Oasis @ Kobe World Kine Hall (11th Mar. '00)

 オアシスはやはりオアシスでしかなかった。それ以上でもそれ以下でもなく、そして落ちぶれる事もなく、ただただ自分の行くべき道を切り開くのみであった。やはり「スーパーソニック」で宣言した「I need to be myself」を体現していく為にはどれだけのメンバーチェンジがあろうと、リアム・ギャラガーが新境地を開拓し、その音像を「オアシス」という有機結合体にぶち込もうと、そしてノエル・ギャラガーのソングライティングからビートルズテイストが消えつつある事実があるとしても、純粋に音を響かせ続ける事が何よりも大事であると彼等自身はわかり過ぎる程わかっていた。その結果が今回のようなやや「守り」のイメージの強いセット・リストになった事はある程度仕方の無かった事なのであろうか?「ワンダーウォール」、「ロール・ウィズ・イット」、「シェイカーメイカー」という曲群はオアシスにとって今この時点で「切実」であるトラックだとは思えない。彼らにとっての「新章」は未だにスタートしたばかりである事は百も承知である。が、しかし、「シガレッツ&アルコール」でこのライヴ一番の盛り上がりを見せるオーディエンスにも同じ事が言える。やはりオーディエンスも「オアシスらしいもの」を死ぬほど求めていて、やはりそれは純粋な意味に於いてオアシスがその光を最も眩しく輝かせていた、1st.2nd.の曲群になってしまうという事なのであろうか?しかし、やはりオアシスがこれから歩むべきリアルな道とは、やはり「フー・フィールズ・ラヴ?」であり、そして「ガス・パニック!」、「ロール・イット・オーヴァー」であると僕は信じて疑わない。世界は間違い無く変わり続け、そしてオアシスも変わって行くのだ、しかし、それはゆっくりと。その事を証明、実践したようなライヴだといえた。

   ライヴはニュー・アルバムでもオープニングを飾った「ファッキン・イン・ザ・ブッシーズ」で幕を開けた。コレがSE、というかCDそのままの音源を使っていて、個人的にはこの曲を新メンバーで音を出すところを是が否でも見たかったのだが。なぜならこの曲にはオアシスにかつて無かった、とまではいかないまでも希薄な要素であった「無差別な怒り」に満ちている。暴力的かつ硬質なギター・リフ、ファンクネス&グルーヴィなドラム、そして奇妙なサンプリング音源など、この曲を自然に演奏できる状態に現時点では無いというノエルの判断なのだろう。そう、ノエルにはわかっているのだ。まだこのメンバーでのバンド・ケミストリーはその状態をテストしている段階に過ぎない事を。どんな物事にだって準備期間はある。それは思いのままに、高くジャンプしていく為には、絶対にチカラを貯める時間が必要なのである。しかし、そのいような試運転期間においても彼等は全くの破格であった。それは、2曲目、「ゴー・レット・イット・アウト」で証明される。やはりリアム・ギャラガーの声は世界最高のファッキン・ロック・ヴォーカルである。リアム以外の誰にも歌えないその存在感、その厚み、そして情感のたっぷりこもった声はやはりオアシスそのものである事に誰一人として異論はないであろう。それほどにこの日のリアムはちょっと凄まじかった。

Don't let in, Don't let in, Don't let in

 リアムは叫ぶ。そしてノエルはギターを掻き鳴らす。明らかに新ギタリスト、ゲムの加入はノエルのギターを変えた。そう、正統派に戻ったのだ。よりノエルのギターがバンドの音像の中に溶け込んでいて、ゲムの確かな演奏力が、アンディのファンク・ベースがそれをドライヴしていく。新生オアシスの魅力がこのトラックで満載されいていた。この日のベスト・アクトは個人的にはこの「ゴー・レット・イット・アウト」であった。

