Phish at 大阪BIG CAT(2000年6月15日)
 去年のフジロックで、3日連続フィールド・オブ・ヘヴンを盛り上げたバンド。私が フィッシュというバンドの名前を知ったのは、そんなフジのレポートからだった。何 とグレイトフル・デッドを追いかけるデッド・ヘッズのごとく、ずっとツアーを一緒 にまわる熱心なファンの一団もいるという。こりゃ一度はライヴ体験しなくちゃ。

 と、来日にさきがけてリリースされた新作「FARMHOUSE」を聴いてみたのだが、これ が全然かったるくて拍子抜け。1曲目のタイトル曲は、ザ・バンド。次のTWISTはサン タナみたい。レーナード・スキナードやバーナード・バトラーみたいなギターも。さ らに遡って「GHOST」になると、さらにフュージョンっぽくなってますますあたりさ わりがない。何でそんなに熱狂的なファンがいるのか、頭の中は???だった。

 しかし、当日会場入りしてみてびっくり。まず、とうてい日本とは思えないほどの外 人ファンの多さ。おまけにTAPER SECTIONと銘打って、会場の隅に堂々と録音する ファンのための場所も設けられ、機材も本格的。いつもの入口カメラ・チェックは何 なの?しかも手にスタンプを押してもらえば再入場も自由。とにかく何もかもがオー プンだ。

 開演待ちの間、まわりは先の東京、名古屋、福岡と各地のライヴの話で盛り上がって いる。かと思うと、そばの外人ファンに「まいど!is HELLOね。」と大阪弁講座が始 まったので、私も参加。「ぼちぼちでんなmeans SO-SO」わかる? 場内を風船が飛 び交い、酒や煙草を回し飲み、いっこうにステージが始まる気配がないのもお構いな しで時間が流れていく…。

 ここって不思議な空間だなあと感心しつつ、正直待ちくたびれていた私。だが、40分 過ぎてようやくスタートした音は、意外にビートが効いていた。必死に跳ねてる奴。 目を閉じて揺れている奴。みんなそれぞれに楽しんでいる。残り少ないビールの小ビ ンを片手に、私も揺れてみる。あら、これって気持ちいいやんか。よくロックのライ ヴでこれみよがしにだるいソロを聴かされてうんざりってことがあるけれど、もとも とがジャム・バンドの彼らは、何の曲をやっても延々長い。こっちもよくわからない 分、かえって「ただ音があるだけでいい」という素直な気持ちになる。有名な曲やギ ターがちょっと弾きまくりになるとファンの歓声が上がるものの、ステージからは誰 も何も煽りもしないし、クライマックスもないまま、FARMHOUSEで1部が終了。

 これで帰るという友人を見送って、ホールの外に出ると、人の熱気や煙草、ライトの 熱でむせ返るホールの暑さがずいぶんラクだ。この休憩が1時間。私はもう一度戻っ て2部の始めあたりで抜けてきたが、さらに11時半までやっていたとのこと。実際の 音ひとつ取れば、フィッシュは決して私好みのバンドではない。でも、楽しみ方も 帰るのも残るのも、全部自分で決めていけるライヴ。その空間の気持ちよさにハマっ て抜けられない人が多いのには大いに納得だ。フィッシュがフジロックで盛り上がっ た理由も、とてもよくわかった。フジがそうであるのと同じように、フィッシュは、 バンドと共に作り出す「祝祭」そのものなのだ。出来ることなら、今度は野外でもっ とのんびり見たいね。

Reported by 小谷育代.


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