Fiona Apple at 大阪厚生年金大ホール in Osaka(2000年5月12日)
少女の威力...

 幼い少女の内なるパワーを目の当たりにした。そんな印象を受けたライブだった。正味一時間強のほんの一瞬の出来事のようなわずかな時間にも関わらず、彼女の威力は私達の心臓を貫いた。あの小さな身体の何処にあれほどの威力を秘めているのだろうか。

 ステージは至って簡素な必要最小限のものしかない。開幕とともに出てきたメンバーは皆普通にリハでも始めるかのように登場。フィオナさえも普通に登場し、会場は沸いているものの、なんだか肩透かしを食らったような気分になる。しかし、彼女がピアノの演奏を始めた途端にかなりのオーラが会場を埋め尽くす繊細なピアノの音とは対照的に力強い彼女の声が会場に響く。時には何者をも恐れない強い声でがなり、時には今にも崩れ落ちそうなほどにか弱く消えてしまいそうな悲しげな歌声は全ての者を魅了する。とにかくただただ息を呑み、確実に彼女の歌声に吸い込まれていく自分を感じていた。

 3曲ほど飛ばした後に初のMC。彼女の口から出た最初の言葉は「こんばんは!元気?」・・・久しぶりに友達にでも会ったように流暢な日本語で挨拶してくれた!あまりの自然な日本語に一同大喜びと爆笑の渦! 単純によそ者がその土地に溶け込むために言葉を発するように彼女は日本語を使い、見ている側は彼女を受け入れるように拍手。来日公演の時にいつも感じる空気だ。日本語をどれだけ使うかでアーティストと観客の距離が、親近感なるものが決まるような気がする。彼女は歌声とは裏腹にMCではとても親しみ易い印象だった。

 彼女のステージを一度でも見たことがある人なら楽に想像がつくだろうけど、ステージアクションがオモシロイ。彼女のダンスはジム・モリソンがふざけているような、映画「マトリックス」のカンフーシーンを真似しているかのようなかわいらしい感じだ。驚異的な歌声とは結びつかない小さな子がはしゃいでいるようなダンスとのギャップがいい。

 他のメンバーも見ていると、フィオナとはかなり年が離れていることは一目瞭然だが、年を重ねただけの余裕がまた頼もしく感じられる。フィオナが弾き語りで歌う時はメンバーはまるで父親のような眼差しで彼女を見つめている。難しいパートを弾き終わるとメンバーの顔も満面の笑顔に戻る。とても家族的であったかい感じがした。フィオナが彼らの手の中で自由に羽を広げているのがよくわかる。きっとそこが彼女のいちばん心地良い居場所なのだろうと思わせる。

 ステージを見ていると時折、ジャズバーの光景がダブる。「普段、アメリカではこんな感じで演奏してたんだろうなぁ」と想像ができるようなグラスを片手に見たくなるステージなのだ。私が彼女達を見たのは大阪厚生年金会館というかなり広めの会場で、もちろん、彼女の歌声はその広さには決して劣らない素晴らしいものだったが、私の中ではなぜか薄暗い明かりの中でスポットライトを浴びながら歌っている彼女が浮かんできた。渡米した時には是非、そんな小さなバーで歌う彼女を見てみたいと思った。

 幼女時代にはレイプされるなど、哀しい過去を持つ彼女だが、そんなことよりも今の彼女はとっても幸せそうで、精一杯今を生きているけな気さのようなものを感じた。無垢で純粋な彼女のことを他のメンバーは気に入っているんだろうなぁと思った。

 ほんの22歳かそこらの少女が世界を相手にツアーしているなんてスゴイと単純に感動させられた。厚生年金という公共の場なだけに制限時間が決められていることが寂しく感じられたが、それでも最高のステージを見れたことに感謝している。

 今度は是非、小さなバーで彼女にもう一度会いたい。

Reported by 岩井.


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