 ライヴは新作からの「フー・フィールズ・ラヴ?」等の曲群を含めながら、「スタンド・バイ・ミー」、「ワンダーウォール」、「スーパーソニック」を乗せていくというオアシス史のベスト番的進行を見せる。リアムのヴォーカルはこの日は本当に絶好調で一切の隙を見せる事なくショウは進む。ノエル・ヴォーカルの「ホェア・ディッド・イット・オール・ゴー・ロング」では、オアシスの崩壊の危機、そして成功の果てにノエルとリアムの阿呆兄弟が見たモノが余さず表現されている。そう、僕等はただ「あなた」に知って欲しいだけだったのに。なぜお前は何も考えないかのように、狂ったように「生き急ぐ」 のか?そして一体何処で何が、全て間違ってしまったのか・・・? ノエルは未だその答えの実体の尻尾は掴んだものの、捕らえてはいない。この日のバンド・エモーションは間違い無く、ノエル&リアム+ジ・アザー・スリーという以前のオアシス方程式からは外れるモノであった。徐々に構築されつつある、その片鱗を覗かせつつあるこのライヴでの新生オアシス・バンド・ケミストリーに乗せて、ノエルがこの名曲で得意のハイ・トーン・ヴォーカルを駆使して伝えたかったのは、そういった本当の気持ちだったのではないか?

信じる、という事。

 人間が生きていくにつけ、それは避けては通れない。というか、それが無くては生きていけないにも関わらず空気のように、水のように、実際に目の前から消えてなくなったしまうまで、愚かな僕等はその大事さに気付かない。そして、「ガス・パニック!」でそんな感情は爆発する。ちょうど奴等はその中間点に今、存在する。

 リアムが狂ったように「Panic on the way」と連呼するこの曲のラストはあまりにも切実である。やはりオアシスの真髄はそのタイムレスな音作り(60年代的テイスト)を含みながらも、あまりにも「今」を生きる僕等にとって切実な事をしか響かせない、というとんでも無いミクスチャー感覚にある。そう、彼等が今更のように「スーパーソニック」や「ロックン・ロール・スター」をひっぱり出してくる事についても、彼等が狂っている証拠以外の何者でもありえない。間違い無くノエルは過去を清算しようとしているのだ。そう、冒頭でも述べたが、これらの初期トラックがもう既に彼等にとって切実でない事は当の本人達が誰よりも良く知っているだろう。だからこそ「あえて」、自分を傷つけてでも過去を振り切らないといけなかったのだ。今、絶対に鳴らす必要のあった「ホワットエヴァー」や「ロール・イット・オーヴァー」をオミットしてまでも。

 そう、文句無く感動的なアクトだった「リヴ・フォーエヴァー」、「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」、「ワンダーウォール」、「アクイース」でも新生オアシスのマッドさが溢れていた。特に「ワンダーウォール」、「リヴ・フォーエヴァー」ではリズム隊の実力が前回の武道館のギグジー&アランのタイム感とは比較にならないくらいに向上していた。オアシスの持ち味である、どっしりとしていて、なおかつドライヴしている不思議な感覚を最も体現していたのがこの2曲だった。アンディ・ベル、流石である。どっしりとして、威風堂々とした、過去最高ヴァージョンをこの日、この4曲に関してはオアシスは鳴らしていた。以前の他イヴではやや性急さが曲のテンポを狂わせていた事もしばしばあったのであるが、やはりゲム、アンディの人選は大正解だったという他ない。彼等二人も相当な実力のソングライターでもあるので、もっとバンドとしてのエッジが研ぎ澄まされてくると、オアシス史の中では一曲たりとも現時点では存在しない、リミックス・ヴァージョンや、ライヴでの遊び等も開発されてくるかもしれない。

 ベース、ギターの強化はもちろんの事としても、やはり特筆すべきなのはリアム・ギャラガーのそのヴォーカル以外にはないであろう。やはりオアシスの生命線はリアムのあの声に他ならない。どこからどう聴いても切なくて、しかも決意に溢れていて、且つ野蛮な活力が滾っているどうしようもなくエモーショナルなものなのだ。

 しかし、本当に疑問である。何故、「ヘルター・スケルター」、「ロックンロール・スター」でアンコールを締めないといけないのであろうか?それはあからさまに60年代への回帰とマスコミに叩かれた事に対する当てつけであるのか、それとも現実にロックンロール・スターになってしまった今この現状で歌う事に何らかの意義を感じ取ったからなのか?それじゃあどう考えたって、僕等はごまかせないよ。やはり今リアムが前述したようなどうしようもないエモーショナル・ヴォーカルで叫ばないといけないのは、

