感謝です。

Reported by MIMI.


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