オマージュ
 四月は休みが三日、残業も60時間を軽く超え、アリナミンVもオーヴァードースで、そろそろシャブしか効かへんちゃうか?てな状態で、通過列車待ちのホームでついフラッと線路に吸い込まれそうな気がして、怖くて、思わず一歩後ろに下がってしまう。で、それで正気を確認する。残された現実逃避としてCDとアナログを買いまくり聴きまくりし、そんなぼくのプレーヤーでなぜか一番よくかかってるのが、"Give Out But Don't Give Up"で、自分でも「なんで今さら?」と思ったりもするんやけど。なんかすごい癒されるんやね。たぶん…。当時このアルバムが出たとき、「メジャーにステップアップするために必要な駄作」と唾棄したのを覚えてる。("Rocks"なんか今聴いても覇気がないしなあ)そのへんは最近のバンドのコメントも同じような主旨で興味深いんやけど…。 仕事の帰りの電車でクタクタになって半ば意識が遠のくなかで聴いた"(I'm gonna) cry myself blind"はまるでブリットムービーの1シーンのようにハマりすぎてた。まるで自分がロバート・カーライルに思えたくらい(笑)。

 プライマルの曲のなかで好きなんが、結構"Damaged"とか"I'm loosing more than I'll evere have"やったりするし、たぶんぼくも連中と同じくらいこのてのサウンドが好きで、たぶん当時の連中に近いくらいにある意味で消耗してて、だからたぶん、自ら癒されようとしてたボビーの歌声が、よりいっそう甘く切なく優しく、心地よく響くんやろうな。いい具合でファルセットがかかってて、一度アコースティック・セットで聴いてみたい。すごい贅沢やろうな(笑)。今ようやくこのアルバムの意味がわかったような気がする。それと同時に、これまで以上に愛着も湧いてくる。"Screamadelica"が『リアル・ドラッグ・ミュージック』やったら、"Give Out But Don't Give Up"は『リアル・ソウル・ミュージック』、ぼくらが享受した、時代の渦とメンタリティを体現したソーシャルな作品と、その渦に飲み込まれ、逃れ、消えそうになりながらも鳴らしたとてもパーソナルな音楽と…。2枚で表裏一体として聴くべきもんやったんや。

 で、今ぼくらのまえに立つプライマル。思い出すのは実に6年ぶりに目撃した一昨年のフジロックinトーキョーでの驚愕のパフォーマンス。正直「こいつらバケモンか…」と唖然とした、曼陀羅のような圧倒的な宇宙感。"Higher than the sun"のクライマックスで、ベイエリアの夕闇に高々と突き上げた両拳。そしてスルリと指から抜け、弧を描いて飛んでいったクロームハーツの指輪(時価7万円)。友人が色めき立って、みんなで地面に這いつくばって探したけど…。結局、ボビーに捧げたことにしようと言って、納得した。でもそれがほんとに納得できるくらい、凄いライヴを見せてくれたから。一生に一度、見れるかどうかってくらいの。去年は仕事で行かれへんかったけど(その代わりに俊輔のワンダフル2ゴールを見たけど)今年は当然、行く。テント担いで。2月に買いそびれた黒Tシャツも買わなあかんし。なんせまた、あのキラキラ虹色に輝く汗をかかなあかんから。

 オマケに最近購入したアルバムのなから3枚、コメントを。

シックス. バイ・セヴン"The Closer You Get"

 次の音を模索して、自ら血を流すことで渾沌を切り開こうとしてるところがパンク。(オアシスの新作なんて、今の時代にやる必然性なんかまったくないもんな)マイブラ症候群なひとにはオール・ナチュラル・レモン〜よりもお勧めです。1stはかなり愛聴盤。次作で大化けする布石になったらいいのに。

ドット・アリソン "Afterglow"  ワン・ダヴ、いいバンドやったな。当時、アンビエント+ウィスパーヴォイスって流行り風の書かれ方してたけど、A・ウェザオールがプロデュースってだけで買った記憶がある。蒼々たる面子の揃ったソロも『歌ものトリップホップ』の域を脱しきれてないってのが正直なところかなあ。なんとなくスニカー・ピンプスあたりを連想した。でもケヴィンがやったM4はちゃっかりマイブラに仕上がってました。

ヨ・ラ・テンゴ  "And Then Nothing Turned Itself Inside-out"  一聴するとインパクトがないぶん、やっぱりこの人達ってヴェルヴェッツ・フォローワー やなってだけやったけど、よくよく聴き込むと、ひとつひとつの音に対するプロダクションが凝ってて絶妙で。ラストの"Night falls on Hoboken"(17分!)だけでも聴く価値ありあり。夜がだんだん更けていき、やがて西の方の空が白んでくるまで、の時の流れを音にしたような、たぶん最近のモダン・サイケのひとつの理想形。

Reported by 児玉憲太郎.


無断転載を禁じます。The copyright of the text belongs to 児玉 憲太郎. They may not be reproduced in any form whatsoever.
To The Top.