roll it over, livin' me here

 だろう。絶対に。オアシスは永遠に「ココに居る」。それは前作のタイトル・トラック「Be Here Now」でも明らかである。しかし、醜い人間の中で生き続け、とはいえそこにしか自分の居るべき場所はなく、絶望的も見えるこの現状。そんなこんなを全て飲み込んで、その上でこの上ない無邪気さでさらっと、またしても確信犯的に何の根拠も無い希望を鳴らして見せたのが前作であった。その後半部分、「俺達はきっと昨日よりいい一日を作っていくんだ」、「わかってるだろ?それでOKなんだから」、「状況はだんだん良くなってるんだぜ、兄弟?」と言ってみせたのは、はっきり言って今この地に立った彼等阿呆兄弟から見れば虚勢だったと言わざるを得ないだろう。もちろんその虚勢を虚構と言う言葉に変えるつもりは毛頭ない。あの根拠の無い、出所不明の希望で救われた人間がいったい世界に何万人居ると思っているんだ? そう、「All Around The World」は確かに僕等のココロに存在した。誰もがかつて初期のノエルが呟いたように、小さな、小さな、しかし大事な、なによりも大事な「自分自身を発信するラジオ」になれると一瞬でも思ったからだ。だが、やっぱりその地に永遠に「立ち止まる」事は出来ない。出来ない。凡庸な僕等だけで無く、それはノエルをもってしてもまったくもって無理な事である事を認めざるを得なかったのだ。

「そんなんじゃ、うまくいくわけないんだ」
「俺の魂を揺さぶってくれ。俺はここに残る」
 彼等は立ち止まらなかった。だからこそもうロックンロール・スターでは無いんだ。「俺はここに残る」という決意は、この世でもっとも強大かつ残忍な相手である、自分自身ととうとう戦う覚悟を決めたという多いなる、そして悲壮な決意以外の何者でもないだろう。もう一度言う、彼等はもうロックンロール・スターでは無い。ただただ魂を揺さぶる音を、「立たせて」いくだけだ。おそらく自ら、オアシスの中でのロックの墓碑銘としてこのライヴでの演奏を決めたのだろう。リアムが歌う「トゥナーーーイ、アイム〜」というラインにはどこかそらぞらしささえ、パフォーマー、オーディエンスの両方に漂っていた。

 某詞のインタビューでノエルが今後はツアー・ライヴ共にしない事を匂わすような発言をしている。醒めた目線で語るならば、オアシスは明らかにライヴ・バンドでは無い。ノエル・ギャラガーの出すギターのエモーショナルは間違いなくスタジオ・ミュージシャンのそれであるし、相も変わらずステージングは無愛想である。ビートルズに憧れ、ストーンズに嫉妬し、ストーン・ローゼスのヴァイヴを感じながら、やっと彼等は、今「はじめて」自分の場所を見つけるのかもしれない。しかし、それはこれから。まだまだ長い道のりが待っているだろう。今回のライヴでもその片鱗は見えた。ゲム&アンディ&アラン&リアムのノエルへの侵食である。前述したテンポの完璧さ、そしてヘルター・スケルターで炸裂するゲムのディストーション・ギター、明らかにバンド・ケミストリーがオアシスの中でその第一反応を起こし始めている。もはやそれはノエル一人では「管理」しきれるものではないだろう。ずっとプラス、プラス、プラス。足し算で音を重ねる事によりその地位と説得力を獲得してきたやり方はもはやその地では通用しない。メンバー一人ひとりがオアシスを変えていく、掛け算の変化を見せる、そういうものに変化していく第一歩を僕らは今日この場所で目撃した。しかし、ノエルは稀代のメロディ・メイカーでありつつもどうやったってくたばらないタイプの人間でもある。そんな戦いに疲れる事はあっても、けっして挫ける事なく最高のヴァイヴで反撃する事だろう。そんな、「ココに居ること」に必死に、死に物狂いになったオアシスへの変化。

 生き残る為には、変わらないといけない。しかし、変わる為には過去の自分に決着を付ける為に、ココに残り、自分を絶対にやっつける必要がある。それを避ける方法もあるだろう。そしてその方が安易で、簡潔なこたえに到達するのだろう。そうはしない、そんなクソになってたまるかっ。そんなどうしようもないエモーションの発動。その場としてのライヴ、現時点のでの最高傑作ライヴだった。間違い無く。こんなパラノイアを世界で最もクリアで純粋な方法で打破しようとする彼等に、ありがとう。

I FEEL LOVE.
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